YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson772 まっすぐ求める

「個人に言えばいいことを、
 ツイッターなどで、みんなに言ってしまい、
 藪をつついて蛇になる」

そんな現象を、
有名人にも、身近にも、目にし、

「何か」が引っかかっていた。

昨年の秋、
私は、

「とうとうクリームか‥‥」

と落ち込んでいた。
かつてないほど顔が乾燥したのだ。
ピッキピキにつっぱって痛いほどに。

私も、もう年か、と落ち込み、

ネットでクリームを物色するものの、
これだというものが見つからない。

過去に何度かクリームには手を出したことがある。
でも、そのたび乾燥がひどくなり、
使わずに生きてきた。

だが、もう、そんなこと言ってられない。

やっきになって探す私に、
ある美容家の

「まず、水!」

という言葉が飛び込んできた。
私は、はっとして、

加湿器を炊いた。

水を飲んだ。

化粧水パックをした。

これを数日続けただけで、肌は正直なものだ、
あっけなく乾燥はおさまってしまった。

「水が足りないなら、まず水!」

なのに私たちは、なぜ、
「愛情が足りない時 → 勉強を頑張る」
みたいなチグハグをしてしまうんだろう?

愛が足りないなら、まっすぐ愛情補給を目指していい。

実家があるなら、帰って家族に甘えるもよし、
作品から、作家がこめた愛情を補給するもよし。
「歌」は栄養注射くらい即効で、
文学や舞台、映画も点滴のように、補給できる。

水が足りないのに、クリームを物色していた
私には、どうも、

「臆病と横着」があるようだ。

問題の正体である肌の老いを見つめるのは
なんとなく恐いし、面倒だと、

とにかく乾燥にはクリームだ、
手近なネットで検索してポチッとやれば、
なんとかなる、と。

「まっすぐ求める」

ことができなかった。
いや、それ以前に、
「自分が何を欲しているか?」
と問うことさえ。

ツイッターで、

個人に言えばいいことを
みんなに言ってしまって、
藪蛇になっている人や、

「むしゃくしゃしたので、
 とりあえず手近な道具で、だれかれかまわず、
 言いたいことを言い散らかしました」
という結果になっている人や、

読む人が、あらぬ想像をするとわかっていて、
わざと核心を伏せた、「意味深」発言を繰り返す人の、

つぶやきの底に「渇き」を見る。

渇きとは、
「満たされない感じ」とも、
「欲求不満」とも
言いかえることができる。

ほんとうに欲するものは他にあるはずなのに、
そこから自分自身を紛らす発言をして、
かえって「渇き」が募っている。

だれかといざこざを起こしたあと、

人はむしゃくしゃして、
相手に言いたいことを言ってやろうと思う。

でも、実際、相手に言って行こうとしたら、
いろいろ面倒だし、恐いから、
発言をひかえる。

でも、むしゃくしゃがおさまらない。

そこで、ツイッターなど手近な道具で、
自分の言いたいことを言い散らかしてみました。

みんなのまえで言えたから、
きっと、どこかでだれかが見てくれていて、
私のことをわかってくれるはず。

問題の本質に向かわない・向かえない臆病さと、
周知の事実にしてしまえばなんとかなるという
横着な期待がある。

私にもある臆病と横着、
だから看過できないのだろう。

本来、自分の欲するものに、
向かって行かない発言だから、

書いても不満が解消されないばかりか、

「私の本来言いたかったことと、
 なんかちがう。」
と、不満が顕在化し、

読んだ第三者の不満を呼び起こし、
その反響で、
新たな不満がつのっていく。

そうならないために、
自分の欲しているものを、まず、

「まっすぐ求める。」

コミュニケーションでありたい。
求めても得られないかもしれないけれど、

水を欲している人間が、
「自分は水を求めている」と気づくことは、
案外むずかしいことで、

そこに気づくだけでも希望がある。

気持ちが波立つ中で、人に対して
言葉を発しなければならないとき、
私自身、こう問いたい。

「自分がいま、いちばん伝えたい人はだれか?」

そこを間違えなければ、
まず迷走は抑えられる。

そして、多くの人に伝えたいなら、
多くの人に伝える道具で、
個人に言いたいなら、個人に伝える道具で、
伝えたい人に、伝えたいことを伝える。
いつでも、そこを、

「まっすぐ求める」

勇気をもちたい、と私は思う。

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想いが通じる!言葉のチカラをつける
山田ズーニー表現力ワークショップ

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「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、上記のアドレスでなく、
  直接オフィス・ズーニーまでお送りください。
  連絡先は、山田ズーニーの本を出している出版社まで
  お問い合わせください。


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★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。


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 ちくま文庫

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自由はここにある!



ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日〜)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
 無料で聴けます

 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。

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ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



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 お問い合わせください。


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『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!

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『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。

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『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。


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『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!


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▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)

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ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。

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「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。

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『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。



『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!




『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社




『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社




『おとなの小論文教室。』
河出書房新社



『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの 痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)

山田ズーニーさんへの激励や感想などは、
メールの表題に「山田ズーニーさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2016-03-16-WED
YAMADA
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