ダーリンコラム

糸井重里がほぼ日の創刊時から
2011年まで連載していた、
ちょっと長めのコラムです。
「今日のダーリン」とは別に
毎週月曜日に掲載されていました。

みみしたがうのか。

今回は、いつも以上にちからぬくよ。
めでたい日だからね、自分の。
そうそう、誕生日誕生日。

六十歳になってしまった。
十五歳が志学で、
三十歳が而立、
四十歳が不惑ときて、
五十歳が知命、そして、
六十歳になったら耳順ということらしい。

耳順だよ、耳順。
みみしたがうんだよね。
そうはいかないもんだよなぁ。

でも、あくまでもこれは孔子さまの話でね、
ふつうのぼくらが望んだら、欲深だよ。

実感としては、そうねぇ‥‥。

「そうこうしているうちに、
 日もとっぷりと暮れてまいりまして‥‥」
というくらいの感じで、60年生きてしまったんだ。
「え、もうこんな時間か。まいったなぁ」
という気持もあるし、
ずいぶん長いこと遊んでるなぁという感じもなくはない。
夕暮れになって、カラスが鳴いて、
山の向うに日が沈んでさ、暗くなっても、
帰るところがよくわからないので、
まだしばらくは外で遊ばせてもらいたいよ。

ということなんで、
還暦を過ぎた老人じゃが、いも、
どうか、この先も嫌がらずに遊んでやってくだされ。
お礼に、あなたたちにも、
一年にひとつずつ年齢をあげましょう。

そんで、今週の『ダーリンコラム』を、
これでいいやってことにしてもらいたい。
六十歳だから、もう疲れてるんだ。
「赤いちゃんちゃんこ」にからめたお祝いは、
たのむからやめてください。
ほんとにつらいんだから、その冗談。
いや、本気なら、もっと哀しいのよ。

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