愛されない虫の広場

第3回

もうすぐ初ガツオの季節だねぇ。
あれにも、いますね、虫。
ちっちゃいのがモゾモゾと。たまぁに、ですけど。
だから、ニンニクとかショウガとかをどっさりのせて
食べる。あれには意味があったんですね。
でも漁師町の人に聞いたら、
「ああ、あれ、喰っちゃったって大丈夫!」
と言われました。ホントか???
ホントだとしても、見ちゃったら食べられない
だろうなあ……。

そういう虫を「好き」って人はなかなかいないだろう
けれど、ふつうの虫たちって、けっこうファンも
いると思うんですよ。
と考えていたら、虫好きの、
「虫と聞いては黙っていられない」
という主婦の方からメールをいただきました。



(前略)
今度「愛されない虫の広場」というコンテンツが
出来るそうですね。
愛されない・・・。やっぱり、虫というものは
愛されないものなのでしょうか?
それとも、「虫にも愛されるものと、愛されないものが
ある」ということなのでしょうか。

何故、私が虫と聞いて黙っていられないかというと、
36年間生きてきて、ほとんどの年月、虫にかかわって
来たからなのです。
子どもの時から、畑やら原っぱに行っては
虫をとり、とったのを飼って育てるのが楽しくて楽しくて
仕方ないという、ちょっと変わった子ども時代を
過ごしました。ちなみに、よく育てたのは
キアゲハとか、モンシロチョウ、テントウムシ。
ダンゴムシもよくとってきて、ビンのなかで飼ってました。
鈴虫はもちろん、でっかい水槽で何年も飼ってましたし、
それ以外のバッタや、カブトムシ、カナブンなども。
家族は、虫をめでる娘を見てさぞ複雑な気持ちだったと
思います。

大学でも虫関係をやるつもりでいたんですが、
事情が出来て途中で辞めることに。
まあ、早い話が今のオットと結婚したからなんですけど
オットも虫の仕事をしてて
(虫関係の仕事をしている人たちを「虫屋」といいます)
その関係から、私も現在、虫のお世話をする
パートタイムの仕事をしています。
何の虫の世話かというと、「カメムシ」です。
「うわ〜〜〜〜」という声が、モニターの向こうから
ほんとに聞こえてきそう。

(中略)
さすがに私でも、毒があったり刺したりという虫は
嫌ですが(見るぶんにはかまいませんが)
あとはだいたい大丈夫です。
「そういう人はなかなかいない」と、
どこでもいわれるんですが、ほめられてるんだか、
けなされてるんだかわからないところがちょっと・・・。
でもまあいいか。
さわって気持ちがいいのは、カイコの終令幼虫ですね。

行徳 さゆり




行徳さんのダンナさんは農業研究関連のお仕事に
携わっておられ、そのつてで、さゆりさんは
カメムシを人口飼育する仕事をしているのだそうです。
仕事ということは、1匹や2匹ではないんでしょうね。
100単位? それとも1000単位……? 万?
カメムシって、俗に「へっぴりむし」とか
「へこきむし」とか呼ばれてしまうほどに、
強烈なニオイのする虫ですよね。
それだけで、嫌っている人が多い。
職業的な人工飼育とはいえ、
そこには、やっぱり、愛があるんでしょうね。
いや?愛というのとはちがうのかな。
なにせ、ワタクシ(goodman)「愛好き」なもんで。

それにしても「虫屋」という響き、なかなかいいですね。
世の中にはどれくらいの虫屋さんがいるんだろう?
解剖学者の養老先生も、作家の北杜夫さんも、
昆虫好きだったと思うけど、
専門にしてないと「虫屋」とは呼ばないのかな。

続いては、アンチ・カメムシのお便りです。



私的には、愛すことのできない虫の
第一条件ってのが「集う」なのですね。
思い出すのは大学生のとき、
旅先・北海道の宿で見たカメムシ。
冬の宿の、天井の一角30cm四方にみっしりと
張り付いてましたです。
なんか、背中のてかりで、そこだけ緑青っぽく
見えちゃうの。
ビーズとか蛇腹のハンドバッグってありますよね、
あんなかんじ。年代物風の。
で、カメムシはたぶん寒いからなるべく動かずに
じっとしてるんだけど、たまにヌケサクが
ぼとっと落ちてきて、
ふとんの上でじたばたしてたりするわけです。
宿の人に
「あの、カメムシ…」
っていったら
「あー今年は少ないねえ!」
といわれて、あっさりひきさがりました。

それから去年。
庭でちょいと、キッチンガーデニングなんて
やってみたりした時期があって、
そのときにエコおたくの私としては
「農薬フリーでいこうぜ!」
みたいな気分だったわけです。
そしたらダンゴムシが異常発生しちゃって、
もうどこをみてもダンゴムシ。
で圧巻だったのがじゃがいもで、
「そろそろ小イモができたかなー」
と思ってひきぬいてみたら、ぞろっと
10個ぐらいできてたちっちゃいじゃがいもに、
もうみっしり、クスダマ状態になっちゃってて、
あのときはさすがに激しい鳥肌をたてましたです。

それにしても愛されない虫の広場、ってタイトル、
私の頭のなかではあーいう虫がみっしり、
避難広場みたいなところにみっしり、ってかんじで
とってもこわいです。

渡辺 尚子



カメムシって冬の北海道にいるんですか。
越冬してたのかなあ。
北海道の人とカメムシは共存共栄して
厳しい冬を越えているのだろうか。
「くさかった」という報告はないので、
南のほうのカメムシよりも善意かも。
タイだかどこだったか忘れてしまいましたが、
その地方は香草(シャンツアイ)が採れないので、
カメムシをすりつぶして料理に使っているとか。
ホントかどうかは知りません。
いま一所懸命想像してみたんですが、
食べる自信はありません。

そうそう、渡辺さん、この「みっしり」とした
感じってわかりますよ。
単品では許せるものが、勢ぞろいするとダメ。
台所の排水溝のゴミ受けにぎっしりつまった米つぶ、
とか、見ただけでクラクラしちゃう。

とある冬、海辺のアパートの、日のよく当たる
ベランダで、ずっと置かれていたカラーボックスを
動かしたら、裏側に、びっしり土がついていました。
取ろうと思って手を伸ばしたら、その土が動くんです。
ぞぞぞぞぞぞ、と、一斉にちらばった。
越冬していたゴキブリだったんですよ。
血の気が引きました。

ということで次回!

1999-05-02-SUN

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