HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

カッパとウサギの コーヒーさがし

第17回「大吉くんがやってきた!」編うさぎのことを知ってほしい。
福田 吹石さん、
ミルで豆を挽いたことはありますか?
吹石 いや‥‥
あ、コマーシャルでやったことがあったかも。
でも、ふだんの生活では、ないです。

福田 そうですか、じゃあ、ぜひ。
山下 ぜひ。
吹石 え、うそー!
福田 いや、そんな大層なものでは(笑)。
吹石 えー、でもふだんコーヒーを飲まないから、
こういう器具に触れることもないですし、
なんかちょっと緊張してるかも(笑)。
福田 ただ回すだけなんで、ゴリゴリと。
吹石 こ、こうですか‥‥? こっち回し?

福田 はい、それで大丈夫です。
山下 けっこう時間がかかるので、
お話をしながら。
吹石 わー、おもしろーい。
初めてだー(笑)。
山下 ‥‥では、
大吉くんのお話をきかせてください。
吹石 はい、もちろん(ゴリゴリ)。
山下 7歳のミニウサギで、
男の子、ですよね。

吹石 そうですね。
たぶん、7歳くらい。
山下 たぶん、というのは?
吹石 大吉は拾ったコなので、
正確な年齢がわからないんです(ゴリゴリ)。
山下 そうか、そうでしたね。
大吉くんとの出会いについては
「うさぎの時間」にも書かれていましたね。
そのあたりのお話、
あらためてうかがえますでしょうか。
福田 拾ったんですか。
吹石 ええ、間接的に拾ったというか‥‥。
ペットショップの前に捨てられていたんですよ。
朝お店を開けようとしたら、
入り口の前に段ボールが置いてあって、
その中に大吉がいたんだそうです。

山下 ペットショップの前に置いておけば
なんとかしてもらえると思ったんでしょうか。
吹石 どうなんでしょう‥‥。
とにかく、マネージャーから
電話がかかってきたんです。
「助けてあげて」と(ゴリゴリ)。
福田 マネージャーさんが
たまたまそこに居合わせたんですね。
吹石 そうなんです。
「あなたが飼わないと、
 あのコは死んじゃうんだよ」って。
山下 おおー。
吹石 わたしは一人暮らしだし、
ちゃんと責任を持って世話ができるか
そこが心配だったんですよ。
ところが、お店に行って
ひと目みて、抱っこをしたら‥‥
もうダメでした(笑)。

山下 それはよーくわかります(笑)。
出会ったんですよね。
吹石 そうですね‥‥ふう‥‥(手を止める)。
福田 あ、疲れますよね。
あとはぼくが回します。
吹石 あー、ごめんなさい途中なのに(笑)。

山下 で、その大吉くんは最初
どんな感じだったのでしょうか。
吹石 それが、捨てられたわりには
トイレもしっかりしつけられていて、
人見知りもしないですし、
干し草もよく食べるんです。
山下 へええー。
抱っこも大丈夫でした?
吹石 ぜんぜんいやがりませんでした。
山下 そうでしたか、うちのは
抱っこさせてくれるまでに5年かかりました。
吹石 5年‥‥よくあきらめなかったですね。
山下 こんくらべでした。
信用してくれるまで何度も蹴られて、
引っかき傷だらけになって(笑)。
吹石 あー、わたしもよく、
夏場は薄着で抱っこするんで、
いつも胸元が傷だらけです。
山下 女優さんなのに(笑)。
吹石 「なんですかこの傷は!」って、
よく叱られるんです(笑)。
福田 ‥‥なんか、大吉くん、
いい人にもらわれましたね。

山下 そうだねえ。
福田 大吉、ツイてますね。
吹石 いや、でも、
ツイてたのはわたしのほうだと思います(笑)。
大吉が来てくれて。
福田 ああ‥‥。
山下 ‥‥いいなあ、やっぱりうさぎは。
吹石 ‥‥そうですね。
福田 ‥‥‥‥。
吹石 ‥‥‥‥。
山下 ‥‥思い出します。
吹石 ‥‥‥‥。

山下 ‥‥あ、すみません、なんか(笑)。
福田 ぼくは何度か会ってますけど、
しあわせなうさぎでしたね、パンクは。
山下 そうですね。
でもまあ、ぼくらのほうがしあわせでしたけどね。
福田 同じこと言ってはりますね(笑)。
山下 そうか、ほんとだ(笑)。
吹石 ね(笑)。
でも、うさぎのことって
あんまり知られてないですよね。
山下 そうかもしれません。
吹石 うさぎを飼ってるっていうと、
「うさぎって頭悪いんでしょ?」とか
「コミュニケーションできないでしょ?」
って言われて。
山下 はい。
吹石 「いや、言葉だって覚えるし、
 感情もわかるよ、呼べば来たりするよ、
 それぞれに個性だってあるんだよ」
って言うと、みんなびっくりするでしょ。

山下 信じてもらえなかったりします。
吹石 そのくらいのことは、
みんなに知ってもらいたいですよね。
山下 ええ、そのくらいのことは‥‥。
あまりえらそうなことは
言えないですけれど。
福田 うさぎって、けっこうきれいですよね。
吹石 そう、ふわふわ。
山下 ひまさえあれば毛づくろいして。
吹石 「匂うんでしょう?」とか言われますけど‥‥
山下 毎日掃除してれば、それほどでも。
福田 そうか、ウサギ自体にはほとんど匂いが‥‥
吹石 ないんです。
山下 完全に草食で、
肉食の動物にみつからないよう
気配を消す生き物ですから。
おしっこはちゃんと決まった場所でするし。
福田 そっかー、頭いいんだね。
吹石 ほめてもらったよ(大吉くんに)。
頭いいねって。

山下 ほんと、びっくりしますよね。
こんな生き物だったのかと。
吹石 日々、いまだに毎日、
新鮮にかわいいと思うんで、
もう異常かもしれませんよね(笑)。
写メもいっぱい撮って、
「かわいい、かわいい」って、
見返したら10枚くらい同じ写真。
でも、またしばらくすると、
「かわいい!」って撮りまくってる(笑)。
福田 (笑)

吹石 あ、福田さん、
いまちょっと、あきれた笑いを(笑)。
福田 いえいえいえ、そんなことないです(笑)。
‥‥豆が挽けましたので、
そろそろコーヒーを淹れますね。
山下 福田さん、がんばりどころです。
福田 吹石さん、これ、
挽きたての匂いです(ミルを差し出す)。

吹石 ‥‥すっごい、いい香り!
ちょっとコーヒー、好きになるかも。
山下 責任重大ですね。
福田 責任重大です。
吹石 わたしの「コーヒー道」を
目覚めさせてください。
福田 じゃあ、ぼくも「ウサギ道」を
きょう目覚めさせたいと思います。
山下 おっ? 福田さん、いい!
きれいな展開をありがとうございます!
福田 ‥‥ん?
なんですか。これ?
山下 え?
福田 ちゃぶ台の下に、栗がありますよ。

吹石 ‥‥栗。
山下 そ、それは‥‥‥‥ああああ‥‥。
福田 なんすか? この栗。
山下 ああああ‥‥もうほんっとに、
タイミングの悪いことを(笑)。
福田 ん?
山下 あのですね‥‥
大吉くんは「むき栗」が大好物だと
こっそりきいていたわけですよ、ぼくは。
福田 はい。
山下 だからそれを、
最後にプレゼントしようと思ってたんです。
あくまで「最後のサプライズ」として。
福田 あー、はいはい。
‥‥ん?
山下 それをこのタイミングで、
「栗がありますよ」って。
吹石 (笑)

福田 ああー、台無しですね。
山下 福田さんのタイミングの悪さに
ぼくがサプライズしてしまいました。
福田 ふぉふぉふぉふぉ(←笑い声)
吹石 福田さん、ちょっとやらかしましたー。
「栗ありますよー」(笑)。


(がんばれ福田さん!
 このシリーズは珍しく全5回。
 あしたにつづきまーす)

2010-11-27-SAT
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