ダーリンコラム

糸井重里がほぼ日の創刊時から
2011年まで連載していた、
ちょっと長めのコラムです。
「今日のダーリン」とは別に
毎週月曜日に掲載されていました。

ありゃま、たいへんなことになっちゃってる!

たいしたことを言うつもりはないんだ。
いつも、そうなんだけれど、
今回は、スペシャルにたいしたことじゃない。

街を歩いていて、
「ありゃま、たいへんなことになっちゃってる」と、
思ったことはない?
いや、急にそう言われても困るよね。

変わってないように見えて、
がらっと変わってる。
そういう魔法のような変化があるわけだよ。
そりゃね、しょっちゅうとは言えないけど、
かなり、あるんだよ。

最初に言ったとおり、たいしたことじゃないよ。
でも、「たいへんなことになっちゃってる」んだ。
なーんとなく、みんなが知らないうちに、ね。

ちょっと考えてみれば、当たり前のことなんだけどね。

いつのまにか、ちょっとずつ、
電話ボックスがなくなっていたよね。
あることはある。それはそうだ。
でも、もっとあそこにもあそこにも、
記憶の中には、たくさんの電話ボックスがあった。
少しずつ、なくなっているんだよね。
もちろん、ピンクの電話も、赤電話も、緑色の電話も、
少しずつ少しずつ減っていって、
かなり探さないと見つからない状態になってる。
これ、理由は、みんなわかってるから、
驚きはしないけれど、なくなってることについて、
考えもしなくなっているよね。

次、行くよ。
これ、「まぁ、いやらしい」なんて言われると、
不本意なんだけれど、
日本中か世界中か知らないけど、
おっぱいが小さくなっている。
いや、一時、やたらに大きくなった時期があったんで、
いまが小さくなったように思えるのだろうけれど、
どうでしょう、印象としては
体積が50%になったというイメージだね。
これも、理由はきっと簡単なことだろう。
実体が変化したのではなく、
流行が、そうなったのだろう。
大きくないと似合わないファッションが終わって、
大小じゃないよなファッションになってるのだろう。
下着のメーカーの人に訊いたら、きっとわかると思う。
おっぱいの大きさをどう見せるかの流行が、
景気と連動しているかどうかは、知らない。

次。
指圧、整体、鍼、マッサージなどの看板が、
どんどん増えている。
「いや、昔からあったよ」とも言われるだろうけど、
昔からの店も、ひっそりとではなく、
どんと看板を出してアクティブに
新規のお客さんを獲得しようとしている。
これについても、理由はわかる。
疲れている人が多くなったのだろうし、
その疲れを癒すのにマッサージなどが効くということが、
理解されたからだろう。
年寄りくさいから嫌だ、なんて言ってるより、
実際に楽になりたいと思う人たちが増えているのだろう。
市場があれば、供給も増える。
「手に職」の典型的な職業だし、
ある程度のしっかりした学習期間がないと
免許も受けられない仕事なので、
競争が一気に過熱するということもない。
しばらくは、もともと資格を持っていた人たちが、
がんばる時期が続くのだろうな、と思う。

もうひとつ。
これが言いたくて、書きはじめたくらいなのだ。
ここまでの、電話ボックスも、おっぱいも、指圧も、
ぜんぶ、これを言いたいがための前ふり。

言いたかったのは、これだった。

「あらゆるあめが、のどあめになってる!」

あんまり説明は要らないだろう。
コンビニでも、スーパーでも、駅のキオスクでも、
どこでもいいから、
キャンディ売ってるところを見てほしい。
どんどんどんどん、「のどあめ」になっている。
どうやら、日本人ののどは大変なことになってる。
日本人ののど環境は、ひどいことになってるらしい。
これは、実感としてもわかっているのだけれど、
ぼくだけじゃなかったんだ、としみじみ思う。
「のどあめ」を、
こんなにつくっても売れる環境というのは、
「のど」の市場が、まだまだいくらでも、
「あめ」以外にあるということだろう。
体脂肪ばかりじゃなく、「のど」ビジネスは、
この先、かなり期待できると思うんだよね。

疑うなら、ちょっと見に行ってごらんなさいよ。
あめの売り場を。
「たいへんなことになっちゃってる」と、
びっくりすると思いますよー。

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