第27回 最初のことばにテーマを!

ほぼにちわ、
「ほぼ日本カルタ委員会(仮)」です。

最終的な1枚は、
キープ札の中から選ばれないこともある‥‥。
この展開にとまどいつつある
「ほぼ日本カルタ委員会(仮)」の会員たちですが、
糸井重里会長による読み札の選定はつづきます。

「さ」の選定札

さかさ富士 ぱんつのように 見えなくもない

【選評 糸井重里】
見えなくもない。
これがすべてですね。
ひかえめなんです、印象として。
「ぱんつ」ということばを使っているのに
ひかえめに抑えているのが、いいと思いました。

次点はなし、これ1本で。

「し」の選定札

鹿せんべいを 食べてみた
親戚に 一人はほしい 大阪のおばちゃん

鹿せんべい。
これはいいですね。
でも、この良さを、どう言ったらいいですかね‥‥。
ほんのちいさな一点から、
いまの日本の地図が見えてくるんですよ。
パリッと食べてる音から、鹿のいる古都が見え、
そこには鹿に出会う人たちがいて。
こう‥‥ほんとにどう言ったらいいんだろ‥‥。
野生と歴史とが
あの一点で交差している響きが、
鹿せんべいをパリッと食べる音であると‥‥。
で、あたりを見やって、
もう一回鹿を見ると、目が合う(笑)。
動物っていうのは、見ると、見ますからね。
‥‥鹿せんべいを食べてみた。
どこに住んでいる人が読んでも、
「あぁ‥‥」と。
案外いいんじゃないでしょうか。

次点は、これで。
おもしろいんですけど、
ほしくない人もなかにはいるかもしれない
っていうのが、この札の弱点なんでしょうね。

「す」の選定札

すきまに プチトマト
「すみません」 お礼も 謝罪も お願いも

この2枚が最後に残って、
どっちかなあ、と。
声に出して読み上げたら、正解がでました
「すきまにプチトマト」
こっちのほうがまったく、
読んできもちがいいんです。

「せ」の選定札

ぜんぜん 若く見えますね
正座して 洗濯たたむ

若く見えますねって、
年齢をまちがえてるんですよ、
そもそも前提として。
そのまちがいっぷりが、おもしろい。
社会的関係の壊れというか、
やっぱり世の中が変わってるんですよね。
「これがなぜか笑える」って思う人、
けっこういるはずですよ。
「いくつに見える?」っていう札があったでしょ?
あれとペアで残しましょう。

次点も、なかなかです。
これうまいですよ。
おしいのは「洗濯物」が後になってることですね。
「洗濯物を 正座して畳む」っていうほうが
語呂は悪いけど「せ」の札としてはいいかもしれない。

「そ」の選定札

外の空気も 調味料
空にくるくる 竹とんぼ

日本人の自然観がよく出ています。
砂漠の国だったらこんなこと思わないわけだし。
自分を取り囲む環境全体のやさしさ
みたいなものに安心しきっている人たちですよね。
うちのなかにいるよりは
外にいるほうがきもちがいいって、
そう言える国は、いい国ですから。

次点は、「竹とんぼ」。
これもきもちいい。

「た」の選定札

抱きしめたら 蚊取り線香のかおり

次点はなしで、これひとつにしました。
たまにはこういう色っぽい感じのも
カルタに1枚、入れておきましょう。
そういうサービスです。

「ち」の選定札

中高年も 青春18
ちゃうちゃうちゃう? ちゃうちゃう ちゃうちゃうちゃうんちゃう?

「ちゃうちゃう」はけっこう同じ札が届いたそうで。
おもしろいんで、これを選ぼうかとも思ったんですが、
青春18きっぷにしておきました。
「中高年」っていうのが、
「愛おしい」につながりますよね。

「つ」の選定札

つゆだくで。
つい自慢 出身同じの有名人

これが一般語になりつつある気配が、
この札には入ってますよね。
それはやっぱりナショナルチェーンがあっての話で、
やはり「今」の札になってます。

次点は、どこ出身の人でも言える
汎用性が○です。

「て」の選定札

寺! 寺! 寺!
堤防決壊 もんじゃ焼き

「京都」がテーマのときの札ですけど、
京都じゃなくても、日本は上からみれば、こうです。
日本は意外と宗教の面積が大きい。
映画のタイトルのパロディというよりは、
そういう意味の札として選びました。

次点は、東京地方の食べ物が
全国的に知られつつあるという面白さで。

「と」の選定札

とりあえず 味噌をかけてみる 名古屋
どうしてそう読む 七夕を

地域ものの札を選びました。
これなら全国的に知られているでしょう。

募集をしている段階では、
北海道から九州・沖縄までそれぞれに地域性のある
トリビアルな札が集まってたのしかったです。
でも、今、セットでカルタをつくろうとすると、
全国に知られていない地域ものは選ばなくなってます。
最後にそうなることを俯瞰で気づけなかったのは、
募集をしている側として
ちょっと申しわけなかったですよね。

それはそれとして、
この2枚の読み札は、
「とりあえず」と「どうして」ではじまっています。
それぞれテーマは「名古屋」と「七夕」なのに、
冒頭にそのことばがこない。
基本的に、最初のことばに
テーマがあったほうがいいんですよ。
「このことばを使いたい!」という、
思いの濃さがあるほうがいいんです。
たとえばね、
「イトイの"ト"だよ」って言われても困るでしょ?
やっぱり、イトイの場合だったら"イ"ですよ。

なるほど、たしかに。
イトイの"イ"、
ほぼ日の"ほ"、
カルタの"カ"、ですよねえ。

選定はまだまだ中盤です。
次回、「な行」〜「ま行」の発表をおたのしみに。

2008-12-24-WED
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