YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson782
      人間の底−2.読者の声



コンビニでアルバイトをする学生から、

「丁寧に接するお客さんもいれば、
 ものを投げてよこすお客さんもいる。
 人を見る時、親や友達の前で、ではなく、
 陰で全く知らない人々に対してどうふるまっているか?」
を見た方がいい、という話を聞き、

「そこで人間の底は知れる。」

と私は思った。
歴然と、ふだんどんなにとりつくろっていようとも。

そして、人間の底は耕せるんだと、
先週ここに書いた。

読者はこれを見て、どう感じたのか?

さっそく、
読者の声を紹介しよう!


<人がエゴをむき出すとき>

先週の「人間の底」、
興味深く読ませていただきました。

接客や人をお世話する仕事は、
人間の底=だだもれになっている人間のエゴ
に出会うことが多いように思います。

もちろん介護を受ける人には、
思いどおりにならない心身への苛立ちなど
様々あると思いますが、

接客では、
一瞬で、お客さんの傷口が開いて
「底」がむき出しになるような、

介護のような長い関わりでは、
少しずつ傷口が開いていって、繰り返し「底」があらわに
なるような痛々しさがあります。

エゴに振り回されたまま、目の前の人に関われば、
相手を傷つけ、自分も傷つかないはずがありません。
相手にエゴをむき出しにするとき、

どこかに、「してもらって当然」という思いがある。

「してもらって当たり前の関係はない」

と知るところから、
相手への想像力も育っていくように思います。
そうして、相手との関わりのなかで、

「エゴよりも大事なものを育てる」

ことができれば、
互いに傷つけ会わずにすみます。
それが相手への尊重ではないでしょうか。
(たまふろ)


<自分の底を見る機会>

自分の底が浅いことについて、
以前ボランティアをした時に、痛感しました。
これを機会に底を鍛えたい。
(A、T)


<非常時で見えた人の底>

私は東日本大震災の時、
被害には合いませんでしたが、
食べ物、ガソリン、水、ガスなど‥‥様々な物が不足し、
行列にならんで物資を調達する日々でした。

あるチェーンのスーパーでは、

震災直後から定価の1.5倍ほどの値段に。
それでも、物資が不足しているので、
飛ぶように売れていました。

驚いたのは、
同じチェーンの「別のスーパー」の対応です。

屋上の駐車場を被災した人々のために解放し、
その日売れ残ったお弁当を夕食として配り、
行列に並んでいる人々には飴を配り、

商品は定価。

緊急事態だからこそ、
ふだん隠れている「人間の底」があらわになった
と思いました。

後者のスーパーは、
「震災の時の対応が素晴らしかった」という理由で、
お客様が増えたようです。

チェーン店でマニュアル化されても、
やはり作りあげるのは「ひと」の力なんだと思いました。
(ゆり)


<親しい人との関わりにさえ>

独身の私は、
結婚して出産した友達からメールが来ても、

そんなに忙しくないのに
仕事が忙しかったと返信を後日に送ったり、

みんなで集まろうと声をかけてくれても、
約束がないのに用事があると断ったり。

なんとなく距離を取り、
そんなことをしていると色々なものが歪んで見えて、
優しさを素直に受け止められなくなって
その友達ともなんとなくぎくしゃくしたような関係が
続いています。

先週の、「見ず知らずの人に接するとき、
人間の底があらわれる」という文章を読んで、

私は、身近な人とのかかわりにさえ、
「自分の底」が出てしまっている、

これが「自分の底」だ、

と気づきました。
私が持っていない幸せを持っている友達が
ただうらやましい。
29歳にもなって子供っぽい。
自分に嫌気がさして、
過去を悔いたり本当にダメダメです。

人を尊重した行動を。

小さなことから積み重ねたいと思います。
友達に心のこもった「おめでとう」を伝えられるように。
(Y)



「自分の底」をつい見てしまい、
あまりのちいささに、ガッカリ、
ということが、私も最近あり、

ヒリヒリするし、凹んで、
いてもたってもいられないけど、
一方で、

「自分の底が知れてよかったな」

とも感じた。
自分の底の小ささが、いま、わかって、
幻想がパカッと割られて、本当によかったと。

人間の底は耕せる。

これからもっと先へ、
もっと面白いことをするために、
自分の底をコツコツ耕して行こうと私は思う。

このおたよりを紹介して
きょうは終わろう!


<通勤電車のヒーロー>

ちょうど先週のコラムを読んでいた、
通勤電車の中のことです。

振替輸送の影響で、
いつもの倍くらい混み合っていました。
混雑した通勤電車って、本当に押し合いへし合い、

まさに、人間の底が見えまくり、
私も出しまくりになってしまう場所です。

ちょっとため息や、
イラついた舌打ちらしきものが聞こえてくると、
その場に緊張感が走ります。

私も人の髪の毛が触れるのが苦手で
つい、いいポジションを取ろうと押し気味にしたり、
イライラしてしまいます。

そんなときに、

「捕まっていいですよ」、

とおじさんが誰かに
声をかけているのが聞こえてきました。

「悪意だけじゃないんだ」、

と気づき、

「みんなであと少し耐えようぜ!」

と言うような気持ちになりました。
映画で、
ビルとか、どこかに閉じ込められたときに

ヒーローが、登場!

みんなを説得して、脱出する場面を想像しました。
そんなヒーローに私がなる可能性は
あまり無いと思いますが、

せめて満員電車の殺伐した中に、
ちょっと和ませるような、やさしさを持てたら、
人間の底が広〜くなるんだろうなあ!
(R アール)



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2016-06-01-WED

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