「こんにちは。滝川クリステルです。」滝川クリステルさんがいま、一番気になる仕事。

ようこそ、滝川クリステルさん!
雑誌「GOETHE」の企画で、
滝川さんと糸井重里の対談が実現しました。
これまでにたくさんの著名人と会って
第一線の仕事を見てきた滝川さんが、
「いま、一番気になる仕事」として、
糸井重里をインタビューしてくださいました。
フリーアナウンサーとしての活動のほか、
動物愛護活動にも力を入れている滝川さんと、
仕事や動物の話を中心に盛り上がりました。
対談の最後に「イメージが変わりました」と
糸井が語ったふたりの初対面、どうぞおつき合いください。
※「GOETHE」2017年6月号に掲載された対談を、
ほぼ日編集バージョンでお届けします。

滝川クリステルさんプロフィール

1977年フランス生まれ。
東京オリンピック・パラリンピック
競技大会組織委員会 顧問。
WWFジャパン 顧問。
フランスの芸術文化勲章シュバリエを受章。
ローランギャロス日本親善大使
一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル代表。

2020年がやってくる

糸井
今、いろんな会社の人が、2020年をどうするか、
漠然とイメージをしながら動きはじめていますよね。
東京オリンピック招致のプレゼンが通ったから、
本当によかったんですよ。
みんなが言うでしょうけど、
やっぱりすごいことだったんですよ。
滝川
本当にそうですね。
自分としては、何が起こったか
よくわからない瞬間でしたけど。
糸井
よかったですよね。
滝川
私としても、東京オリンピックのおかげで、
今の活動にもつながっているので。
2020年までに、あらゆることを
よくしようという雰囲気は生まれていますよね。
一人ひとり、会社とは異なる個人レベルでも、
社会のために、日本のために、
という気持ちが増えた気がするんですよね。
糸井
人に見られるというだけで、
人間って変わるので。
滝川
そうですね。
自信を持って日本のことを考え直すきっかけにもなって、
恥ずかしくないようにとか、
たのしく居心地のいい国であるようにとか。
糸井
そうですね。
まだ、仕組みが整っていないことも山ほどありますが、
まずは、いい時間を一緒に過ごすということを、
2020年に実験ができるわけですから。
滝川
今まででいうと、2012年のロンドンとかは、
本当に評価が高かったんです。
ああいう国のやり方をご覧になって、
糸井さんは、どう感じますか。
糸井
ロンドンは、コンテンツの質を問い合えるような
文化圏だというのが、すごく羨ましいですね。
今のところ、まだ日本って、
その意味では、ちょっと後進国なんです。
題目さえあれば、コンテンツの質は
あまり問われていない気がするんですよ。
日本の文化は、コンテンツの型を持っていて、
実現するために型を埋めているんだと思います。
でも、本来のコンテンツって、
粘土をこねくり回してつくるようなもので、
そっちは、ちょっと遅れている。
滝川
なかなか難しいですね。
糸井
バランスを取りながらやるよりは、
誰かが任されて「思いっきりやりました!」の
パワーのほうが、人を惹きつけると思うんですね。
滝川
上に立つ人が寛容にならないと、
若い子たちが育っていきませんね。
糸井
このぐらいできていないと恥ずかしい、というのは、
ものすごくちょびっとでいいと思います。
あとは好きにやりなさいよって、
邪魔をしない程度に、口を出せばいいんです。
自分から生まれたものの質は、自分でわかりますから。
もっと、信じてあげたほうがいいんじゃないかな。
あとはまあ、コンテンツをつくれる人は、
どんどん見本を見せてほしいですよね。
モデルがあると、人は頑張りますからね。
ぼくはわりと、モデル主義ですよ。
滝川
ああ、ほぼ日の会社の中でも。
糸井
あれはいいなって思うものができれば、
みんなもその影響を受けますから。
この会社が社会から見て、
あれいいなって見られたら、
また、モデルにしてくれる人もいるし。
滝川
真似する人を増やすということですね。
糸井
どうやったら実現するだろう、
みたいなルールをつくるよりは、
自分が走っている姿を見せるほうが
楽しみが増えますよ。
滝川
自由にさせて、
とりあえずやってみろ、
という方針なんですね。
糸井
そうですね。
そんなに縛って、
できることはないですから。
滝川
ほぼ日の社員のみなさんは、
年代的には30代ぐらいですか。
糸井
平均年齢で言うと、ずいぶん上ですよ。
途中入社が多いから、
37、38歳ぐらいじゃないですかね。
滝川
じゃあ、私ぐらいの年齢の人が
たくさん働いているんですね。
途中入社で入って来るかたって、
どういう職業のかたが多いんですか。
糸井
バラバラですね。
滝川
バラバラ。
糸井さんに憧れて、
コピーライターだったりとかは?
糸井
そういう時代は、もう終わってます。
滝川
憧れの目で見られていないということですか。
糸井
そうですね。
たとえば、ゲームの制作会社で、
「糸井さんに褒められたんだよ」っていうのを、
家でご飯を食べている時に女房に自慢する、
みたいな話を聞いたんですが、
それをやっていたらダメだと思うんです。
どこかで、カリスマみたいな部分は
なくなると思っていたほうがいいです。
ぼく自身も、なくそうとしていますし。
でも、みんなからいいねって言われたものと、
糸井が褒めたというものの間に、
上下があっちゃダメだと思いますね。
滝川
同じような評価になるような。
糸井
自分がいなくてもいいように進めていて、
みんながだんだん
慣れてきているとは思いますけどね。
滝川
本当に糸井さんがいなくなったとしても、
それでも元気いっぱいで、
エネルギッシュな会社として存続できるように。
糸井
はい、そうですね。
滝川
自己自身の存在が強すぎると、
いなくなった時のギャップが大きすぎるから、
じわじわと、浸透させているんですね。
糸井
チームというのは、生きものみたいなものです。
人間の脳とからだにたとえて言うなら、
脳が王様で、からだが奴隷、みたいな感じで、
脳を優位にした考え方ってアンバランスなんですよ。
速く走りたいという理想を持っている人が、
どうして俺はこんなに遅い走りしかできないんだって
悔しがるんですが、この時の「俺」は脳の話です。
でも、筋肉や指先までのからだを含めて、自分ですよね。
滝川
はい。
糸井
会社もまったく同じことで、
社長であるぼくが理想のようなことを言って、
「どうしてお前ら、これができないんだ!」
と怒るのは、バカバカしいことです。
そうじゃなくて、からだ全体でやっていることだから、
右手が痛い時には左手が助けるようにとか、
手を使わないでもできることをやろうとか、
ボディ全部で考えないといけません。
もっと言えば、自分が休んでいても、
ほかの人が助けてくれるようにしようとか。
環境まで含めた自己認識のようなものが、
ほぼ日というチームでは、
もう、できかけていると思うんです。
滝川
そうなんですね。
糸井
3月に開催した「生活のたのしみ展」では、
最後の後かたづけという作業があるんですよね。
パーテーションも全部取り壊して、
お店のものは、出展者のところに送ります。
それらを全部かたづけたあとに、
コーヒー屋をやっていたキッチンカーを、
押して運ばなきゃならないんですよ。
会場に入れる時には、みんなで押したんですけど、
さあ、帰りをどうするかっていうときに、
撤収作業をしていた業者さんとすごく仲良くなっていて、
任せてくださいって言ってくれたそうなんです。
滝川
うん、うん。
糸井
みんなでキッチンカーを押すことを
最後の仕事にしていたはずなんだけど、
任せられたから置いて帰って来たと報告を受けて、
ぼくは、そっちのほうが嬉しいんですよ。
自分たちで、全部やりましたっていうよりは、
任せられる関係を築けたことのほうが、
チームとして高度だと思うんです。
滝川
信頼関係ですね。
糸井
イベントの前には自分たちでやっていたことを、
イベントが終わったら人に任せられたというのは、
話を聞いたぼくも、ものすごく嬉しいんですよね。
「生活のたのしみ展」にお店を出してくれた人たちが、
帰りの交通機関の中から、お礼のメールをくれたんです。
「ご飯を食べている時にも、ほぼ日の皆さんが、
あれをどうしよう、こうしようって
相談しているのを見て、
自分たちにないものを見ました」てなことを言われて、
うちのみんなも嬉しかったと思うんですよね。
滝川
いいですね。
糸井
帰り道の、まだ興奮状態にある中で、
お店を出していた人からメールが来たという、
あの速度感は、自分たちの誇りにしたいですね。
ほぼ日のみんなも、互いを尊敬したと思います。
ああいうイベントはやっぱり、
鍛えるのにはすごくいいチャンスですね。
おもしろいんです。
滝川
今、ほぼ日というチームで仕事していますが、
フリーでやっていた当時よりも楽しいですか。
糸井
ええ、楽しいですよ。
フリーで仕事していても、
自分の食事がおいしいというところまでしか
行かないんです。
でも、チームでやっていると、
みんながおいしいっていう声を聞いているだけで、
ぼくは結構、お腹いっぱいになります。
チーム仕事は、ぼくみたいな年寄りにも向いています。
滝川
対談がはじまる前に、
糸井さんが楽しそうに、
「こんなに野次馬がいる!」って、
嬉しそうに話していらっしゃったから。
糸井
ほぼ日の男性陣はみんな、
滝川さんが見たくって、すごく我慢してます。
滝川
我慢してるんですか(笑)。

(つづきます)
2017-06-24-SAT