これまでのこと、ブタフィーヌさんのこと。

第10回 たかしまさん、「ブタ子さん」を動かす。

たかしま その次に「ブタ子さん」を描いたのが、
最初に生まれてから、ひと月後ですね。
これになるんですけどね。
── ブタ子さん。
たかしま 世田谷美術館のホールを借りて
みんなでグループ展を、っていうのに
誘ってもらったんですけど、
そこの展示がですね、テーマが
ちょうどハロウィンの時期だったんで、おばけ。
おばけをテーマにグループ展をしようっていうことで、
ぼくは、こういう作品を出したんです。
── 三部作ですか。
おばけがいるんですね。
たかしま ろくろっ首と
これは、百面相っていう妖怪を
ぼくが考えました。
これは、「うろつき」っていう妖怪ですね。
あと、これだけじゃ、さみしいかな、
っていうことで、
おばけの絵本を作ってみよう
っていうことで作ったのが、
今回、特典としてつくっていただく
「おばけやしき」の原型なんです。
── でも、そこには「ブタ子さん」は
いないわけですよね。
たかしま はい、いません。この展示が終わったあとに、
来てくださった方に「ありがとうございました」
って、お礼状を作ろうということで、
どんなお礼状にしようかなって考えたときに、
実は‥‥ということで、
たねあかしのような絵はがきにしたんです。
そこに「ブタ子さん」が登場するんです。
そのとき、初めて、名前も、ブタ子さん。
名前もその場でつけました。
そして、このグループ展をやった仲間で、
次の年、都庁のギャラリーで、
という話になるんです。
そこまでの設定は
ぼくの中にあったことはあったんですけど、
いま連載させていただいている
「ブタフィーヌさん」の世界は
まったく、ありませんでした。
そんな、深いものにするつもりはなかったんですね。
ただ、あまりにもみんなが
おっしゃってくださって、
なんか、そんなふうに言ってもらえるのはうれいしな
って感じで、
だんだん、こう、生きたキャラクターに
なっていったんです。
── そして、イスに座って足を組んでいて、
ワインを持っている、
貴婦人のようなブタフィーヌさん。
たかしま はい。これは、
グループ展に来てくださった方への
お礼状として描いたんですよ。
これが、5巻の見世物小屋の
看板になってる絵なんです。
── そうか。
それが、ただ座っているだけで
芸になるっていうふうに
団長が見出したキャラクター、
という物語に、
あとから、結びつくわけですよね。
たかしま はい。
このときに、このブタ子さんに対して
ストーリー的なものを、
たぶんいろいろ考えたり、
生まれてこなかったら、
こういう形では出さなかったと思うんですね。
もうちょっと、これに近い、
絵的なものになってたと思うんですけど、
かなりキャラクターとして、
動き始めてたんですよね。
なんとなく、このままにしておくのは
もったいなぁ、みたいな、
もうちょっと動かしてあげたいなぁ
っていうような気持が大きくなってきて、
じゃあ、どうしようかってことで、
その月、そのグループ展が終わったあとに、
じゃあ、ホームページで4コマを
描いてみようと思ったんです。
マンガなんて描いたことないけど、
でも、4コマまんがみたいな形だったら
まぁ、ホームページでやるぐらいだったら
できるんじゃないか、っていう、軽い気持ちで。
── そして、あのときに
「アタシ、変わるわ」と
自分で「ブタ子」から
「ブタフィーヌ」に改名した彼女の、
その背景のものがたりが、
5巻で明かされることになりましたが、
「ブタ子さん」を描きはじめたときは
その設定はなかったですよね。
ふと、「変わりたい」と思う
乙女ごころを描いたんですよね。
たかしま そうです。
── ダイエットをしたいとか、
乙女の要素をいろいろ順番にやっていく中に
変身願望というか、
いまのわたしはほんとのわたしじゃないのよ
っていう気持ちが、あったり、
今日からもう変わるんだっていう決意だったり、
乙女的なものが、ちょっと出た。
あのときは。
たかしま そうですね。
いわゆる4コマまんがみたいなのも、
描いたことないですし、
そういうのではないものにしたい、
って気持ちもあったんですね。
へたしたら1枚でいい、ぐらいな話を
4コマにしてみようと。
── 最初のブタ子さんに入ってた、
「諸行って無常だわ」
みたいなことまで、全部、5巻では
なんで、彼女がその言葉を知ってるのか
みたいなことまでわかりますよね。
たかしま そうですね。
2008-12-19-FRI
(つづきます!)
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