糸井 |
よく野球の選手なんかに訊くようなことだけど、
よその人が羨ましかったりすることは
なかったんですか?
その、普通のギャルが(笑)。 |
加藤 |
ありますね、やっぱり!
遊びたかったりもします。
でも、好きなことを目指しているという、
はっきりした目的があるので、
あまり興味がいかないですね。
馬のことばかり言ってて、同級生には、
「変だよ」と言われるんですけども(笑)。 |
糸井 |
例えば、ポピュラーソングの流行とかは、
どうやって、知るんですか? |
加藤 |
ラジオですね。
あとお店入って聞いて、いいなと思う曲とかで
知るぐらいで。 |
糸井 |
もっと時間があるとしたら、
馬と一緒にいられない時間に、
何をしてると楽しい? |
加藤 |
人と出会えるということでしょうか。
こういうことで糸井さんと知りあえたとか
そういうことが楽しいですね。 |
糸井 |
あ〜。生き物好きなんですね(笑)。 |
加藤 |
(笑)。
今は頭が馬のことと、これから先、
どうやっていこうかということでいっぱいで
趣味といわれても、
まあ、食事を楽しく食べたいとか、
それくらいでしょうか。 |
糸井 |
あ、食べるのは好きですか。 |
加藤 |
食べるのは好き。
ま、楽しく食べるのが好きです。
友だちとか家族と。 |
糸井 |
ご飯を食べるのをケチケチするほど、
困ってはいないんですね。
たぶん、とっても馬が好きなんだね。 |
加藤 |
そうですね‥‥ま、やって駄目なら駄目で。
でもできるだけやろうと。 |
糸井 |
もう、語学とかはぜんぜん大丈夫なんですか? |
加藤 |
はい、日常生活程度には。 |
糸井 |
いろんな言葉憶えちゃったでしょう、
国境をまたぐから。 |
加藤 |
英語と、フランスに長かったのでフランス語。
ドイツ語は、まあ最近なので、
ほんと日常会話ぐらいは、大丈夫ですけど。
オランダ語は、ぜんぜんわかんないです。 |
糸井 |
大丈夫なんですか? |
加藤 |
本がないんですよ、日本で。
単語集っていうのがあるんですけど、
オランダ語を学ぶための教材が、
まだ見つけられてないんで、というか、
あんまりオランダ語が好きじゃないので、
いいやとは思ってるんですけど(笑)。 |
糸井 |
へぇ〜。
オランダ語っていうのは、
ぜんぜん違うんですか。 |
加藤 |
そうなんです。ニャーニャー、とか、
ニーニーいってる(笑)。
あんまり、耳に気持ち良くないので(笑)、
興味ないんです。 |
糸井 |
向こうで、日本人同士での付き合いは、
あるんですか? |
加藤 |
そんなに知り合いはいないですね。 |
糸井 |
平凡な寂しさとか、
もうだいたいわかりきっちゃったら大丈夫? |
加藤 |
そうですね、大丈夫です。 |
糸井 |
馬がいるんだもんね。 |
加藤 |
あの、愛犬もいます。
ジャック・ラセル・テリアっていう。
馬とすごく相性がいいと言われているんですけど、
その犬といると、それだけで幸せかな。 |
糸井 |
なんか、面白い人生になるね、これから先もね。
きっと離れられないですね、馬とは。 |
加藤 |
35〜45歳に、
優勝者がいちばん多いなんていうのを
知っている自分としては、
ちょっと離れるの難しいです。
経験さえ積めれば、なんて思ってるので。
あとは、馬が、まあF1で言えば、
もし自分にとってのフェラーリがいて、
それが、2頭いたら、なんて思うと(笑)。
そしたら、世界一のトレーナーにつくことができて、
環境も自分でそれなりに理解して、素晴しい獣医も、
装蹄師も素晴しい‥‥。 |
糸井 |
「チーム加藤」ができるわけですね。
プロデューサーとしての腕を磨いてくっていうことが、
とっても大事になりますし、
プレーヤーとしての練習も、当然必要ですよね。 |
加藤 |
あの、さっきここに来る電車の中で
思ったんですけど、
日本にいたときはタイトルいっぱい取ってるんです。
でも、向こうでは、小さな試合でも、
なぜかタイトルがあんまり取れない。
もちろん大っきなタイトルなんて持ってないですし。
で、なぜかな?と思って、何の違いだろう、って。
で、気づいたのは、
日本にいたときには、勝ちにいけてたんですね。 |
糸井 |
うん。 |
加藤 |
もちろん、そうでないといけないんですが、
ヨーロッパにいる時は、
今までの試合での心理とか考えると、
失敗をしないように守りにいってるんです。
そして、そういうことで精一杯というか。
で、その部分を、じゃあどうやったら、
勝ちに変えれるのか、攻撃的にいけるのか、って。
ハングリーなのに、守っちゃうんです。 |
糸井 |
101パーセントが出ないわけだね。 |
加藤 |
そうなんですよ。
日本の競技に出てる感覚で、
向こうの競技に出てれば、違うと思う。
だから、35〜45歳の人間が、
上位30位を占めてるのは、
いかなる状況であれ、
いかなるメンタルのときであれ、
勝負できるスピリッツを作り出せるからなんです。 |
糸井 |
ファイティングスピリットっていうのは、
日本人は、実は弱いですよね。 |
加藤 |
そうみたいですね。 |
糸井 |
「血」だね。 |
加藤 |
はい、そこがいちばん苦労したんですね。
ここで頭出しちゃいけないんだ、
っていうようなこともあったりしました。 |
糸井 |
引いてるけど、向こうが認めてくれるのを
待ってるみたいな。 |
加藤 |
そうですね(笑)。
頭では、それを変えようと思ってるんですけども。 |
糸井 |
引きながら勝つっていうのは、
んー、なんだろう、行ってこいの部分だけで、
あと4割ぐらい必要になりますもんね。
で、そんなに力が出るはずがないですよね。 |
加藤 |
でも、外人はほんとに考えてないですよ! |
糸井 |
自然に勝とうとしちゃう? |
加藤 |
はい。自然に、です。
あれはすごいと思う!
|
(つづきます:次回の更新は、