がんばれ、加藤麻理子。
障害は、馬と跳ぶ。アテネ五輪への道。

イタリアより、
加藤選手から近況レポートが届きました!
臨時で掲載いたしますね。


9月15日

イタリア遠征最終週です。
朝晩と日中の気温の差が15度は違う天候で、
馬(スポートナント号)のコンディションニングには
とても気をつかいました。
初日から最終競技のグランプリだけを頭に置き、
馬の筋肉の状態とメンタルを
徐々に仕上げていきました。
グランプリでは第一走行・第二走行とも
満点(減点0)で、61頭中の6位に入賞しました。
スポートナント号としては、
6回目のグランプリ出場での入賞なので
本当に周囲を驚かせています。
小学生が大学入試の試験で
上位6位になるとでも言うか、
とにかくその能力は、ずば抜けています。
このスポートナント号の能力を最大限に生かせる
環境・トレーニングを保ち続けることが、
アテネへ行き成績を出すために
必要不可欠な事だと考えています。

今はイタリアから帰路の最中で、
ほとんど馬運車の中にいます。


第4回  それでも、しがみつく。




糸井 日本に3ヶ月に一度帰ってくるっていうのは、
ヨーロッパでの活動のもとになる
プロデュース的な基盤を作る仕事を
しに来るわけですか?
加藤 いや、実際、まだそこまでできないですし、
近くにブレーンもいませんので、
今までは、後援会を発足させていだたいて、
たとえば、今いる馬のオーナーになっていただいてるとか。
糸井 あ、そうかそうか。
つまり、「俺の馬を加藤に預けてる」というかたちで、
少しでも維持費が稼げるわけですね?
・・・・他にそんな競技を思いつかないなあ。
加藤 ほんとですよね。
糸井 たとえば、プールを使う人だったら、
プールを自分で持ってなきゃなんない
っていったら大変だけど、プールは「ある」からねぇ。
カーリングだって、自分のもの持ってなくったって、
「ある」もんね。
馬は、存在すること自体にお金かかる。
加藤 ヨーロッパに行って10年近くになるんですが、
最初はナショナルのレベルで、やっていたんですが、
途中でインターナショナルにいけるようになった。
その理由が、スポンサーがいたからなんです。
その方のおかげてシドニーを目指せたんですよ。

そこから、世界が変わりました。
その前までは、国際試合なんて、
もう雲の上の話で。
糸井 出るまでの準備ができないで
あきらめてたっていうことなんですか。
加藤 あきらめてはいないんですけど、
どうしたらいいのか模索していました。
でも、出れないものは出れないから、
たぶん無理だろうなと思ってたら、
そういうかたとの出会いがあったんです。

スイスの銀メダリストのところに修業に行けて、
馬も持って、経費も出て、というように、
ほんっとに世界がパーッと変わりました。
でも、シドニーオリンピックの最終選考で、
一番最後の障害が跳べず、落馬。
オリンピックに行けなかった。

やっぱり、夢をかけていただいたのに、
何もお返しできなかったのが悔しかったです。
その後、辞めるか、続けるか、
考えてたこともありました。
糸井 今もそのスポンサーのかたはいらっしゃるんですか?
加藤 いえ、シドニーオリンピックで一旦
終了しました。
糸井 はぁ、じゃ、今はゼロなんだ。
今現在が無理じゃないですか。
加藤 でも、シドニーまで行っていた馬は、
そのまま乗せて下さってるんですよ。
それがあるので、競技に出なければ、
ボックス代だけを、何頭かぶんだけ払っておけば、
まあ食べてはいられるので、
今までは良かったんですけども。
糸井 あと1年、アテネまではもたないですね。
加藤 ぜんぜんもたないです。
糸井 ぜんっぜんもたないですね(笑)。
あの、失礼ですけど、
家族の負担っていうのも、当然あるんですよね?
加藤 精神的な負担はかなり‥‥。
糸井 あ、経済的には、
ちゃんと上手に自立できてるんですか?
加藤 そうですね。
父は、最初から自分のことなんだから、
最後まで自分でやれ、という考え方で。
私にとっては、あんまりありがたくないですけども。
糸井 (笑)。
加藤 その時のスポンサーのかたは、父の昔からの友人だったり、
後援会の発足にしても、両親のつながりがあったので
実はすごく助けてもらっているんですが。
糸井 もともとお仕事が馬の関係ですもんね。
それは助かりましたね。
加藤 間接的に経済的な支えになってもらっている
部分は大きいと思います。
糸井 直接支えになってたら、キリないですもんね。
加藤 絶対に、無理は言えないので、それはないです。
糸井 だけど、聞いてみなきゃわかんない、
すごい話ですねー。
それをひとりで、やってるんだ。
想像してたよりすごいですね。
じゃ、これから先っていうのは、
ほっといたら、ただ練習してくうちに、
もうできなくなりました、っていう、
中小企業が潰れてくときみたいになりますよね。

でも、そうじゃない道があるって、今、信じて、
優勝するんだ、という気持ちで、
活動してるわけですよね。
はぁー。
年間で3〜4,000万円必要、いや、もっとですね。
加藤 だから、海外の選手たちは、
大企業のスポンサーがついているだとか、
プライベートでも、ほんとに裕福で、
馬術にお金を使おうっていう人がいっぱいいるんです。
日本にはそれがないので、これだけ選手も少なくて。
日本の女性で、今まで、ここまでしがみつく人間が
あまりいなかったんです。
糸井 しがみついてますよねー(笑)。

(つづきます)

2003-09-19-FRI

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