YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson844  傷を治すチカラ


へこんだとき、
早く立ち直れる人って、どうやってるんだろう?

先日、

そうとうへこむことがあった。
腹の内臓あたり一面に、ずん、と苦悩のかたまりがある。

「切りかえよう!」

じっとしてると悪い方へ悪い方へ考えてしまう。
必要以上に落ちるとやっかいだ。

映画を観に行って、行かないよりはよかったものの、
腹のずんと重いものは晴れず、
家に帰るとずんずん大きくなってきた。

ごはんが食べられない。
口に押し込んでも石のようだ。

「こういうときは未来志向!」

明日のことを考えればスカッとするという、
先人の言葉を思い出し、やってみるものの、
暗い方へ内臓がぐっとワシづかみにされているとき、
未来を描こうとしても、気持ちがついていかない。

風呂に入るなどしてみるものの、
腹の「ずん」と苦しい悲しい感じはなくならない。

「こんかいのダメージは長引きそうだな。
しっかり自分の心の声を聴いてやらねばな。」

ところが翌朝、

目覚めたら元気になっている!
あの腹一面にあった鉛のような「ずん」が無い!

「こんな立ち直りの早い人間だったっけ、私」

いつもはもっとひきずるだろう、
なぜ、こんな早く? スッキリ回復した?
と考えて、思いあたることがあった。

「昨日、ちっこいけど1つ、アイデアが湧いたのだ。」

暗い方へ考えがいって
体ごと飲み込まれそうになる寸前、

ポコッ、と。

そのアイデアが浮かんだときだけは、
しばし無心になった。
おもしろそう、と腹から思った。

「自分のなかからアイデアが湧く」

落ち込んだ時、これほどの
回復薬はないのではないか。

アイデアは、未来志向。

いま無いからこそ湧き出る。
どんなに明日が見えない、後ろ向きな人だって、
アイデアが湧けば、自然に未来を向いている。

アイデアは、自信も一緒に生む。

アイデアが湧くこと自体、
自分もまだまだ捨てたもんじゃない証拠。
面白ければ、自分で自分を一発で認めてやれる。

アイデアは、次やりたいことでもある。

それやるために、せめてそこまで、
とモチベーションも、活力も、つられて湧いてくる。

毎日、お子さんのためにお弁当をつくってる親御さんが、
傷ついて落ち込んで、誰の励ましも響かないとき、
明日のお弁当どうしよう、買い物も行けなかった
と追いつめられて、
ポコッ、と

「そうだ! 冷蔵庫のあれとあれでこうすれば!」

とアイデアが湧いたら、
明日の弁当まではがんばれるんじゃないか。
弁当1つ分の自信も生きるチカラも一緒に湧いてきて。

ああ、そうか!

書く人も、描く人も、つくる人も、

〆切に追われ、日々、アイデアを絞り出す。
この繰り返しは結構キツイけど、
自家発電力というか、

自分の中からポコッと、アイデアが湧く体質になっていく。

毎朝5時、子どもの歓ぶ弁当のアイデアを出す人、
コツコツつくり続けて生きている人、
1週間の各授業ごとに、課題提出を求められる学生、

みなやり続けているから、アイデアが湧く体質になる。

私のように〆切ぎりぎりになって追い込まれてアイデア
出す人は、条件反射で、落ち込んだとき、
窮地に追い込まれたら
アイデアが湧いたりするようにもなる。

落ち込んだ時、追いつめられた時、
自分の中からポコッ、とアイデアが湧くのは
最良の回復薬。
自然に未来志向になり、自信も活力も湧いてくる。

この傷を治すチカラがあれば大丈夫なのだ!

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2017-09-20-WED

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