池谷 自分の状態が「ロー」の時には
アイデアも出ないので、ぼくは
論文を書かないようにしてます。

「ロー」の時に論文を書いても、
学会を通らないだろうし、
光る文も書けないだろうと……
それは「ハイ」の時にやったほうがいい。
糸井 木の年輪で言うと、
年輪の濃くなる冬の時期、ですよね。
同じ状態でずっといくというと、
人間は不慮の事故に対応できないというか、
人間の体内時計は二十五時間にできていて、
そもそも、起こりうる偶然の事件に
対応できるようになっているだとか……
ぐらぐらした状態が、人間の姿なんですね。
池谷 やはり「揺らぎ」の必要があるんです。
年輪の例で言うと、
熱帯の年輪のない木は折れやすいですし。
糸井 千年腐らない木というのは、
伐採するまで千年経っていたりするわけです。
池谷 今の状態が
「ロー」だと人に伝えるのは、
ラクになりたいからでしょうか。
糸井 宣言しないと、
期待されているものに対して
ちゃんとした答えを返せないんですよね。

今、自分に期待しないでください、という
メッセージをぼくは出しているつもりです。

(つづく)
2005-07-24-SUN
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