「こんにちは。滝川クリステルです。」滝川クリステルさんがいま、一番気になる仕事。

ようこそ、滝川クリステルさん!
雑誌「GOETHE」の企画で、
滝川さんと糸井重里の対談が実現しました。
これまでにたくさんの著名人と会って
第一線の仕事を見てきた滝川さんが、
「いま、一番気になる仕事」として、
糸井重里をインタビューしてくださいました。
フリーアナウンサーとしての活動のほか、
動物愛護活動にも力を入れている滝川さんと、
仕事や動物の話を中心に盛り上がりました。
対談の最後に「イメージが変わりました」と
糸井が語ったふたりの初対面、どうぞおつき合いください。
※「GOETHE」2017年6月号に掲載された対談を、
ほぼ日編集バージョンでお届けします。

滝川クリステルさんプロフィール

1977年フランス生まれ。
東京オリンピック・パラリンピック
競技大会組織委員会 顧問。
WWFジャパン 顧問。
フランスの芸術文化勲章シュバリエを受章。
ローランギャロス日本親善大使
一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル代表。

仕事ってなんですか

滝川
糸井さん、最後に質問してもいいですか。
いつも、お話の最後に必ず訊く質問があって、
糸井さんにとって、お仕事とは改めて何なのかを、
簡単に教えていただきたいのですが。
糸井
うーん、仕事ねぇ‥‥、
生きることそのものじゃないですかね。
滝川
生きること。
糸井
うん。
ご飯を食べるだとかの
延長線上にあるものだと思いますね。
仕事はおもしろいし。
昔は仕事するのが嫌で、泣いた人なのにね。
滝川
そうなんですね。
糸井
勤めるのが嫌だったんだと思います。
昔、漫画家になりたいと思っていた理由は、
上司がいないからなんですよね。
滝川
上司の下に自分がいるのは、
合わないという気持ちがあったんですね。
糸井
一度だけ勤めていたときには、
上司と仲良くやってましたけどね。
ぼくは、ドラマに出てくるような会社が
嫌だったんでしょうね。
上下があって、そういうのは嫌ですね。
滝川
本当にフェアな感じがいいと。
糸井
フラットなほうがいいですね。
上にいる人に対しても敬意は持っていますけど、
あんまり、特別に大事にしようとも思わないし。
ぼくにとって、
ユニフォームを着た野球選手以外は、みんな平等。
滝川
えっ、野球選手?
糸井
ユニフォームを着た野球選手は、
神々だと思って見ています。
大統領よりも偉いんです。
普通の服装になっちゃったら、そうでもなくて。
滝川
ご自身の中で、
独特な順番で成り立っていますね。
糸井
野球は特別ですよ。
でも、それ以外にあまり順番とかありません。
滝川
糸井さんは、ご自分で
何が本職だと思われていますか。
糸井
本職はないですね、本当に。
全部本職じゃない人間として
やっている気がします。
滝川
全部が本職じゃない。
糸井
うん。
本職って、仕事用に自分が
変形しちゃっている人のことですよね。
指先を酷使する職人さんの節が太くなっているとか。
たとえば、エッセイストという人だったら、
エッセイを書く種を、歩きながら無意識で探しますよね。
それはもう、変形しちゃっていますよね。
本職になったことで、悲しいことでもあります。
ぼくは、本職以外の人が、
本職以上の答えを出すこともあり得ると思うんです。
だけど、ずっと同じことをやってねって
期待されたら逃げ出しちゃう。
滝川
飽きちゃうんですか。
糸井
本職になると、
定石で進める時間が長くなるから。
将棋でいえば、必ず角道を空けるとか。
あの時間、つまんないですよ。
滝川
セオリーが嫌なんですね。
糸井
そうですね。
セオリーとして必要な部分は大事だし、
ぼくらにもきっと、その要素はあります。
だけど、そうじゃないところを、
いつでも見つけていたいから。
原子物理学者の早野龍五さんが、
うまいことを言っていました。
滝川
どんなことでしょう。
糸井
早野さんは『知ろうとすること。』という本を
一緒につくった原子物理学者です。
早野さんが、こんなことをおっしゃっていました。
「『アマチュアの心で、
最後はプロの仕事としてまとめること』。
そして、もっと大事なことは、
『楽しそうにやること』」ということでした。
いつでも楽しくやれるとは限らないけれど、
楽しそうにやることはできるから。
これは、自分にも合っているなと思えたんです。
滝川
『知ろうとすること。』の中で
書かれていたのでしょうか。
糸井
この間、東大の先生を退官する最終講義があって、
そこで、これまでを振り返っての発言でしたね。
その後で早野さんに会ったら、
ちょっとおもしろい話を教えてもらいました。
もう20何年の間、
早野さんは311号室という研究室にいたんです。
奥さんから聞いたんですけど、
研究室を引き払うにあたって、
家にどんな荷物を持って来たかというと、
これが、カッコいいんですよ。
‥‥猫の置物ひとつだった。
滝川
ひとつだけ。
糸井
本棚に本がザーッとあったのに、
なにも持ってこなかったんです。
奥さんも、家の中に一応スペース空けておいて、
覚悟していたらしいんです。
そしたら、猫の置物ひとつ、紙袋に入れて帰ってきた。
滝川
すごい。
糸井
おしゃれですよね。これはマネできない。
プロとかアマチュアとかを越えて、
凄みがありますよね。
滝川
そうですね。
まさに、人間の凄みですね。
糸井
そんな人と、チームとして
一緒に仕事ができることも、仕事のおもしろさです。
ぼくとは全然違うタイプの人なのに、
一緒のチームがつくれるんです。
滝川
私も、いつかチームで
糸井さんと何かができたら。
糸井
はい、ぜひ。
なにか、声をかけてくだされば。
今日は、ありがとうございました。
滝川
はい。ありがとうございました。

(以上で、滝川クリステルさんと
糸井重里の対談はおしまいです。
ご愛読いただき、ありがとうございました!)
2017-06-27-TUE