YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson217 あなたの意見
   ――高校生のため一発でわかる小論文講座(2)



いきなりですが、
あなたにおうかがいします。

「なぜか人に好かれる人」の条件って
何だと思いますか?

たとえば、すごく知識があって、
聞けば何でも答えてくれるけど、
ただ便利なだけで、べつに
そばにいてほしいと思わない人もいます。

反対に、何を知ってるわけでも、
何ができるわけでもないのに、
何かの集まりには、かならず招かれる人、
「なんとなくそばにいてほしい人」がいます。

あなたの考える、
「なぜか人に好かれる人の共通点」を
ひとつあげてください。

どうぞ……。

あげられましたか?

では、なぜ、そう言えるか?
理由を私にわかるように説明してください。

どうぞ……。

(以上、2004年度宮崎産経大小論文入試より改題 
 出典:齋藤茂太
 『続「なぜか人に好かれる人」の共通点』より要旨抜粋)


いま、あなたが出した2つの答え、これを
筋道立てて書いていけば小論文になります。

小論文とは?
そう、「意見と論拠」でしたね。
でもそれよりも、

それは、あなたが本当に思っていることですか?

私は、そのことにいちばん
興味があります。

人は、本当のことが書けたとき、
深い内的な歓びがあります。
それは読み手にも伝わります。

「その人が、本当に自分の頭を動かして考えた、
 自分の意見かどうかは、すぐわかる」と、
採点官も、口をそろえて言います。

なのに、実際には、
書き手の実感がない答案が、ごろごろ。

なぜ、本当のことを書かないのか?

少なくとも、自分ひとりだけで練習する段階では、
白い紙に書いてはいけないことなど1つもありません。

「自由」な、はずです。

ところが、白い紙に向かったとき、
本当のことを書くのは、
恐い、おっくうだ、
と感じる人が多いようです。

だから、「書く」というと、
「お勉強モード」にカラダを切り換え、
実感のない、とおりいっぺんのことでやり過ごす、
悪い習慣がついてしまった人もいます。
本当のことが書けないと、元気がなくなっていきます。

どうすれば、本当のことが書けるのか?

小論文に正解はありません。
求められているのは、あなたの意見です。

意見とは何か?

問いに対して、あなたが打ち出した答えです。
つまり、

答えは自分で決める。

自分で決めた答えを書いて合格をつかむ、
小論文入試とは、
きわめて自由な受験スタイルです。

考えたら小論文ほど、
「あなたの意見」が存分に書ける文章はありません。

たとえば、レポートとは何か?

「事実と考察」です。
事実だけのもの、意見を加えたものも、
ひろくレポートと呼びますが、
レポートの主役は、「事実」です。

どこに目をつけ、どんな方法で、
どんな事実をとってくるか?

たとえば、単純化すると、

問い 
「なぜか人に好かれる人の共通点とは?」

事実1 
男性100人へのアンケートの結果は、……であった。

事実2 
女性100人へのアンケートの結果は、……であった。

考察  
以上の事実から、……ということが言える。

作業の中心は「調べる」こと、
ゴールは「報告」です。


「論文」も、「結論と論拠」で小論文と似ていますが、
小論文ほど自由に意見が打ちだせるわけではありません。
「結論」は他の人が同じ方法でやっても必ず導けるもの。
それよりは「論拠」の、分析・立証の確かさです。

小論文は、字数が短い分、
「意見」の占める割合が大きい。

たとえば、単純化すると、

問い 「なぜか人に好かれる人の共通点とは?」

論拠  ……という理由から、

意見  私は、なぜか人に好かれる人の共通点を
     ……だと考える。

作業の中心は「考える」こと、
ゴールは「説得」です。

意見には、
かなり大胆に個人の見方を打ち出しても、
許されるどころか、
むしろ歓迎されています。

論拠にも、個人の体験が活かせます。

そう考えると、
「あなたの意見」を、これほどはっきりと打ち出せ、
尊重される文章は他にないのです。

では、他のだれでもない、あなたの意見を
打ち出すにはどうしたらいいか?

それには、

論拠

意見

の構造をしっかりつくることです。

600字以上の小論文になると、
「具体例」が必要です。
具体例とは、あなた自身の「体験」や、
本やニュース、授業などから「見聞」したこと、
つまり、具体的事実です。

実感のない、画一答案が陥っているのは、
この構造です。

事実
人に好かれる人に関して、こんな事実があった。

意見
だから、人に好かれる人の共通点は、……である。

つまり、事実から、
一足飛びに意見を出してしまう。
だから本当に言いたいことが言えず、
一般論になってしまうのです。

虐待する親がいる(事実)
→子供を殺すなんて許せない(意見)

テロが行われている(事実)
→武力で問題は解決しない(意見)

事実は、そのままでは論拠にはなりません。
そうではなく、具体例と、→その分析、→そして意見、
の3段構造を、自分の中でしっかりつくることです。

事実 
人に好かれる人に関して、こんな事実があった。

考察
「    ?     」

意見
だから、人に好かれる人の共通点は、……である。

上の、「?」としているところの作業が、
「なぜを考え、なぜを書く」小論文の核心、
「あなたの本当の意見」を生み出すカギです。

では、一歩踏み込む、ってどうすればいいのか?
考えるって、どんな作業をすればいいのか?

それを次回やっていきましょう!

(次回につづく)




『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房1400円




『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
山田ズーニー著 PHP新書660円


内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの
痛みと歓びを問いかける、心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)

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2004-09-29-WED
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