がんばれ、加藤麻理子。
障害は、馬と跳ぶ。アテネ五輪への道。

第8回 日本人が海外で勝つために。



糸井 よく野球の選手なんかに訊くようなことだけど、
よその人が羨ましかったりすることは
なかったんですか?
その、普通のギャルが(笑)。
加藤 ありますね、やっぱり!
遊びたかったりもします。
でも、好きなことを目指しているという、
はっきりした目的があるので、
あまり興味がいかないですね。
馬のことばかり言ってて、同級生には、
「変だよ」と言われるんですけども(笑)。
糸井 例えば、ポピュラーソングの流行とかは、
どうやって、知るんですか?
加藤 ラジオですね。
あとお店入って聞いて、いいなと思う曲とかで
知るぐらいで。
糸井 もっと時間があるとしたら、
馬と一緒にいられない時間に、
何をしてると楽しい?
加藤 人と出会えるということでしょうか。
こういうことで糸井さんと知りあえたとか
そういうことが楽しいですね。
糸井 あ〜。生き物好きなんですね(笑)。
加藤 (笑)。
今は頭が馬のことと、これから先、
どうやっていこうかということでいっぱいで
趣味といわれても、
まあ、食事を楽しく食べたいとか、
それくらいでしょうか。
糸井 あ、食べるのは好きですか。
加藤 食べるのは好き。
ま、楽しく食べるのが好きです。
友だちとか家族と。
糸井 ご飯を食べるのをケチケチするほど、
困ってはいないんですね。

たぶん、とっても馬が好きなんだね。
加藤 そうですね‥‥ま、やって駄目なら駄目で。
でもできるだけやろうと。
糸井 もう、語学とかはぜんぜん大丈夫なんですか?
加藤 はい、日常生活程度には。
糸井 いろんな言葉憶えちゃったでしょう、
国境をまたぐから。
加藤 英語と、フランスに長かったのでフランス語。
ドイツ語は、まあ最近なので、
ほんと日常会話ぐらいは、大丈夫ですけど。
オランダ語は、ぜんぜんわかんないです。
糸井 大丈夫なんですか?
加藤 本がないんですよ、日本で。
単語集っていうのがあるんですけど、
オランダ語を学ぶための教材が、
まだ見つけられてないんで、というか、
あんまりオランダ語が好きじゃないので、
いいやとは思ってるんですけど(笑)。
糸井 へぇ〜。
オランダ語っていうのは、
ぜんぜん違うんですか。
加藤 そうなんです。ニャーニャー、とか、
ニーニーいってる(笑)。
あんまり、耳に気持ち良くないので(笑)、
興味ないんです。
糸井 向こうで、日本人同士での付き合いは、
あるんですか?
加藤 そんなに知り合いはいないですね。
糸井 平凡な寂しさとか、
もうだいたいわかりきっちゃったら大丈夫?
加藤 そうですね、大丈夫です。
糸井 馬がいるんだもんね。
加藤 あの、愛犬もいます。
ジャック・ラセル・テリアっていう。
馬とすごく相性がいいと言われているんですけど、
その犬といると、それだけで幸せかな。
糸井 なんか、面白い人生になるね、これから先もね。
きっと離れられないですね、馬とは。
加藤 35〜45歳に、
優勝者がいちばん多いなんていうのを
知っている自分としては、
ちょっと離れるの難しいです。
経験さえ積めれば、なんて思ってるので。

あとは、馬が、まあF1で言えば、
もし自分にとってのフェラーリがいて、
それが、2頭いたら、なんて思うと(笑)。
そしたら、世界一のトレーナーにつくことができて、
環境も自分でそれなりに理解して、素晴しい獣医も、
装蹄師も素晴しい‥‥。
糸井 「チーム加藤」ができるわけですね。
プロデューサーとしての腕を磨いてくっていうことが、
とっても大事になりますし、
プレーヤーとしての練習も、当然必要ですよね。
加藤 あの、さっきここに来る電車の中で
思ったんですけど、
日本にいたときはタイトルいっぱい取ってるんです。
でも、向こうでは、小さな試合でも、
なぜかタイトルがあんまり取れない。
もちろん大っきなタイトルなんて持ってないですし。
で、なぜかな?と思って、何の違いだろう、って。
で、気づいたのは、
日本にいたときには、勝ちにいけてたんですね。
糸井 うん。
加藤 もちろん、そうでないといけないんですが、
ヨーロッパにいる時は、
今までの試合での心理とか考えると、
失敗をしないように守りにいってるんです。
そして、そういうことで精一杯というか。

で、その部分を、じゃあどうやったら、
勝ちに変えれるのか、攻撃的にいけるのか、って。
ハングリーなのに、守っちゃうんです。
糸井 101パーセントが出ないわけだね。
加藤 そうなんですよ。
日本の競技に出てる感覚で、
向こうの競技に出てれば、違うと思う。
だから、35〜45歳の人間が、
上位30位を占めてるのは、
いかなる状況であれ、
いかなるメンタルのときであれ、
勝負できるスピリッツを作り出せるからなんです。
糸井 ファイティングスピリットっていうのは、
日本人は、実は弱いですよね。
加藤 そうみたいですね。
糸井 「血」だね。
加藤 はい、そこがいちばん苦労したんですね。
ここで頭出しちゃいけないんだ、
っていうようなこともあったりしました。
糸井 引いてるけど、向こうが認めてくれるのを
待ってるみたいな。
加藤 そうですね(笑)。
頭では、それを変えようと思ってるんですけども。
糸井 引きながら勝つっていうのは、
んー、なんだろう、行ってこいの部分だけで、
あと4割ぐらい必要になりますもんね。
で、そんなに力が出るはずがないですよね。
加藤 でも、外人はほんとに考えてないですよ!
糸井 自然に勝とうとしちゃう?
加藤 はい。自然に、です。
あれはすごいと思う!
(つづきます:次回の更新は、
来週・水曜日の予定です。)

2003-10-03-FRI

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