YAMADA
おとなの小論文教室。
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Lesson736 つながるダイエット


ダイエットをした。

去年、「3ヶ月と1週間」もかけ、
たいへんな努力で痩せた4kgちかく、

今年は、「たった2週間」でするする痩せた。

くやしいが、
去年の自分はダイエットにおいて
「意識ひくい系」
だったと認めざるを得ない。

ことの発端は、
今年のゴールデンウィーク前、
風邪をひいて、回復のために食べ過ぎ
4Kgちかく太ってしまったことだ。

昨年は、この体重を
「食べる量を減らす+運動」で落とした。

たかがそのくらいと人は言うが、
肥満というわけではない太さから、
代謝の落ちた中年が体重を落とすのは、
大変な自己抑制が要る。

今年は、風邪のあとで「運動が全くできない」。

かなり焦り、方法を模索しまくり、
最終的に本を3冊買い、当たったのが、
50代の女性が1年で26kg減量した実体験をもとに
出版した料理本だった。
いわゆる糖質制限の類なんだと思う。

去年のあのガマンは、いったいなんだったんだろう?

運動はゼロ。
しっかり食べているのに、
4日で1kgは痩せていく。

体重の5%減ったあたりで、停滞期はあったものの、
2週間強で、あっさりと目標は達成してしまった。

ダイエットのあとに残ったものは、
料理をしっかりつくる習慣と、
すこしの「自信」。

ふりかえってつくづく思う。

「断つ」って方法は、ストレスだと。

私がダイエットにはげんでいたころ、
まるでBGMのように、メディアから流れていたのは、
日本女性の「痩せすぎ」問題。

戦後よりもひどいとか、
フランスで痩せすぎモデルを禁止したとか、
かなり深刻な社会問題化している。

たぶん、ダイエットの「意識ひくい系」の人って、
自戒をこめて、こういう考えなのだと思う。

「太る食べ物を断つ」発想をする。

炭水化物を断つ、
甘い物を断つ、
他にも太りそうな気がする食べ物を断つ。

あるいは、量を減らす、
食事を抜く、残す。

我慢という名の努力をしている。

そのいっぽうで、
食事を抜いたり減らした分、
料理をしなくていいし、お金を使わなくていい、
実はラクをしている自覚はない。

たとえ小さなことでも、
「ほしいものを我慢する」のはストレスであり、
ずーっと続くと、抑圧は溜まっていく。

はけ口(ドカ食い)とか、反動(リバウンド)を呼ぶ。

体は、生きていくための栄養をとろうと
健気にがんばっている。

でも必要な炭水化物をごっそり抜かれ、
食事の絶対量も少ないので、
ほしい栄養がぜんぜん採れない。

それでも体は、なんとかほしい栄養をとろうと、
口にものを入れようとする。

ちょっとでも体に入った栄養は「逃すものか」と
脂肪にして、生きるために溜め込んでいく。

結果、常にひもじい、太りやすい状態に陥る。

これを我慢して押し通すと、
さらにストレスはきつくなり、さらに強い抑制が要る。

体は、飢餓と栄養不足とストレスに耐え続ける。

この状態は、もっとも身近な存在である自分を
自分でずっと虐待し続けているようなものだ。

「断つ」ダイエット、

たとえば、炭水化物とのつながりを断つようなものは、

ごはんと心を断つのに、ひと苦労。
それでも求める体を、ごはんから引き離すのにひと苦労。
そのストレスで、血の巡りも腸のめぐりも鈍くなり、
心と体のつながりまで危うくなる。

ダイエットが終わったあとは、
「米ってどうやって炊くんだけ?」
「パン屋さんって近くにあったっけ?」
と、炭水化物にまつわる知識も、人も、店も、
すべてのネットワークがずどんと生活から抜け落ちる。

そうではなくて、「つなぐ」ダイエット。

良い食材と自分をつなぐ発想を出発点にする。

食べても太らない食材や、調理方法や、
健康維持に要る栄養素や、
食べ方に対して、自分をつなげる方法を編み出す。

炭水化物について言えば、
どんな炭水化物を、
どのタイミングで、どれだけの量食べればいいか、

自分と炭水化物のうまいつなぎ方を考える。

おやつも同じ。

続けていくと、料理のレパートリーも増えるし、
食材や栄養の知識も増える。
近所のどの店で、どの食材を調達するといいか、
ネットワークもできていく。

健康維持に必要な栄養素がとれていれば、
それが痩せる料理であろうが、
体は安らぎ、やたらと食べたい衝動は起きなくなる。

そこから振り返ると、
去年ダイエットをしたときの自分は、
栄養素や絶対量が足りておらず、
ひもじかったなと気づく。

「断とう」とするのではなく、
食と自分のよい「つながり」をどうつくるか。

苦じゃなく続けていけるカギはそこだった。

美しくなるにしても、健康にしても、
自分にとって、続いて、最終的に実になった方法は、
安易に「断て」とは言わない。

「つながる」。

さらに、「めぐらす」。

「循環・つながり・連携」をよくするという発想を、
迷ったときには思い出したい。

このように気づけたのも、
去年のイケテないとわかったダイエットを
この体でやって苦しんだからこそだ。
あれがなく、いきなり今年の方法で
するする痩せたとしても、
その凄さはわからなかったと思う。

これからも、ロスがあっても失敗しても、
試行錯誤して、自分の体で実証して
つかんでいく姿勢は持ち続けたい。

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2015-06-10-WED
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