YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson776
   ゼロから切り拓くチカラ―2.読者の声


それまでの自分が通用しない、
新しい環境に置かれた人は、

「ここからはじまる。」

アウェイで、
なんとかコミュニケーションを通じさせ、
ゼロから居場所を切り拓いていくチカラは、
まちがいなくいま、鍛えられている。

という先週のコラムに
読者から反響をいただいた。

さっそく紹介しよう!


<考え抜いて出た答え>

つい先日、上司から、
断捨離と組織編成も含めた

「職務分掌」をするよう指導を受けました。

最近、部署が増員されたこともあり、
私の仕事量が膨大すぎて、
他とバランスを欠いていると判断されたからでした。

私は、1年半前に、
子会社から今の部署に、突然、異動になりました。
前の勤務先の仕事も持って異動すること、
離れてその仕事をやることが求められました。

目まぐるしくくる仕事を、
片っ端からとにかく受けて、導いて、確認して‥‥
と動き回ってきました。

業務効率化は元々頭にはあり、
都度断捨離していましたが、

時が流れ、人の構成も変わり、
様々な流れがやってきては去り‥‥で、

今の上司は、
プロセスも現状もしっかりと把握されておりません。

私の中で、

「全て必要なんだ!」

という気持ちと、論拠が、
クルクル回り、頭を働かせました。

上司を説き伏せる内容をまとめ
考え抜いた一週間後、
私が導き出した答えは、

「上司の考えを全面的に受け入れる。」

ということでした。
伝わってさえいない相手に、
いくらどうパフォーマンスをとったとしても、
結局は徒労。

ならば、言葉は悪いが、まな板の鯉になって、
いっそ考えを受け入れて再構築する方が
抗うよりもよほど建設的だと考えたからです。

また、
私の伝え方やパフォーマンスが弱く

上司の目から見たら、
「何をそんなに忙しくしてるの?」
と単に不思議だったのかもしれないと
反省もしました。

伝えたり、頼ったり、てところ、
怠けてたかも‥‥。

自分の仕事のスタンスや流れが
いくらうまくいっていたとしても、

うまく伝わってなければ、

正当に判断されなかったり、
突然、改変を迫られることもあります。

「理解してもらえるはず」
「伝わってるはず」

と思っている、その根拠が、

「熱心にやってるから」、
「こういうキャラクターだから」、
「経験年数が長いから」、
だから理解してくれ、になってることもある。

「鍛える」

という先週のコラムの言葉がストンと落ち、
腹が据わりました。

ちょっと引っかかってはいるものの、

「これも練習のようなもの
鍛えていれば、筋肉がついて
自然に動けるようになる」

そんなイメージで進んで行きたいです。
(ペリコ)


<この春、転勤>

この4月、
十年勤めた職場から転勤しました。

通勤時間は短くなりましたが、
仕事内容がガラリと変わりました。
慣れるまで大変だとは思いますが、

コミュニケーション力を鍛えたいと思っています。

多くの人と交わって、
できるだけ自分の価値基準を変えていきたい。
と考えています。
(A.T)


<内なる警告>

「ゼロから切り拓くチカラ」を
興味深く読ませていただきました。

いくつかの職場で、
人を治療する仕事をしてきましたが、
常にあるのが

「ここ以外では自分は通用するのだろうか?」

という不安のような気分でした。

新しい職場で慣れず、
目の前のことに追われている頃には、
そんな不安を感じる余裕もありませんが、

ある程度仕事を覚えて、
患者さんやスタッフに信頼されてくると、
その気分が出てくるのです。

職場が居場所になっていくにつれて、
自信もついてくるはずですし、実際そうなのですが、

自分自身の力で居場所を作ったというより、
その職場の信頼に乗っけてもらって、
自分の居場所を作らせてもらった

という感覚がどこかにあります。
長い付き合いになる患者さんや、
常連の方に認めてもらうほど、
そこが自分の居場所になりますが、
それだけではやっていけません。

そこで試されるのが、初診の患者さんです。

お互い初対面で、
症状などを聞き取り診立てて触れていきます。

淡々としながらも内心は緊張しています。
納得してもらえるだけの治療が出来て、
次につなげられてはじめてほっとするのです。

一方で長い付き合いの方でも信頼に安住すると、
足が遠のかれた時に
必要以上にうろたえたりします。

落ち着いて待つなり、
ご機嫌伺いをするなり出来ることはあるのに、

その手前で余計な気持ちに振り回されそうになります。

それも信頼に自信がないことの現れなのでしょう。

居場所のおかげで仕事が出来ているのは確かですが、
自分がその居場所を作るためにがんばった
という手応えがなければ、
足元がぐらついとき依るところがありません。

不安や動揺におそわれている時は、
むしろ自分の土台のあやふやさを知らせてくれている
ようにも思います。

本当に安住できる所はどこにも自分の外にはないし、
むしろその自覚が、
自分を新鮮なところにおいてくれているのかもしれません。
(たまふろ)



仕事で鍛えられるチカラには、
2方向あるんじゃないかと、
私は、最近思い始めた。

1つは、「内向き」。

その会社の中でしか通用しなかったり、
その会社の、その部署の、
何十人かで分業している中の1つ、
その持ち場でしか、活かすことができないチカラ。

もう1つは、どこに行っても通用する、
「外に向かったチカラ」。

人間普遍のものだったり、
万国共通で求められるチカラであったり、

会社の中でも、会社の外でも、
会社を変わっても渡り歩けるようなチカラだ。

さらに、私は思うのだけど、

同じ職場で長く仕事を続けてきた人は、
大なり小なり、この「両方のチカラ」が、
鍛えられ、育っているんじゃないかということだ。

めちゃくちゃ気難しい、個性の強い社長がいて、
その社長の機嫌をうまくとって、
折れ合っていくようなチカラは、

そこでしか通用しないかもしれないんだけど、

そうして社長とうまく折れ合いながら、
組織と調和をとって、やりつづけた仕事の技能が、
世界で通用するものに鍛え上げられている、
たとえば、そういうことだ。

内向きのチカラは、

磨けば磨くほど、
そこにカポッとはまって動けなくなる。
まわりも離さないし、
自分もよそでつぶしがきかないとわかってくる。

外向きのチカラは、
磨けば磨くほどに、自分の働ける半径を広げてくれる。

読者のおたよりを読んで
あらためて思ったのは、

自分の中に、
外に通用するチカラがあるのに
自分で気づいていない人、
けっこういるんじゃないか、
ということだ。

自分に、外で充分通用するチカラがある、
ということは、

ある程度、外に触れないと
気づかないものなのかもしれない。

まったく違うお客さんに向けて仕事をする、とか、

まったく経緯をしらない上司が異動してくるとか、

まったく会社の文脈を知らない新人がくるとか、

「外」にふれて、
せめぎあい、
思いもかけず通用したとき、
はじめて、自分に外で通用するチカラが育っている、と
気づけるのかもしれない。

だから、
新年度の環境の変化は、ほんとうにチャンスなんだと
私は思う。


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超満員御礼!
大幅に増席し、4月24日(日)を追加しましたが、
おかげさまで満席。現在、両日キャンセル待ちのみ受け付けています。
(追加の24日分も下記の同じ入口から申し込めます。)
そう遠くないうちに福岡にまた行きます。次の機会もたのしみに!


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2016-04-13-WED
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