「こんにちは。滝川クリステルです。」滝川クリステルさんがいま、一番気になる仕事。

ようこそ、滝川クリステルさん!
雑誌「GOETHE」の企画で、
滝川さんと糸井重里の対談が実現しました。
これまでにたくさんの著名人と会って
第一線の仕事を見てきた滝川さんが、
「いま、一番気になる仕事」として、
糸井重里をインタビューしてくださいました。
フリーアナウンサーとしての活動のほか、
動物愛護活動にも力を入れている滝川さんと、
仕事や動物の話を中心に盛り上がりました。
対談の最後に「イメージが変わりました」と
糸井が語ったふたりの初対面、どうぞおつき合いください。
※「GOETHE」2017年6月号に掲載された対談を、
ほぼ日編集バージョンでお届けします。

滝川クリステルさんプロフィール

1977年フランス生まれ。
東京オリンピック・パラリンピック
競技大会組織委員会 顧問。
WWFジャパン 顧問。
フランスの芸術文化勲章シュバリエを受章。
ローランギャロス日本親善大使
一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル代表。

財団があるおかげ

糸井
どうも、はじめまして。
滝川
今日は、糸井さんのお仕事について
お話しさせてもらえればと思っています。
よろしくお願いします。
糸井
はい、お願いします。
さっき、滝川さんから名刺をいただきましたが、
財団の名刺というのがあるんですね。
滝川
財団(クリステル・ヴィ・アンサンブル)の
名刺しか持っていないんです。
まだ、立ち上げて3年しか経っていませんけど。
私は、10年ほど前から、
動物の殺処分問題や野生動物のことについて、
取材をしたり、お話しするような活動をしていたんです。
そんな中で東京オリンピックのことがあって、
「2020年」という目標ができました。
そこから財団を立ち上げて、5月で3年になります。
糸井さんが犬を大好きなことも存じていましたし、
今日はそういう話もお話できればなと。
糸井
ぜひぜひ。どんなに犬の話になっても大丈夫です。
滝川
犬のお話になると、止まらなそうで(笑)。
糸井
何かしら、いつもトピックがあるから
話が尽きないんですよね。
滝川
犬のお話は後のおたのしみにして、
まずはお仕事についてお訊きしますね。
ご自身の事務所が3月に上場されましたが、
上場された一番の目的というのは、
どういうふうに考えていらっしゃるんですか。
糸井
どれが一番なんだか、もう、よくわからないんです。
ぼくは、フリーで終わりたくなかった、
というのが大きいと思いますね。
自分の何かしらのクリエイティブで
ご飯を食べている人たちは、
その人の寿命と、活動が一緒なんです。
滝川
その方がご存命の間しか、
活動が続かないということですね。
糸井
はい。
年を取ってからも仕事を続ける人もいるけれど、
それでも、体はだんだん衰弱していきます。
そうすると、ご本人がいなくなったから、
おしまいになっちゃうことが多いです。
「ほぼ日」も、楽しみにしてくれる人が
増えたから、おわりにするのはつまらないと思って。
この、町みたいなものを
残したいというのが大きかったかな。
滝川
過去のインタビュー記事では、
「大人の遊園地」という表現もされていますよね。
それと、町。
すべてが一緒になったような形を、
糸井さんは思い描いていらっしゃるんですね。
糸井
こんなにいろんなことができるんだから、
ぼくらの「ほぼ日」という町が、
ほかの町や村、大げさにいえば世界に、
いろんなことをやろうぜって
言えるようになってきた気がするんです。
滝川
次の世代にもつなげていきたいんですね。
たとえば、フリーで活動されているかたでも、
糸井さんと同じように会社の形をしているほうが、
つながりやすいということですか。
糸井
そうですね。
滝川さんのお話を聞いていても、
「財団ができたんですよ」と言っただけで、
活動がやりやすくなりましたよね。
滝川
そうですね、たしかに。
個人ではないから。
糸井
流行りの言葉でいうと、持続の可能性ですよね。
活動を続けていくことで、
喜ぶ人がずっとつき合っていけるんです。
どこかにマネジメントの要素があったり、
ちゃんと無理をしないで続いていく要素が
あったほうがいいなと思っています。
みんなもやればいいのにと思って、
先に始めてみた、という気はあります。
滝川
例として提示してみたんですね。
糸井
そう。なかなか大変ですけど。
滝川
皆さん、大変だから
されないんだろうなとも思いますけど。
糸井
ぼくも大変だと思っていましたから。
みんなが、上場はよしなさいって
助言をくださいましたね。
滝川
よしなさい(笑)。
糸井
「自由がなくなるぞ」という言い方が
一番の典型なんだけど。
それじゃあ、いわゆる上場してる会社に
自由がないのかといったら、自由はありますよ。
だから、そんなにネガティブなことばかりじゃ
ないだろうなと思いました。
あとは単純に、フリーでチームをつくっていると、
ルールもいい加減になっちゃうんですよ。
ぼくらが昔、広告やテレビの仕事でやっていたことは、
いまだったら、全部ブラック産業になりそう。
滝川
最近、厚労省から通達が来ているようですけどね。
糸井
危ないですよね。
いまの社会なら犯罪だぞって言われるようなことを、
喜んでやっていた時代がありました。
でも、守ったほうがいいルールを守った上で、
つくったものを喜んでもらえたら、
本当はそれが一番いいんです。
どんなにめんどくさくても、
人が認めてくれる形を取るべきじゃないかなって、
けっこう昔に「えいっ!」とやり始めました。
滝川
社員もたくさん抱えられるようになられて、
働き方についても、感じるものはありますか。
糸井
ありますね。
社員が数人しかいない頃には、
たとえば、「子どもができました」と報告されて、
正直、ゾッとしたんですよ。
心の中で(この会社を、そんなに信じていいのか?
路頭に迷うかもしれないぞ‥‥)と思うんです。
正直な心だから、いまは言えちゃうけれど、
そのときには言えなくて、「おめでとう!」って。
急に責任感が出てきて、ドキドキするわけですよ。
そんなんじゃ、ダメですよね。
滝川
ええ。
糸井
人が喜んでくれるように生きていくためには、
自分の力をつけなきゃならない、
たぶん、どこかでそう思ったんですよね。
若い人が結婚して、奥さんができると、
急に責任が出てくるのと同じで、
ぼくにも社長業の兆しが出たんじゃないかな。
人を助けるにも、自分の足腰ができていなかったら、
お荷物になっちゃうんです。
俺は平気だから助けるよって、
手が貸せるようになりたいなと、
おじさんとして思ったんだと思います。
滝川
糸井さんの周りの方でも、
びっくりされた方が
多かったんじゃないでしょうか。
糸井
たぶん、前提になる誤解があって、
ぼくが会社をやっているイメージが
なかったんじゃないですかね。
個人で勝手にやっていると思っていたら、
「えっ、なに、会社やってたの?」みたいな。
社長業も、もう十何年間やっているのに。
滝川
自由な感じで、ずっとやっていらっしゃるから、
皆さん、そういうイメージで
見ているところがあるのかもしれません。
糸井
カジュアルにしていても、
守るものは守っているよっていう、
判子をもらうのが上場みたいなことだと思います。
滝川
本当にそのとおりです。
カジュアルなのにその判子がもらえて、
いかにも、という形じゃない形でいられるところが、
羨ましく思われるところなんでしょうね。
糸井
滝川さんはお若いから、
いまから想像しておいたほうがいいですよ。
滝川
いやいやいや‥‥。
糸井
本気でぼくはそう思う。
ひとりって、強いけど弱いんです。
フリーで仕事している時に思ったんだけど、
「先生」と呼ばれる下請けがあるんです。
黒いクルマが準備されていて、
「先生、どうぞこちらへ」って言われるけど、
それは、下請けなんですよね。
本当は、もうちょっと対等でいたいわけです。
へりくだるつもりも、威張るつもりもありません。
お互いに、やったほうがいいなと思うことを
平らにやればいいんです。
そのためには、自分のチームで
決裁できることを増やすほうが、
本当の自由が得られると思うんです。
滝川
なるほど。
糸井
滝川さんが財団をやっている延長線上に、
いろんなチームを動かす機会が出てくるでしょう。
チームにはお金もいるし、時間も、人手もいる。
それでも、みんなに喜ばれる組織ができたら、
もっと活躍してみたくなりますよね。
ぼくだって、「上場するぞ」という気になったのが、
10年前ぐらいですから。
いま68歳だから、少なくとも60歳手前です。
こんな歳でもやれるんだから、
滝川さんだって、若いうちから
ゆっくりと考えていけばいいんじゃないでしょうかね。
滝川
上場に向けて10年間、ずっと着実に。
糸井
ずっと上場のことだけを
考えてきたわけじゃないんですよ。
ちょっと準備をしていたというだけで。

(つづきます)
2017-06-21-WED