YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson753
   読者のヤケ・ノート


先週の
「ヤケをおこしたとき、見るノート」
には、
ものすごくたくさんの反響をいただきました。

まず、こんなおたよりから。


<できるだけバカバカしく>

自分なら、
どんなやけを起こすだろうな。

一番に思いつくのは、やっぱりやけ食いかな。

好きなモノをたらふく食べる。

コンビニをハシゴして、
ハマっている冷凍餃子を買いあさり、
大皿に山盛りもって、
大食い選手権ばりにほうばる、とか。

日常にちゃんと戻れるように、

できるだけバカバカしく、
自分でも呆れて、
だんだん面白くなって、
やけを起こした後にチョット元気になれるようなのが
理想的と思う。
(Noname)



「できるだけバカバカしく、
 自分でもあきれ、だんだんおもしろく、
 後でちょっと元気になれる」

って、いーなー。

「バカバカしいマンガ」を、

子供のころ、なぜか好きで
あきずに見ていたことを思い出しました。

ためになることナシ、救いナシ、
どこまでもナンセンス、
そんなことをえんえんと、
主人公がやりつづけてくれる漫画やアニメ。

あれは、主人公が、
自分に代わって、やけ起こしてくれてたのかも。

日常の理不尽を一身に背負って。

見てるほうが、
あきれて、わらって、闇にむかわず、

ちゃんと日常に戻れるように。

次は、やけを起こしたとき、
「これをやっちゃいかん」
を教えてくれてる読者たちです。


<反面教師>

親戚の奥さんが浮かびました。

彼女はLINEのタイムラインに、
まるで殴り書きのように、
溢れ出す夫の悪口を書き連ねます。

腹が立ち過ぎて全て思い出せない位書き連ねます。

確かに夫が悪いと思うこともなくはないです。

でも仮に100%夫が悪くて最低最悪だったとしても、
誰が目にするかわからないSNSでは、

腹いせに書き連ねて本人はスッキリしても、
それを読んだ人はと〜〜〜ってもイヤな気分になる。
そして、

「この人と仲良くしたら、いつか自分も
 こんな風に悪口を書かれてしまうかも」

と距離を置かれるようになる。
(みまじ)


<大切な人に>

私は日々小さなモヤモヤが積み重なってしまいます。
そして些細なことで母とケンカをすると、
そのときに溜まってたものを
ドカーンとぶつけてしまうのです。

そしてそのケンカはだいがい
傷つけるだけの言葉に変わってしまい、
母も私も大きく傷ついて毎回ぐったりしてしまうのです。

先週の、ヤケのおこし方を書くこと、
冷静になれるし、なるほどなあと思いました。
そのやり方いただきます。
(L)


<入れるより、出す方へ>

ヤケを起こした時
以前は、
自己啓発本
ネットで関連する有益と思われる情報の検索
人にメールなどで相談等、試していました。

しかし、共通するのが
「何かを得ようとする行動」であり、
ただでさえ、怒りや負の気持ちで溢れている自分の頭に、
素直に入ってくるはずもありませんでした。

コップの水に溢れんばかりの水が入っているのに、
まだ注ごうとする行為と言うのでしょうか。

いまは、やけを起こしたとき、
身体を動かして発散する方法に力を注ぎます。

身体の中の不要なものや心のモヤモヤも、
汗とともに流れているというイメージでしょうか。

溜めすぎないように、
リセットをかける行為をすることが
大切だと思います。
(ペリコ)



ヤケは、身近な大切な人に向かいがち、
「おかあさんを傷つけたらいかん」
と、私も、ノートに書いておこう。

では! 読者のヤケの起こし方、
一気に紹介します!


<少しやけっぱちな気分の私には>

先週のヤケ・ノート
お昼休み中お弁当を食べながら読んでいたら
涙ぐんでしまいました。
今少しやけっぱちなことをしたい気分な私には、
ぐっと心にきました。

私のヤケ・ノートには何を書こうかな。

ケーキのワンホール一気食いもいいかも。

これからあれこれ考えるのが楽しみです。
少し気分がいい方に変わった気がします。
(ミワ)


<無限ループの中へ>

ペリエを片手に、
ポテトチップスとチョコスナックを
交互に食べて
甘いしょっぱいの無限ループを
お腹いっぱいになるまで楽しむ。

コンビニに行けば揃うもの、というのがポイント。
ヤケを解消するなら簡単な方法がいい!
(クミ)


<身近な人にあたらないように>

四十代後半になりうまくいかないことがけっこう多く、
最近は思わずカッとすることが度重なり、
途方に暮れることが多くなりました。
振り返ると大事な身の回りの人にあたることが多かったので、
そうならないために書いておきます。

ポテトチップス2袋とコーラを一気食い。
(A・K)


<自問自答しつつ>

「ヤケノート」!
心を落ち着かせられるいいことが書いてあるノートかな、
と想像したのですが、
いやいや、素晴らしい意味で予想を裏切られ、
「すこしお金もはさんでおく」の下りでは
大笑いしてしまいました。

私は今アメリカの田舎に住んでおり、
どこへ行くにも車なので、
気持ちを晴らすのだ! と家を飛び出したところで、
事故る可能性があります。

なのでまずは部屋にこもって怒りを書き殴る。
あ、近頃のヤケの原因は
ほとんど夫とのいさかいなのですが、
それについて気持ちが落ち着いてから話し合う。
それでヤケがだいぶ収まったところで、
次のでかける機会に、

いつもは買わない、
あまぁーいドーナッツや、
しょっぱすぎるピザを食べたり、
控えているカフェインの入ったラテを
買って飲んで溜飲をおろす、という感じです。
その最中に、

「ああ、これは体に悪い。」
「無駄金を使っている気がする。」
「いったいなぜこんなことをしているのか?」
「でも私には必要だったんだ!」

と自問自答しながら。。。
(ラム有花)


<私だったら>

今回ほどきた回はないです。
羊羹一本食い。
いつも真剣なズーニーさんが羊羹一本食い。

だったら私は、
プリン3つにシュークリームにアイス、とかします。

やってもたって思います。
そしてどうでもよくなります。
(とらや)


<巨匠みたいなイメージで>

私はヤケを起こしたとき絵が書きたくなります。
クレヨンとかペンで
カラフルな色を使って紙に書くだけです。
線だったり、指で書いた線を広げたりします。
そのうち、きれいな色だなとか思い始めて、
色を混ぜたり、組み合わせたり。
でかい紙にでかい筆で書く巨匠みたいなイメージで。
(HARU)


<ノートを作って>

箇条書きでいいので、
嬉しかったこと、悲しかったこと、悔しかったこと、
嫌だったこと、とにかく書きます。

ヤケというのは誰にも、自分の気持ちが
解ってもらえないというところから起きるのでしょう。

だから、せめて自分にだけでも
自分の気持ちを解ってもらえるようにと、
このノートを作りました。
(ワタシは大学一年生)


<失敗を繰り返したどり着いたのは>

私もヤケになるとひどいことのオンパレードな上、
かなり周囲の人間を巻き込むので、
自分の価値を下げるばかりか、
冷静になった後、
かなり自己嫌悪に陥ることの繰り返し。

でも、年の功か、修行のおかげか、
なるべく人に迷惑をかけずに、
自分にも深手の傷をおわせない
ヤケの起こし方に到達しました。
それは(わりとありきたりで申し訳ないんだけど)

自分の好きな物を買うこと。

ただ高い物を買うとつまらないし、
後々の支払いが困るので、

掘り出し物を探したり、
お買い得な買い物を極めるのです。

わりと頭も時間も使うので効果がありましたよ〜。
支払いがあるから、仕事も頑張らなくてはならないし、
家計もきりつめたりしなくてはならない。
そして置き場所も考えなくてはならないから、
部屋も片付けなくてはならない‥‥。

気がつくと自分のお気に入りの物ばかりに囲まれている、
居心地のいい空間が出来上がっていて、
いつしか気分は知らず知らずの内に癒されているのです。
(エリ子)


<私流ヤケ酒>

ちょうど今日やけ酒をしてきました。

1年間ずっと勉強してきて、受けた国家試験ですが、
やっぱりダメで‥‥

一級建築士試験の二次試験は
手描きの図面の良し悪しで決まるのですが、
わたしは、かたつむりの速さで、
採点の土俵に上れないのです。

予備校で出る課題、出る課題、すべて時間内に描けず、
本番は間取りを考える時間を他人の3/4に減らして、
ずいぶん早く描き始めました。

が、やっぱり全部は描けませんでした。

今日は予備校の先生に
本番に描いたのとほぼ同じ図面を提出しました。
もともとのわたしの遅さをよくご存知の先生は

「2ヶ月でよくここまで頑張りました」

と言ってくださったので、
なんとなく泣きそうになりました。

予備校で夜に飲み会が企画されていましたが、
こどもがいて夜は外食できないので断りました。

そのかわりに独りでやけ酒でもしよう、

と思って、帰りにいつも行く紅茶専門店に入りました。
ランチの他に、

前から気になっていたラム酒の入ったミルクティーと
栗のシフォンケーキを頼んで、
お腹いっぱい食べて飲みました。

ちょっとお腹がぐるぐるしました。
そしてやっぱり寂しくなりました。

がんばってもがんばってもうまくいかないことってある。

他の受験生が3時間で描く図面を、
最初に描いたとき18時間かかりました。

試験の直前に、ようやく4時間強で描けるようになった。

図面は実務ではパソコンで描くのが普通です。
パソコンで図面を描くのは決して遅くはないのです。

なんでこんな実務と関係ないことに
努力しなければならないのか、
という気持ちがずっとあって、今でもあります。

でも試験時間が決まっていて、
本当はこういう絵を描きたかったんです、と
国家試験の採点官に説明できない以上、
時間をかけて少しずつ絵を描く速度をあげて、
再挑戦するしかないんだと思います。

やけ酒のあと、家に帰って
いつも通り家族の夕食を作りました。

主婦で良かったのかも。
どんなにお酒を飲んでも、
今日も明日もこどもの服を洗濯したり、
ごはん作ったりしなくちゃいけない。
洗濯したり、ごはん作ったり、
喘息のこどもの寝室を掃除したり
できる体調を保持しなくちゃいけない。
(かたつむり)



ふだん、健康に気をつかい、食べ物に気をつけている人は、
ヤケを起こした時、ちょっとだけ逸脱して、
体に良くないかもな食べ物を食べる。

ふだん、買い物を慎んでいる人は、
たがを緩めて、買い物を。

ふだん、我慢強い人は、書いたり描いたりして
外に出す。

ふだん、こどもがいて飲み会にも行かず、
家事も育児も頑張っているお母さんは、
紅茶のラム酒で、「ひとり酒」気分を味わう。

ヤケは、
ひごろその人が、我慢したり、節制したり、
気を配ったりして、
がんばっている姿を、さかさまに映し出す鏡。

だから、読者のヤケを起こしたときの行動が、
とてもかわいく、愛しく感じました。

最後に、このおたよりで終わりたいと思います。

「音」とか、「触感」とか、「食感」とかで、
虚しいような、でも、煮詰まっていたものが
スカ、と抜けるような感覚に襲われることってありますね。

たとえば、お豆腐屋さんのラッパの音とかです。

郷愁のような、無意味感をかみしめるような、
哀しいような、あっけらかんとするような、
なんともいえない感覚を呼び起こすアイテム。

そんなアイテムひとつを自覚していると、
ヤケを起こした時、支えになるんだなと思います。


<ヤケを起こしたとき、なぜか、これ>

方言丸出しな言葉ですが、

「どうしても気持ちが収まらんのんじゃったら
 『はんぺん』を食べんちゃい。」

と書いておきます。

今までのヤケを
あれこれ思い出してみると
どうもヤケを起こした時に買ってしまうのが

「はんぺん」

だと分かりました。
もともと好きな食べ物ですが 

あの食感

ヤケを起こしている状態のわたしには
「虚しさ」ばかり感じられるようで
スッと冷静になるんです。

そうなると
もはや「はんぺん」という言葉だけで
全て連想できる感じ。

ズーニーさんの羊羹1本。
虚しさを飲み込んでいるような感じ。

わたしにとってのはんぺんは

それこそ虚しさを
これでもかと体感して
冷静を取り戻すことができるのかな?
(泉鈴)



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2015-10-21-WED
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