〈ほぼ日関西版〉 明るい家族相談室 たのしきかな、家族。続編

相談9 寅さんのような父。

父がフーテンの寅さんのような人です。
酒好き、女好き、賭けごと好き、喧嘩好き、
すぐに人となかよくなるのはいいけれど、
すぐにお金も名義も貸してしまいます。
居酒屋さんの大将でしたが、経営難その他諸々の事情、
そして現実逃避の酒代とで
私の学費に手をつけてしまい、
私は学校をやめざるを得ない状況になってしまいました。

学校を辞めて実家に帰ったら、父は
倒れる寸前の容態で即入院、
でもすぐにけろっと退院して
実家に私を残してどこかへ行ってしまいました。
いまはなんとか商売をして生きているらしいのですが、
住んでいる場所もなにをして食べているのかも
わかりません。
そして唐突に帰ってきては、
1日で戻っていってしまいます。

正直言って、父を勝手な人だなぁと思いますし、
大学生活が1年こっきりになってしまったことも
恨めしく思っています。
でも、私にとってはたったひとりの家族なので、
もう許してやさしくしてあげたい気持ちもあります。
父も68なので、いいかげん落ち着いてほしいです。

こんなフーテンな父ですが、
娘側から、落ち着いてもらえるよう
なにかしてあげられることはないでしょうか。

(相談者:むすめだけどさくら)


答え
ほぼ日 ここにきて、このコーナーの
総合相談のようなおたよりが来ましたね。
相談者の方にとって、お父さんは
たったひとりのご家族のようです。
本日の回答者は「お姉ちゃん」のかおりさんです。

かおり はい、よろしくお願いいたします。
のっけからこういうことをいうのもナンですが、
私は‥‥、お父さんは落ち着かへんと思います。
もしかしたら、年をとって体が弱ったりすれば、
落ち着かれるかもしれないけど‥‥。
ほぼ日 でも相談文には、病気になったと書いてありますよ。
かおり ほんまや。入院なさってたんですね。
ほぼ日 だけどまったく落ち着いてない。
かおり 世の中には‥‥。
ほぼ日 世の中には。
かおり 子煩悩で、場合によっては過剰とも感じるような
「子どものためにすべて捧げる」という人もいたり、
こんなふうに、子どもの学校のお金を使って
けろっとしてる人がいたりする。
あんな人がいれば、こんな人がいる‥‥。
ほぼ日 かおりさん、原点に立ち戻りすぎです。
かおり ほんまにねぇ‥‥。
ほぼ日 しかし、「すぐに金も名義も貸してしまう」のは
困りますよ。

かおり そんな人、いるよなぁ‥‥。
ほぼ日 金もなく、住んでる場所もわからないんですよ。
かおり フラッと現れるんですね、
ほんまに寅さんみたいです。
娘として、してあげられることは‥‥
うん、なんにもないと思います。
すみません、やっぱりお父さんは落ち着かないと思う。
68歳で住所不定。
落ち着くなら、その年令に達するまでに
とっくに落ち着いてますもんね。
「人間て、そんなに
 ちゃんとしなあかんのやったかな?」
逆に、そんな気持ちにさせられます。

大学を途中でやめることになったのは、
恨めしいでしょう。
私がもしお父さんの友達やったら、
「そんなことやったらあかんで」
と言うかもしれませんが、
これは娘さんからの相談です、なんとも言えません。

お父さんは、名義貸してるから
まだ大きな借金があるかもしれません。
それでもなんだか明るく生きていらっしゃる。
大きい人。そんな気がします。
ほぼ日 ここまで、この「明るい家族相談室」をやってきて
ふと思うんですが、
「家族ってこういうもんや」というモデルがある
人のほうが、悩みが多い気がします。

かおり もっと自由になって、
このお父さんのように生きるのが、
人間としては正解かもしれません。

私はお父さんがうらやましいです。
私たちは、一般の常識にあてはめられてるから、
お父さんのような生き方を
ダメと思いこんでしまうのです。

お母さんとお父さんがなかよくて、
みんなそろってごはん食べて、
テレビ見て、勉強して。
そういうモデルを思い描いていれば、
考えなくていいから、ある意味楽なのです。

このお父さんは、フラフラしてるけど、
なんかわからんけど商売して、
自分で身を立てているのです。
会社員と違って、自由に生きてるぶん、
リスクもあるでしょう。
だけど、楽しんでいる。いい生き方だと思います。
ほぼ日 あんまり「明日のこと」を考えてないですね。
かおり でも、憎めない。
つまり「名義をすぐ貸してしまう」ということは
人がいいんです。
ここまできたら、娘さんも大人やし、
実はお父さんのことを
尊敬なさってるんじゃないでしょうか。
ほぼ日 型にはめた人生というのはつまり、
「いまこうすればああなってしまう」
と、将来のことを考えて
自分をまじめにしていくことですね。
それは、悪く言えば策略的です。
お父さんは策略がない、いい生き方ですね。

かおり そうですね。
その日暮らしっちゃあ、その日暮らしやけど、
それでいい。
でも、そんな人ばっかりになったら
政府は困るでしょうね。
ほぼ日 政府って。
かおり 困るから、住人を型にはめる政策を
取ってるんじゃないでしょうか。
情報操作によって、うちらは家を買って、結婚する、
そういうふうに思ってしまうのです。
そのほうがまとめやすくなりますからね。

でも、このお父さんは、まとまらないよ。
一歩進んでますからね。
いわゆるビートニク世代です。
『路上』のジャック・ケルアックとか、
ビート族ではないでしょうか。
ほぼ日 商売して、手痛い仕打ちを受けて、入院もして、
考えられたんでしょうね。
「行く末は、こうなる」

かおり そうやと思います。
そして、本来あるべき人間としての自由な姿を
実践なさっているのです。
ほぼ日 猫みたいに。
かおり うらやましい。
ただ、ひとり娘にとってはどうか、
そこが問題になっているのです。
ですからここはひとつ、
どこかで折り合いつけていきましょう。
ほぼ日 だって、もう許してあげたいと思ってるんやから。
かおり 「お父さんは自由に生きてんな」
と思うしかないような気がします。
逆に自慢にしたらいいです。
父親がビートなんて、そんなんなかなかないですよ。
あとは、娘として、
「いつでも家に帰ってきていいねんで」
ということにしておいてあげればオッケーです。

どこにいるかわからなくて不安なのであれば、
出先から絵葉書を送ってもらったらどうでしょうか。
住所を書いて切手貼った葉書を
「どんなことしてんのかとか、
 生きてるとか、葉書に書いてよ」
といって、1日だけ戻ってきたその瞬間に、
数枚渡せばいいのです。
ほぼ日 お父さんもお年だし、そのくらいはやってほしいです。
心配だからね。

かおり しかし、私たちも、
生まれたときからテレビや新聞などなにもなく
情報を知らんかったら、
このお父さんのような人生を送れそうですね。
ほぼ日 雑誌の『CanCam』とかがなかったら‥‥。
かおり あんな、巻いた髪がいいだなんて、
つゆとも思わず暮らしていると思います。
もう、そんな髪型も古いんでしょうか?
ほぼ日 社会問題についても、
流行り言葉のように耳に入ってきますね。
ゆゆしき問題です。

かおり 情報操作に、うちらはまんまとはまります。
危ない危ない。
ツイッターとかも危ないですよ。
型にはまった人生が、
どんどんリツイートされてきます。
ほぼ日 怖いですね。
かおり たとえば今人気のモデルが「唐草模様の風呂敷を
鼻の下で結んで、おしゃれ」だとか、
第一線で活躍スタイリストが「中指立ててカフェオレ飲むのがおしゃれ」
だとか、リツイートすれば信じる人もいるんじゃないですか?
操作は簡単です。
なんでも言ったもん勝ちでしょう。
フェイスブックも無料やし、あかんあかん、
どんどん「いいね!」ボタンされますよ。
型にはまった人生を「いいね!」されます。
ほぼ日 油断していると、すぐに利用されますね。
かおり 一方、このお父さんは扱いづらい国民です。
戦時中なら軍隊などにはぜったいに入らない。
入ったとしてもさぼってばかりでしょう。
こんな人がいたら全員戦意喪失です。
ほぼ日 お父さんのような方を
もっと増やしていくべきですね。
いま、まじめが増えすぎてて
不景気であるといいます。

かおり こういう人がいたらお酒もいっぱい売れますね。
ほぼ日 少子化も解決します。
かおり そして、こういう方は老後も心配しすぎず、
どこでのたれ死んでもいいという覚悟で
生きてると思います。
このコーナーのゲストにお迎えして
話を聞いてみたいほどです。
ほぼ日 どこにいるのかわからないけど‥‥。
かおり あ、そっか。
ほぼ日 連絡の取りようがありません。
それでは、本日のまとめをお願いします。

かおり はい、わかりました。







お父さんをゲストにお迎えして ぜひ話を聞いてみたいので、 こんど戻ってきたら連絡ください。

2013-06-30-SUN

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