「大きな木を扱っていると
自然に人間も大きくなってくる。
息の長い仕事だからな、
一つ一つを積み重ねていくしかないんだ。
棟梁の鉋のかけ方の教え方は自分で鉋を挽いて、
出て来た鉋屑をくれて『こうやれ』、それだけだ。
それを早くよけいに教えて、
こうやって、ああやって、
こういうふうにして削れっていったら
早いかもしれないけど、それじゃだめなんだ。
教わるほうが何も考えないし、閃きもしない。
別の事態にぶつかったり、
ここでどうしたらいいかっていうときに
何にも出てこないんだ。
教わっただけじゃ、
それ以外に一歩も出てこられない。
それじゃ本当の大工にはなれんわな。
棟梁がいっていた。
『煎じて、煎じて、煎じていけば最後は勘だ』
(『木のいのち
木のこころ(天)』<西岡常一・草思社>より)」 |