池谷 対話のおもしろさも、
どうなるかわからないし
筋書きどおりいかないところにありますよね。
糸井 先の見えないことを言う人が、
昔は信用できなかったんです。
だから対談には価値がないとされていたけど、
今は、むしろわからないものを転がすことが
おもしろいとされるわけだから、そうなれば、
対談とかしゃべり言葉の需要が増えるわけで。
池谷 対話のおもしろさというのは、
自分が何を言いだすかわからないところです。
糸井 人と出会うおもしろさってそれですよね。
だから子供と話すのはおもしろくないんです。
子供ほど、通り一遍で保守的なものはなくて、
質問しても「関係」が生まれにくいですから。
池谷 独創性というのは、
ある程度の土台ができてから生まれるもので、
子供はマネすることで成長していくわけです。

もちろん子供だけでなく
ぼくたちにも当てはまる……
「はじめてのことをやりたい時、マネをする」
このステップは重要だとは思うんですけどね。
糸井 「どんなに失敗をしても、
 不慮の事故をたのしみにいくんだ」
という気持ちで対談にのぞんだり
対談を読んだりする時には、
豊かな時間が流れているんだと思うんです。

「おばあちゃんが、おばけを見た」
というだけの話も、おもしろいんですから。
池谷 おばけの話には、ぼくの中では、仮説があります。
おばけって、ほんとに見える人がいるんですよね。

話を聞くと、金縛りの時に見えている人が多い。
「寝てて、幽霊に会って、
 逃げたかったけど体が動かなかった……」
たぶんそういうのは夢なんです。

金縛りは一種の睡眠障害で、
睡眠には浅いリズムと深いリズムがあって
それを何度かくりかえして
自然な目覚めがくるわけですが、
睡眠障害の時には、本来目覚めてはいけない
浅い眠りの時に目が覚めてしまうんです。

浅い眠りの時には、夢を見ているんです。
夢を見ている人は、
目はピクピクしているけど体は動きません。
夢を見てない人は、
寝返りをうったり体を動かしたりしてます。

これはおそらく
体の睡眠と脳の睡眠がふたつあって、
「脳が休んでいる時は体が動いて、
 体が休んでいるときは脳が動く」
と、交互になっているんですね。

つまり、夢を見ているときは、
体が休んでいるんですよ。
金縛りっていうのはどういう状態かというと、
夢を見ているのに覚めすぎてしまう……
だから、体が動かないんですね。
そういう時というのは、
夢とうつつを行き来しています。
夢って、鮮やかなものも見るわけですよね。

だから、そういう時に、幽霊も見るんです。
「幽霊が出た時に限って体が金縛りに遭う。
 よりによって、こんな時に逃げられない」
とかいう話になるわけですね。

(つづく)
2005-07-25-MON
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