坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第93回 天才の歌は、いつもポップソング。

ほぼにちは。

ミッセイです。

今、ばあちゃんと二人だけで、
留守番中なのです。

しかも、
3時からの書道のお稽古に向けて、
練習しなければ、いけないのですが、
ちょっと、さっき、
僕にとって、大切なことを、思えた、

と感じているので、
忘れない内に、書くことにします。


と、ここまで、書いたところで、
やっぱり、
お遍路さんと、
新聞の集金がきたねぇ。

でも、書きます!!

今、書道で練習しているのは、

「胸中万巻書」

という言葉なんです。

僕は、

「そう!
 僕や君の、こころの中身は、
 膨大な書物にも負けない、
 いいもんが、いっぱい詰まってるっ!」

という風に、
勝手に解釈しています。

僕は、
“住職さん”なので、
たまーに、

「色紙に染筆(せんぴつ)を、お願いします。」

なんてことが、あります。
もちろん、まだ、上手じゃないので、
ほとんど断りますが、
どうしても、断れない場合もあります。

例えば、

「四国札所の住職の法話と染筆で本を出版します。」

みたいな企画が以前あったのですが、

その時、僕は、自分の前の名前(俗名、ぞくみょう)
である。

「歩」

という字を、
デーンと色紙に一文字だけ、書きました。

そして、
歩き遍路さんの話なんかを、
したんです。

しかし、いつ、なんどき、

「・・住職、もっと長いのを・・・。」

と、言われるとも限らないので、
不測の事態に備えて、

この、気に入った

「胸中万巻書」

を、普段より、気合いを入れて、
練習していたんです。

お手本なくても、書けるぐらい、
練習しよう、と。

で、あることを、思ったんです。

僕は、書道という表現が、
あまり好きではありませんでした。

それは、多分、以前にも
書きましたが、

「お手本や、決まり事の多い、
 表現・芸術というのは、
 “たのしさ”が少ないんじゃないかな?」

という、
かなり、つよい思いが、
僕の中にありました。

そして、それは、
今でも、少なからず、
正直な気持ちとしてはあります。

“必要”なのは、理解していても。

これは、僕が、強く持っている
「オリジナル信仰」みたいなものが、
かなり強く影響していると思います。

「僕は、自分にしか歌えない、
 歌を歌った時、一番気持ちいい。」

「他人の思いつきの上で、
 相撲をとっても、
 楽しいはずがないよ。」

極端に言うなら、
そういう風に考えていました。

そして、それは、
部分的には“ホント”だと、
思います、今でも。

でも、“必要”なので、
せっせと、練習していました。

「この止まり方は、どういう
 筆の使い方をすれば、再現できるのかな?

 そういえば、先生、教えてくれたなー。」

とか、考えながら。
そして、

「どーして、
 こんな、技術が伝わったのかなー、
 変なのー。」

と、なんとなく、思っていました。

そして、
パーッンと
ある考えが、頭を走った。

「あっ、これって気持がいい、
 とか、キレイの保存装置だ。

 しかも、それって、
 自分だけのもので、ある、必要ないんだ。」

と、思いついて、
なにかから、抜け出す、
きっかけになるかもしれない、
と考えました。

これは、書道だけの、話ではないんです。

僕が“坊さん”という仕事をする上で、
厳格に存在する、
たくさんの決まり事は、
「オリジナル信仰」を強く持つ僕には、
ときどき、かなり“イヤ”な存在だったんです。

「自分だけのやり方で、やりたいんだ!」

でも前回の原稿、

「宗教いう保存装置」

で深く考えたことと、
今回の体験で、なんか、ちょっと、
変わったんです。

世界には、いろんな、
美しさとか、楽しさとか、ハッピーの

“思いつき”

が、いろんな、
保存装置にくるまって、
いっぱいある。

そして、それは、

「“たくさんの人にとって、共通の感覚“
 であることも、
 全然、少なくない。」

ということです。

そして、少し考えれば、
わかったことだったんですが、

「人間は違う部分より、
 同じ部分のほうが多い。」

と気付きました。
そして、受け入れようと思う。

今までの僕は、
自分がおもしろい話を語ろうとしすぎて、
(比喩的表現です。)

「当然おもしろい、“他人”の話」

を聞こうとする気持ちが、
やや、(いや、かなり)
足らなかったんでは、
と思います。

「人はそれぞれ、違って当たり前です。」

みたいな言葉を、よく聞きますし、
本当にそうなのですが、

僕のような性格の人間には、

「人はそれぞれ、
 同じところがあって、当然。」

みたいな“気づき”のほうが、
すこし、びっくりしました。


ひとりの“天才”がいました。

みんなが彼を天才と呼びました。
みんな天才が大好きです。

「オレは、天才だから、
 たいがいの奴には、
 オレのことは、わからない。」

と彼は、いつも言いました。

「でも、あんたのことを、
 みんな大好きで、
 自分が一番、
 あんたのことを知っているって、
 言ってるよ。」


いろんな、
“共通の感覚”、“他人の話”
を、たくさん盛り込んでも、
なお、
湧き出てくる、
“個人の歌”(例えば僕の歌!)
は、もっと、
いいもんに、なるんじゃないかな?

と、深く思いました。

結局、歌いたいの?

と思いましたか?

もちろん

歌いたいよ。

あたりまえじゃん。


ミッセイ

2003-02-11-TUE

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