フルマラソンを何本も走り、
最近はロッテルダムにまで遠征したが、
日々走っていて感じることが
30代、40代以降でフルマラソンに挑戦する女性が
増えてきているということだそうです。
「なぜだろう? なにか理由があるんじゃないだろうか」
と、つねづね思っていたと。
斎藤一郎先生は、西本のこの質問に、
目をさらにキラリとかがやかせて、
くわしく解説をしてくださいました。


「ちょっとずれたところから話をはじめますが、
 男性機能をキープするための医薬品って、
 すごく開発が進んでいますよね」

あ、ハイ、男性機能。
それはいわゆるひとつのアレですね。
ED治療薬的な?

「そうです。その効果は顕著で、
 数量としてもたくさん出回っています。
 買い求めやすくなっている。
 ところが、女性に対してのそういう薬って、
 なかなか一般的になっていないんですよ。
 うるおいのための薬というのが‥‥」

そういえば、あまり聞かないですね。
開発者に男性が多いんですかね。

「そうかもしれませんね(笑)。
 でも、女性ホルモンのバランスをととのえたり、
 分泌を促進したり、
 キープしたりする薬のかわりになる、
 いちばん手っ取り早い方法が、
 走ること、なんです。
 女性はそれを体でわかっているんですよ」

ええっ! それはいったいどういうことですか?!

「この話、ちょっと長くなりそうですね。
 どこから説明しようかなと思いますけど──、
 まず現代はストレス社会ですよね。
 だいたい働いてらっしゃる方が多いでしょう。
 人間、生きていれば、仕事していれば、
 ストレスがあるものです。
 それをコントロールするのは、
 宗教とホルモンと運動だと言われています」

うわ、話がすごいことになってきています!

「こういう社会で生きてる以上、ストレスは、
 自分たちでコントロールしていかなきゃならない。
 宗教の話をすると、ふるくからの仏教は
 いわゆるお葬式のためのものになってしまい、
 信仰とは別の役割になっている。
 そこで新興宗教がいまどんどん数が増えているんです。
 ご存知ですか」

うーん、何となくですが‥‥。

「いま、自らの命を絶つ方っていうのはたくさんいて、
 年間に3万人と言われます。
 24時間以内に死ぬと自殺者に
 カウントされるんだけれど、
 カウントされない人も含めると
 10万人だって言われます。
 もう交通事故の10倍だって言われている時代です。
 心のあり方とか気持ちに負担のある方って
 たくさんいらっしゃるわけですね。
 やっぱりそれをコントロールしたい。
 人間が、何をした時にいちばん
 心のクリーニングができるかっていうのは、
 一つは宗教、信仰ですが、
 一つには運動なんですよ。
 それで、そういう理由で走ってる人もいるわけです」

ここで西本が真剣な顔で言いました。

「毎日のように走り続けることができる
 大きな理由は身体だけでなく、
 心がすっきりすることです。
 夜、すごくネガティブなことを考えていても
 仕事のアイデアが出ないときも
 朝起きてコップ一杯の水を飲んで、
 外に走りだせば、だいたいのことが
 ポジティブに解決することがわかったからです」

なるほどー。よくにしもっちゃんから朝方に
「あの件はこうするといいんじゃないですか?」
と、メールが届くのはそういうことだったのか。
斎藤先生は、このことについて
くわしく教えてくださいました。

「走った後に、自分の体調の変化だとか、
 何か雰囲気の違い、上気した自分を感じるものですが、
 それはホルモンレベルが上がるからですね。
 要するに元気じゃない自分と、
 すごく前向きになっている自分とで、
 自分の体調とか表情が変わっていくわけじゃないですか。
 そういうものも含めて、走るっていうのはいい! と、
 ご本人が自覚すると思うんですよ。
 そういう快楽がなければ、継続性って生まれない。
 継続性を持って走ることで、
 日々の生活のストレスがコントロールできる。
 おそらく西本さんもそういうタイプなのでしょうね。
 運動するとホルモンレベルが上がるっていうのは、
 これは事実ですからね」

先生、すみません、「ホルモンレベル」って、
わかっているようで、よくわかっておりません。


「そうですよね。男性で言うと、
 テストステロンですよね。男性ホルモン。
 女性で言うと、エストロゲンとか、
 プロゲステロンっていう女性ホルモンです。
 これが僕らの性を決めているわけで、
 そのホルモンレベルが下がってくることによって、
 性的なものっていうのはどんどん低下してくる。
 だからホルモンレベルが高い人は、
 男でもすごく男っぽいし、
 女の人でも女っぽい。
 これを高い状態で維持するためには運動も大事ですし、
 いつも何かに憧れていたり、
 何かに思いを馳せていたりすることも大事です。
 『若々しい』という印象の人は、
 みんな、ホルモンレベルが高いと思いますよ」

なるほどなるほど。そういえば、
こんなことを言ってはなんですが、
女性でも色気むんむんの人って、
あまり走っているという印象がありませんね‥‥。
逆に24時間テレビではるな愛さんが走ったときは
エンディングに近づくにつれて
どんどん男っぽくなっていった気がします。
あれはそういうことだったんですね‥‥。

こんどはぼく(武井)が訊きます。

走ることで体に負荷をかけると、
そういうホルモンレベルが高くなるとしたら、
ウエイトトレーニングとかはどうなんでしょう?
ぼくは走るのはどうもいまだに苦手ですが、
ウエイトトレーニングはなんだか好きなんです。
あれはあれで、だんだん楽しくなってくるんですよ。

「ふむ。運動は有酸素運動と無酸素運動に分かれますが、
 ウエイトトレーニングは無酸素運動です。
 走るのは有酸素運動。
 やっぱり酸素を取り入れて、継続して長く走るほうが、
 効果的です。まあ両方とも必要なんですけど」

ガクッ。やっぱりそうですか‥‥。
男は、アレですね、薬に頼ったり、言い訳したりして、
女性に比べてダメですねえ‥‥。
やっぱり女性は走ることで
ホルモンのバランスをとっているというのは、すごいです。
動物の本能をいまだにちゃんと保持しているというか。
ぼくにとっては苦痛のランニングも、
女性たちは本能的に、ある程度の距離を走ると出る
快楽物質の気持ちよさをわかってて、走っている。
ああ、生き物としての本能が、
じぶんにはどうも足りてないかもしれないなあ。

「人類ってやっぱり女の人が基本ですから、
 生命力が強いですよね。
 何か自分にトラブルがあれば、
 それを修正するためのノウハウは
 自分自身がいちばんよく知ってるわけでしょう。
 マラソンランナーに対して、
 何がつらくてそんなに走るんだっていう
 見方もあるけれど、
 やってみたら快楽に結びついた、
 ということだってあるわけです。
 そうして持続性が生まれるんですね」

「先生、もうひとつ、走ることについて、いいですか」

西本が訊きます。

「満腹になったら走る気にならないものですよね。
 不思議なのが、お腹がすいてる時ほど、
 長く走ることができる。
 これも人間の本能の中に、
 たとえば腹が減ったら獲物を探しに行かなきゃ、
 っていうのが入っていたりするんでしょうか」

「狩猟民族か、農耕民族かという話ですね。
 農耕民族っていま1万年ぐらいしかないけど、
 それまではみんな狩猟民族だったわけです。
 そのとおりですよね。
 あんまり走らない人たちっていうのは定住派で、
 そこで一所懸命種を蒔いて、育てる人たち。
 獲物を獲らないくていい暮らしをしたんですね。
 だから人って、走れる人と走れない人に
 分かれるんじゃないでしょうか。
 そう、自分がどこから来たか、
 DNAを調べることで、わかるんですよ。
 御興味ありますか」

ありますあります! そういうの好きです!
で、先生、それを調べると、
なにがわかっていくんでしょう?
ああ、ドキドキ‥‥。

「ぼくの見解ですと、日本はひじょうにユニークな国です。
 世界一ピースフルな場所かもしれません。
 なにしろ多様な祖先を持っているんですから」

(いよいよ検査の話! つづきます。)

走り始めてからというもの、
「明日、朝走るから」という理由で
それまでつきあいのあった友達との
夜のつきあいが全くといっていいほどなくなり、
一気に友達が減りました(笑)
そのかわり増えたのがランナーの友達。
レースの後なんかは走って気分があがってますから、
同じ飲むにしても、愚痴やネガティブな要素が全くなくて、
ポジティブな話ばかりなんで、気持よく酔えるんですね。
ただ、ランナーは肝臓が強いのと、
普段、摂生しているだけに、
レース打ち上げでの酒量(ビール)はハンパないです(笑)

2014-06-05-THU