第19回 ニッポンの遊びは、ふしぎがいっぱい
缶よりたかく 靴がとぶ

缶けり。
「ほぼ日本カルタ委員会(仮)」もみな、
子どものころにやりました。
ご存知ですよね? この遊び。
かくれんぼが進化したようなルールで、
このゲームのスタート時には必ず、
「缶を遠くにけとばす」ということが行われます。
鬼がその缶を拾いにいって、戻ってきて、
数をかぞえている間に、みんなはかくれる。
ということは、かくれる立場とすれば、
できるだけ遠くに缶をけとばしたいわけで。
そこで、この読み札のような事件がたびたび起こるのです。
思いっきり足を振り抜いたその勢いで、
運動靴がスポーンと抜け、缶よりも高く青空へ‥‥。

放物線を描いて宙に舞うシューズが目に浮かぶこの一枚を、
キープ箱(下のほうにあります)へと収納しつつ、
はじまっております、「カルタ・ド・ニッポン」。
お題・「ニッポンの遊び」にも、
たくさんのたのしい投稿をいただきました。

ちっちゃな声で もぅいぃよ〜

これはきっと、おうちのなかでのかくれんぼ。
あんまり大きな声で「もーいーよー!」って言っちゃうと
すぐにみつかってしまいますものね。
押し入れのなかで、ひっそりと息をひそめて‥‥。
でも、上手にかくれすぎてしまうのも考えもの。

・かくれんぼ 見つからないのも つまんない

そういうものですからねぇ。
ほどよくみつけてもらえるから盛り上がるわけで。

・鐘が鳴り カラスが鳴いても まだ隠れる

って、野外でかくれんぼをしているとき
こんなふうになっちゃうと、
もう、なんだか、せつなくなってしまいます。

・かくれんぼ 最後は自由解散

という読み札にもありますように、
まだみつけていない友だちがいるというのに
「バイバーイ!」「またあしたねー!」
なんて解散しちゃうことも、全国的に、多々あるようです。
これ、かくれているほうはたまりませんよ。
「‥‥声が聞こえなくなったけど、みんなどうしたんだろ。
 ‥‥‥‥ちょっと、みにいってみようかな?
 いやいや、だめだだめだ、ここで出ていったら、
 せっかくのかくれんぼが台無しじゃないか!
 ちゃんとかくれてないと‥‥。
 ‥‥そ、それにしても、なんか暗くなってきちゃったよ。
 ああ、もう、もう‥‥‥‥」

誰か見つけて!

というわけで、今回いちばん多かったのは、
「かくれんぼ」の読み札でした。
だれもが、やりましたものねー。

送られてきた「ニッポンの遊び」の読み札を
何枚もながめていて、思いました。
ニッポンの遊びというものには、
ふしぎなことばや習慣がたくさんあるなあ、と。

・せっせっせーの よいよいよい

・おままごと 今日のご飯は どろだんご

・最初はグー じゃんけんポン

・鬼さんこちら 手の鳴る方へ

・スカートを ちょうちんにして ゴムを跳ぶ

・ち、よ、こ、れ、い、と

どの読み札も、説明は不要かと。
ふしぎで、愛おしくて、なつかしくて、
そしてかわいらしい作品が続きます。

空にくるくる 竹とんぼ

素朴な読み札ですけれど、
これもまた情景が目に浮かぶ‥‥良作です。

めんこの絵柄は めんこいな

じゃっかん、「言いたいだけ札」?
でも、めんこの絵柄には、
めんこいものもありますものね。
ご存知とは思いますが、「めんこい」は、
東北の方言で「かわいい」という意味です。

きれいに とがらない 折り鶴のくちばし

そうなんです、とがらないんです!
折り紙のなかでも、鶴はポピュラーですけれど、
あれってけっこう高度な折り紙だと思いません?
がんばって、ていねいに折っても、
最後のくちばしが、なかなかきれいにとがらなくて!
どうしても先っちょがズレちゃって!!

ジョーカーを ちょっぴり上に 出してみる

トランプの「ばば抜き」を詠んだ札です。
やりましたよね? これ。
いや、いまでもやりますでしょ、機会があれば。
ちょっとだけジョーカーを上に出すんですよ。
逆に、ジョーカーじゃない札を上に出したりもして‥‥。
ばば抜き‥‥なかなか真剣な心理戦です。

郵便屋さん おはようさん♪

なんの歌? と思われるかたもいらっしゃるでしょうが、
これは「長なわとび」をするときの歌です。

♪郵便屋さん おはようさん
 郵便切手が 落ちました
 拾ってあげましょ
 1枚 2枚 3枚 4枚 5枚
 6枚 7枚 8枚 9枚 10枚
 ありがとさん

地域によって様々ですが、おおむねこんな歌詞のようで。
最もポピュラーな長なわとびの歌といえば、

・お嬢さん お入んなさい♪

かもしれませんね。
ちょっと調べてみましたら、ほかにも、
「大波小波」「くまさんくまさん」「一羽のカラス」など、
長なわとびの歌にもいろいろあるようでした。

呼ばれてうれしい はないちもんめ

手をつないで一列になったふたつの組が向かいあって、
歌いながら歩いては、メンバーのやりとりをする、
はないちもんめ。

♪あの子が欲しい
 あの子じゃわかからん
 相談しよう そうしよう
 
と、相手チームから味方にしたい子どもを
ひとり名指しで選ぶゲーム。
選ばれるということは、人気があるということで。
名前を呼ばれれば、やっぱりうれしいわけですよ。
でも、いまの味方には申し訳ない気持ちもあって‥‥。
奥深い遊びです。

はじめの いーっぽ

「だるまさんがころんだ」という遊びは、
このナイスなひとことではじまります。
子どもたちが、みんなそろって大きな声で、
「はじめの、いーっぽ!」

この「だるまさんがころんだ」、関西では、

・坊さんが 屁をこいた

と言うのだそうです。
「だーるまさんがーこーろんだ」
で振り向いて、動いている人をチェックするところが、
「ぼーさんがーへをこいた」
になるのだとか。

こういう地域によるルールのちがいは、
ニッポンの遊びにはとても多いようです。
先にご紹介した「缶けり」も「はないちもんめ」も、
調べてみたら地域ごとのちがいがたくさんありました。
だから、様々な地方の出身者が集まって、
ニッポンの遊びをやろうとすると‥‥。

必ずもめる 地方ルール

っていうことになってしまうんですよねぇ。
それぞれに思い入れがあるものだから、
またみんな、ゆずらないんですよ。
でも、ま、そういう様子も、ほほえましいものです。

と、ここで、こちらの作品をお読みくださいませ。

・つかまえて欲しい 鬼があの子なら

‥‥甘酸っぱい系とでも申しましょうか。
今週の投稿には、そうした系統の読み札が、
いつもよりも多めに含まれていました。

フォークダンス あの子の手前で 止む音楽

「次は、次はあの子と手をつなげたのに!」
こころの叫びが胸に届く読み札。
男女共通で、身に覚えがあるのではないでしょうか。

好きな子ねらって ハンカチ落とす

「ハンカチ落とし」という遊びを詠んだ、
この読み札にも‥‥身に覚えがあります。
これはたぶん、男子目線の作品でしょう。
さりげなく、あくまでもさりげなく、
好きな女子のうしろにハンカチを落とす、男子。
大好きなあの子が追いかけてきて
自分にタッチをする、という展開を期待して‥‥。

でも、そうやって、さりげない努力を積み上げて、
なんとか女の子たちと仲良く遊べるようになっても、

女のなっかにー 男がひっとりー!

などと、からかわれてしまうものなのでした。

記憶をくすぐる甘酸っぱい読み札をご紹介したところで、
「フリー部門」へとまいりましょう。

別腹 という考え方

たしかに、ふしぎなニッポンの一般常識。
別腹なんてあるはずもないのに、
ほんとうにそれがあるかのように、
たとえ満腹でも、デザートなどがおさまってしまう‥‥。
ふしぎです。

こちらは前回、キープ箱にすこししか読み札が入っていない
文字ではじまる読み札を募集した際に、
やや遅れて届いた読み札でした。

「ら」もきましたよ。

ラーメンなら あの店

ラーメンの読み札はたくさん届きますが、
これは、かなりの良作。
ラーメンにうるさいニッポン人は、
それぞれに「あの店」っていうのがありますよね。

「ろ」もきました。

廊下が老化した

予断を許さぬ「言いたいだけ札」、ここで登場。
しかも、なぜかまた「廊下」の札。
前回も「廊下」がいっぱい届いたんです。

「ろ」はやっぱりむずかしいのかなあ、
と思っていたら、こんな読み札が。

ろうそくもらいは 北の七夕

第14回で「お月見どろぼう」という行事をご紹介しましたが
北海道の「ろうそくもらい」もまた、
ニッポンのハロウィンのような行事なのだそうです。
七夕の夜、浴衣を着た子どもたちが
ちょうちんを持って、家々をまわって歌を歌い、
ろうそくとかお菓子をもらい歩くのだとか。
つくづく‥‥まだまだいろんな行事があるものですねぇ。
キープいたしましょう。

「季節」の読み札も。
「とくに春が不足してますよ!」と呼びかけたら、
こんな作品が届きました。

春になると ランドセール

‥‥どんなセールなのか?!
春に「言いたいだけ札」はよく似合いますが‥‥
ふんわりかわいい春の札も、
どうかひとつ、お願いいたします!

そして変わらぬ勢いなのが「食」の読み札。

メロン不在の メロンパン

メロンが入ってないのに、メロンパン。
ふしぎです。
そんなにメロンのかたちじゃないのにメロンパン。
愛おしいです、キープです。

ほかにも、

・冬を指揮する 鍋奉行

・こんぺいとう 手のひらのなかに 星ひとつ

などなど、「食」に関する読み札のクオリティは
安定して高いものとなりました。

きょうの弁当 おいしかった!

こちら、
添えられていたメッセージをご紹介。

「日本の弁当文化は世界に誇れます!
 学校への弁当、遠足、運動会のお弁当‥‥
 思い出がありますよね。
 ‥‥外国にもあるのかなぁ?
 私は朝、4時起きで5個作っています!」

5個‥‥すばらしいです。
そうですね、ニッポンのお弁当は
世界に誇れると言っていいと思います。

今回は、こんなところで。

今週もキープ札は、すべてこちらの
「キープ箱」に加えさせていただきました。

キープ箱
※きわめてニッポン的な音がしますのでお楽しみに&ご注意を

「キープ箱」の中身は、毎回更新していきます。
あなたの札が、ここに入りますように‥‥。

それでは、次なるお題を。

「お弁当」。

世界に誇ったわけですから、
「お弁当」に、しっかりスポットをあてようと思います。
駅弁、遠足のお弁当、愛妻弁当、コンビニのお弁当‥‥。
シーンはいろいろありますよね。
ふしぎで愛おしいニッポンのお弁当、お待ちしています。
もちろん、「フリー部門」も大募集。
「言いたいだけ札」も、それなりに!

下にあります投稿のルールを軽くお読みいただきましたら、
どうぞお気楽に、ご投稿くださいませ!
みんなで、カルタをつくりましょう!!

投稿のルール(仮)

募集するのは「読み札」

カルタは「読み札」と「取り札」に
わかれているわけですが、
当面は「読み札」のほうを募集したいと思います。
七五調や七七調の札がカルタっぽいみたいですよ。

「ふしぎと愛おしい日本」がテーマ

なにを書いてもよい自由な投稿です。
でも「ふしぎと愛おしい日本」というテーマからは
どうぞ、はなれないようにしてくださいね。

どの文字で投稿するかは自由

「いろはにほへと‥‥」の文字のなかの、
どれを選ぶかは今のところ自由です。

部門について

大きくわけて、「お題をテーマにした部門」と、
それ以外の「フリー部門」の投稿を受け付けます。
過去の「お題」を投稿するのもOK。
その場合は「フリー部門」への投稿になります。

ひとつのメールにひとつの「読み札」

いっかいの投稿で送る「読み札」は、
一作品だけにしてください。
ひとつひとつ、集中して吟味したいので。
たくさん思いついた場合は、
何回もメールを送っていただければ大丈夫です。

詠み人しらずの投稿です

『万葉集』のように、というと大げさですが、
“詠み人しらず”の作品を集めたカルタを目指します。
“無名の知”のパワーに期待するカルタを。
なので、投稿者のハンドルネームは発表いたしません。

2007-10-31-WED
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