エナガのねぐら。  カワイイ小鳥の観察記 フロム富士山麓
 
今週のエナガ  巣造りのようす。  観察日 2012年5月10日 − 5月15日
 

5月10日、9号巣があるモミのまわりを
ぐるっと大回りに歩いてみたところ、
巣が直視できる場所がありました。
そのおかげで、9個目にして、ようやく、
巣造りの様子を観察できました。

▲9号巣にコケを運び込むエナガ。

エナガがつかまっている箇所の下のほうに、
緑色の球状の巣があるの、わかりますか?
モミのチクチクした葉っぱに、
コケの巣をじょうずに乗せています。

高さ20メートルくらいのモミの中腹から、
45度くらいの角度で宙へ伸びている枝の先のほうに、
この巣は作られていて、その木から20mくらい
離れた薮の中から撮影しています。

▲撮影の位置関係はこう。

枝の下から見ているので、
入り口とか微妙な構造が見えませんが、
ワガママは言えません。
これでも十分ありがたいです。

9日10日の二日間、
巣造りの様子をムービーにも撮りました。
こちらです。

▲5月9日の様子。

コケを持ってきて、なにかごそごそやっていたり、
マユの糸で枝に縫い付けるような仕草が見られます。
また、一羽が作業しているとき、もう一羽は
近くの枝でジッと待機している様子がわかります。

▲5月10日の様子。

10日には、どこかから集めて来た
鳥(キジバトかな?)の羽根を、
大量に持ち込んでいます。
これを巣の内壁に敷き詰めて、
保温をよくする工夫ですね。
(かしこいなあ…)

この9号巣は、15日現在、
ときおりペアでやって来ては、
何やらゴソゴソしています。
今は、できるだけ彼らの気が散らないように、
一日一度だけ、確認に行くようにしています。
うまく続けてくれるといいですね。

一方、5号巣はまことに順調であります。

そろそろ巣立つ頃だと思うので、
毎日3回朝昼晩と観察に行っておりますが、
15日現在、まだ巣立っておりません。

このところ、エサをもってきた親鳥が、
巣の手前あたりで1〜2秒空中に静止しては、
止まり木に戻る動作を繰り返しています。
これは「ホバリング・ディスプレイ」と呼ばれていて、
エナガが雛へ給餌するときによくやる動作です。

▲ホバリング・ディスプレイ

毎日観察していると、日を追うごとにホバリングの
回数と時間が増えているようなので、ひょっとすると、
雛の巣立ちを催しているのかな?と思えてきます。
雛から見ると、エサのおあずけをくっているように
見えるんじゃないかな、と感じました。
「エサが欲しければ出てこーい」みたいな。

ホバリングの回数と秒数をずっと記録しておけば、
給餌日数との相関関係を示せたかもしれないのに、
惜しい事をしたなぁ…。
このホバリングに限らず、
観察したあらゆる事柄を計測して記録しておくと、
あとでいろいろな解釈ができて楽しいでしょうね。

こういったデータ(緯度経度+日時+メモ)を、
シンプルな操作で記録するようなiPhoneアプリが
欲しくなっちゃったので、
近々、自分で作ろうと思っています。
(わたしこれでもプログラマですし)

それはさておき、この5号巣、
来週には巣立ちの報告ができると思います。
巣立ちを見逃さないよう、祈っていてくださーい。

 

その9 仕草編1・ぶらさがる

エナガさえいれば、強く生きていける!
そんな気がするみなさん、
きっとそれは気のせいだと思いますが、
いかがお過ごしでしょうか。

さて最近の本編(上半分)は、
巣造りと子育ての話が多いです。
子育てったって雛が出るわけじゃなく、
コケとかマユとか蛾とか青虫を
運んでる写真ばかり。

これはちょっと可愛い成分が足りんぞ…
との危機感を(勝手に)抱きましたので、
今回のエッセイではですね、
エナガの仕草を紹介する
「仕草編」を創設いたしまして、
その記念すべき第1回「ぶらさがる」を
お届けいたしましょう。

おりゃ!

▲エナガは、ぶらさがる生き物です。

▲高い木の上でもぶらさがります。

▲仲良くぶらさがって小さい虫を食べています。

▲細い枝にぶらさがって冬芽も食べます。

エナガはとても小さくて体が軽いので、
他の小鳥よりもずっと細い枝にとまれます。
だから、他の小鳥が食べにくいような細い枝先の
冬芽や昆虫にありつくことができるんですね。
で、細い枝にとまると、どうしても重力に
ひっぱられてクルッと裏返ってしまい、
つまりは、ぶらさがるしかないわけです。
本人にはまったくそのつもりがなくても、
自動的にカワイクなってしまうという、
そういう仕組みとなっております。

▲太い木にもぶらさがります。

▲ギャー、毛玉がぶらさがってコッチ見てる!

世界に何羽のエナガが生きているのかわかりませんが、
いま、この瞬間、きっと数千羽のエナガが、
世界中のアチコチでぶらさがっていると思います。
そう考えると、なんだか、やっぱり、
強く生きて行けそうな気がしますね。

それでは皆さん、また来週〜!

2012-05-22-TUE
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