〈ほぼ日関西版〉明るい家族相談室

この前、実家に帰ったときのことです。
実家は老夫婦ふたり暮らしになっているのですが、
父（70）がやりたい放題になっていて、驚きました。
もともと亭主関白で殿様のような父だったのですが、
子どもたちが独立して老夫婦だけになってから
さらにその程度が進んでいました。

たとえば、テレビのリモコンを握っていて、
みんなが見ているのはお構いなしに、
番組がつまらないと感じたらチャンネルをかえたり
テレビを消したり。
この前は、コップが身近にないからといって、
やかんの口からお茶を直飲みしていました。
母曰く、お風呂で尿意をもよおしたら、
そのままお風呂の洗い場で
用を足したりもしているそうです。

母以外に苦言を呈する人がいなくなって
殿様状態に拍車がかかっているようです。
もうすぐ弟が結婚するというのに、
こんなやりたい放題の父だと
お嫁さんに逃げられやしないかと心配です。
老父を（遠隔操作で）矯正する
よい方法があればお教えください。

（相談者：悩める長女）

	お風呂でトイレかぁ‥‥、お風呂とトイレが離れてるんでしょうかねぇ？
	そういうことではなく、これは性格の問題でしょう。
	母以外に苦言を呈する人はいない、そして、弟の嫁に逃げられないか心配、と、こういうご相談ですね。
	お風呂というものは通常、誰も覗かないから「お風呂の洗い場で　用を足したりもしているそうです」ということは、お父さんは自分で「したったぞ」と自己申告してるんでしょうか。
	そんなん、自分で言いますかね？
	形跡が残ってるのかなぁ。
	‥‥ツーンという匂いが。
	えぇー！　嫌。とても嫌。
	そりゃ、嫁さん、嫌やわ。 ‥‥家族と暮らすって、大変ですね。
	そうなんですよ。
	誰かがたいがいイライラすることやりますから、乗り越えていかなあかん。
	一日中同じ空間にいると、かかわる機会、はらたつ出来事がいっぱい出てきます。なにしろ家族とはいえ個々でルールがまったく違いますから。
	そうそう。
	実をいうと、私もひとり暮らしが楽で楽で、やめられません。
	わかります。
	かといって世の中全員に「ひとり暮らしせぇ」と言うわけにもいきません。
	家族と住むからには、やりたい放題はだめでしょう。まず、チャンネル。お父さんという人種はこれをわりとやる人が多い感じがしますね。番組の途中でかえられるとイライラします。
	癖みたいに、ずっと変えてる人がいますね。こういう人とは一緒にテレビを見なければいいと思います。でも、この相談者の方はテレビが見たいんじゃなくて、こういうことをする、その行為が嫌なんですよね。
	せっかくみんなで見てるのに、パッとかえる。しらけるがな。
	うーん‥‥なんなんやろ、こういう人たちって。
	かおり姉さん、立ちどまらないでください。
	このコーナーのおたよりを拝読して思うんですけれどもね、こういう人、多すぎ。なんなん？　この人ら！なんでこんなにみんなに迷惑をかけてくるの？
	まぁまぁ、落ち着いて、深呼吸してください。この横暴さはどこから来るのか、まずそこを解明していきましょう。年を取ると、年齢的に偉くなるからそうなっていくんでしょうか。
	妊婦さんに席をかわってあげるのも、若者が多いというもんね。
	私が松葉杖で通勤していたときも、女性や若い男性はよくしてくれたのに、おじさんたちはめったに席をかわってくれませんでした。照れてるのかな？
	いい人ぶるのが嫌なのかな。
	注目をあびるのが嫌なのかもしれませんね。
	まぁ、やかんで水飲んでる人ですから。
	ラグビー部出身とかかもしれません。しかし、お嫁さんが来たら、逆に、気を遣うかもしれませんよ。
	そうですね、意外に優しそう。
	「ええカッコ」なさるんじゃないでしょうか。
	しそう（笑）。弟の彼女にはよく言って聞かせておいたほうがいいですね。
	軽い結婚詐欺になる可能性があります。
	ひどめに言って、ちょうどいい。
	で、彼女が、「そんなことないやん」と思えばいいことであって。
	私の妹が、その方式で成功しました。常日頃、私が妹を「メッチャブスで、メッチャブスで」と言っていますので、人が実際に会ったときは「え、けっこうかわいいやん」という話になります。妹はそれがうれしいらしく、「姉ちゃん、もっとまわりの人にブスを強調して」と言ってくるようになりました（笑）。
	ハードル下げるのって、大事なことだと思いますよ。
	本を人に紹介するときも「メッチャおもしろいねん。読んで」と言い過ぎたら、おもしろくないですもんね。
	「大丈夫かよ？」と思わせるくらいでちょうどですね。この連載も、もう「明るい」とか、取りましょう。
	そうそうそう。ただの「家族相談室」。いいかもね。
	だから、この弟夫婦は毎朝起きたら、「お父さんは、とんでもないやつや」と唱えたらいいんじゃないでしょうか。
	それは、お母さんや長女もやるべきです。毎朝、自分たちのハードルを下げてみましょう。
	でも、結婚前に弟嫁に逃げられたらどうしよう。
	それはしょうがないです。あとで、ややこしいことになるよりはいい。その程度のことでビビりあがってるようじゃ、結婚できません。父の矯正は、もう無理でしょうから。
	無理ですか？
	無理とちゃうかなぁ。あとは、カッコつけさすしかないですね。
	お嫁さんが、メッチャかわいいとか。
	それや。
	かわいい女のお孫さんが生まれて「じいちゃん一緒にお風呂入ろう」とか言ってもらったらおしっこもしなくなります。
	「もともと亭主関白で、殿様のような父」とありますから、男っぽい人なんでしょう。カッコつけるタイミングをもっと演出すればいいかもしれませんね。近所のきれいなおばさんを呼ぶとか。
	いいですね。亭主関白のお父さんを支えたお母さんは優しい人だったんでしょうね。
	そうだと思う。いつも「はいはい」言う人だった。だから、お母さんは苦言は呈するけれどもいまも納得してると思いますよ。ときどき、ねぎらう意味で、お母さんを旅行などに連れて行ってあげたらいいんじゃないでしょうか。
	お母さんを旅行に連れて行くと、そのあいだ、お父さんはひとりになりますね。
	好きなだけザッピングできます。
	わがまま言う相手も、旅行に出ていないですし。
	頻繁に旅行に連れて行くのは無理だから、社交ダンスとか、習ったらいいかもしれませんよ。
	かっこいいコーチと踊ってる写真を引き伸ばしてお父さんがザッピングしているお部屋に飾ったらいいですね。
	時計とかにしてもいいでしょう。
	テニスでもいいでしょうし、先生がハンサムなパン教室などに通ったりして‥‥夢がひろがります。
	でも、外の世界が楽しくなりすぎて、「なんでこんな家で耐えなあかんの」という気持になってしまったら、かわいそうです。
	なるかもしれない。
	逆に言えば、そのくらいお父さんを揺さぶらないとお父さんを変えることはできないのかもしれません。しかし、そうなってからお父さんが変わっても、残念ながら遅いですね。
	ああ、遅いか。
	パンやテニスで出会う男性に比べたら、完全に不利です。嫌われる要素が多すぎます。おしっこしてるシーンなどをスローモーションで思い浮かべてしまうと思います。
	たしかに、風呂場でおしっこに比べたら、なんでもよく見えると思います。
	頭に出てくるシーンが、最悪のものばかりです。
	恋のはじまりは、猫をかぶりますから、コーチのほうはさわやかにしてきます。ああ、比べたらあかんわ。
	でも、比べてしまうと思う。
	お母さんが習い事に行かなかったとしても油断は禁物ですね。ゲートボールのサークルにも出会いがあります。
	そうそう、あの、ゲートボールのスティックを入れる袋を手づくりするのがうまい人はモテるらしいですよ。
	そうなんですか。
	「◯◯さんに私の袋を使ってもらおう」とかね。それから、両思いの人たちは日除けの帽子をおそろいにするとか、聞きます。
	いやぁ、そんな。ときめくなぁ。ときめく、ときめく。
	ねぇ。楽しい場所はいっぱいあるよね。
	お父さん、油断してちゃダメだ。
	自分のやりたい放題が、スローモーションで再生されないうちに、なんとかしましょう。
	やりたい放題してても、自分ひとりだけになってしまったら、「やってるだけ」になりますからね。
	それでは、今日のまとめに。
	その前にちょっとお知らせが。
	そうだった、そうだった。
	この「明るい家族相談室」、不定期連載とはいえいつはじまっていつ終わるかわからないほど忘れたころにやってくるコンテンツですので、今日でいったん中締めです、ということを毎回言わせていただくことにしようと思います。
	それはいいですね。
	で、今回がその「中締め」です。
	また、忘れたころに、帰ってきますよ。
	それまで、みなさんもかおりさんもお元気で。それでは、今日のまとめに。
	はい、では。

１にハードル、２にカッコつけさせ、それでもダメなら、お母さん、テニスかパン教室に出ていいです。

2013-12-08-SUN

	お風呂でトイレかぁ‥‥、お風呂とトイレが離れてるんでしょうかねぇ？
	そういうことではなく、これは性格の問題でしょう。
	母以外に苦言を呈する人はいない、そして、弟の嫁に逃げられないか心配、と、こういうご相談ですね。
	お風呂というものは通常、誰も覗かないから「お風呂の洗い場で　用を足したりもしているそうです」ということは、お父さんは自分で「したったぞ」と自己申告してるんでしょうか。
	そんなん、自分で言いますかね？
	形跡が残ってるのかなぁ。
	‥‥ツーンという匂いが。
	えぇー！　嫌。とても嫌。
	そりゃ、嫁さん、嫌やわ。 ‥‥家族と暮らすって、大変ですね。
	そうなんですよ。
	誰かがたいがいイライラすることやりますから、乗り越えていかなあかん。
	一日中同じ空間にいると、かかわる機会、はらたつ出来事がいっぱい出てきます。なにしろ家族とはいえ個々でルールがまったく違いますから。
	そうそう。
	実をいうと、私もひとり暮らしが楽で楽で、やめられません。
	わかります。
	かといって世の中全員に「ひとり暮らしせぇ」と言うわけにもいきません。
	家族と住むからには、やりたい放題はだめでしょう。まず、チャンネル。お父さんという人種はこれをわりとやる人が多い感じがしますね。番組の途中でかえられるとイライラします。
	癖みたいに、ずっと変えてる人がいますね。こういう人とは一緒にテレビを見なければいいと思います。でも、この相談者の方はテレビが見たいんじゃなくて、こういうことをする、その行為が嫌なんですよね。
	せっかくみんなで見てるのに、パッとかえる。しらけるがな。
	うーん‥‥なんなんやろ、こういう人たちって。
	かおり姉さん、立ちどまらないでください。
	このコーナーのおたよりを拝読して思うんですけれどもね、こういう人、多すぎ。なんなん？　この人ら！なんでこんなにみんなに迷惑をかけてくるの？
	まぁまぁ、落ち着いて、深呼吸してください。この横暴さはどこから来るのか、まずそこを解明していきましょう。年を取ると、年齢的に偉くなるからそうなっていくんでしょうか。
	妊婦さんに席をかわってあげるのも、若者が多いというもんね。
	私が松葉杖で通勤していたときも、女性や若い男性はよくしてくれたのに、おじさんたちはめったに席をかわってくれませんでした。照れてるのかな？
	いい人ぶるのが嫌なのかな。
	注目をあびるのが嫌なのかもしれませんね。
	まぁ、やかんで水飲んでる人ですから。
	ラグビー部出身とかかもしれません。しかし、お嫁さんが来たら、逆に、気を遣うかもしれませんよ。
	そうですね、意外に優しそう。
	「ええカッコ」なさるんじゃないでしょうか。
	しそう（笑）。弟の彼女にはよく言って聞かせておいたほうがいいですね。
	軽い結婚詐欺になる可能性があります。
	ひどめに言って、ちょうどいい。
	で、彼女が、「そんなことないやん」と思えばいいことであって。
	私の妹が、その方式で成功しました。常日頃、私が妹を「メッチャブスで、メッチャブスで」と言っていますので、人が実際に会ったときは「え、けっこうかわいいやん」という話になります。妹はそれがうれしいらしく、「姉ちゃん、もっとまわりの人にブスを強調して」と言ってくるようになりました（笑）。
	ハードル下げるのって、大事なことだと思いますよ。
	本を人に紹介するときも「メッチャおもしろいねん。読んで」と言い過ぎたら、おもしろくないですもんね。
	「大丈夫かよ？」と思わせるくらいでちょうどですね。この連載も、もう「明るい」とか、取りましょう。
	そうそうそう。ただの「家族相談室」。いいかもね。
	だから、この弟夫婦は毎朝起きたら、「お父さんは、とんでもないやつや」と唱えたらいいんじゃないでしょうか。
	それは、お母さんや長女もやるべきです。毎朝、自分たちのハードルを下げてみましょう。
	でも、結婚前に弟嫁に逃げられたらどうしよう。
	それはしょうがないです。あとで、ややこしいことになるよりはいい。その程度のことでビビりあがってるようじゃ、結婚できません。父の矯正は、もう無理でしょうから。
	無理ですか？
	無理とちゃうかなぁ。あとは、カッコつけさすしかないですね。
	お嫁さんが、メッチャかわいいとか。
	それや。
	かわいい女のお孫さんが生まれて「じいちゃん一緒にお風呂入ろう」とか言ってもらったらおしっこもしなくなります。
	「もともと亭主関白で、殿様のような父」とありますから、男っぽい人なんでしょう。カッコつけるタイミングをもっと演出すればいいかもしれませんね。近所のきれいなおばさんを呼ぶとか。
	いいですね。亭主関白のお父さんを支えたお母さんは優しい人だったんでしょうね。
	そうだと思う。いつも「はいはい」言う人だった。だから、お母さんは苦言は呈するけれどもいまも納得してると思いますよ。ときどき、ねぎらう意味で、お母さんを旅行などに連れて行ってあげたらいいんじゃないでしょうか。
	お母さんを旅行に連れて行くと、そのあいだ、お父さんはひとりになりますね。
	好きなだけザッピングできます。
	わがまま言う相手も、旅行に出ていないですし。
	頻繁に旅行に連れて行くのは無理だから、社交ダンスとか、習ったらいいかもしれませんよ。
	かっこいいコーチと踊ってる写真を引き伸ばしてお父さんがザッピングしているお部屋に飾ったらいいですね。
	時計とかにしてもいいでしょう。
	テニスでもいいでしょうし、先生がハンサムなパン教室などに通ったりして‥‥夢がひろがります。
	でも、外の世界が楽しくなりすぎて、「なんでこんな家で耐えなあかんの」という気持になってしまったら、かわいそうです。
	なるかもしれない。
	逆に言えば、そのくらいお父さんを揺さぶらないとお父さんを変えることはできないのかもしれません。しかし、そうなってからお父さんが変わっても、残念ながら遅いですね。
	ああ、遅いか。
	パンやテニスで出会う男性に比べたら、完全に不利です。嫌われる要素が多すぎます。おしっこしてるシーンなどをスローモーションで思い浮かべてしまうと思います。
	たしかに、風呂場でおしっこに比べたら、なんでもよく見えると思います。
	頭に出てくるシーンが、最悪のものばかりです。
	恋のはじまりは、猫をかぶりますから、コーチのほうはさわやかにしてきます。ああ、比べたらあかんわ。
	でも、比べてしまうと思う。
	お母さんが習い事に行かなかったとしても油断は禁物ですね。ゲートボールのサークルにも出会いがあります。
	そうそう、あの、ゲートボールのスティックを入れる袋を手づくりするのがうまい人はモテるらしいですよ。
	そうなんですか。
	「◯◯さんに私の袋を使ってもらおう」とかね。それから、両思いの人たちは日除けの帽子をおそろいにするとか、聞きます。
	いやぁ、そんな。ときめくなぁ。ときめく、ときめく。
	ねぇ。楽しい場所はいっぱいあるよね。
	お父さん、油断してちゃダメだ。
	自分のやりたい放題が、スローモーションで再生されないうちに、なんとかしましょう。
	やりたい放題してても、自分ひとりだけになってしまったら、「やってるだけ」になりますからね。
	それでは、今日のまとめに。
	その前にちょっとお知らせが。
	そうだった、そうだった。
	この「明るい家族相談室」、不定期連載とはいえいつはじまっていつ終わるかわからないほど忘れたころにやってくるコンテンツですので、今日でいったん中締めです、ということを毎回言わせていただくことにしようと思います。
	それはいいですね。
	で、今回がその「中締め」です。
	また、忘れたころに、帰ってきますよ。
	それまで、みなさんもかおりさんもお元気で。それでは、今日のまとめに。
	はい、では。