天久聖一の味写道
味写道・その三

秋じゃな、お茶くん。
秋ですね。師匠。
お茶くんの秋はなんの秋かな?
やはり「芸術の秋」ですね。
師匠は?
ワシは「不安の秋」じゃな。
‥‥なにが不安なんですか。
財布の中身も頭髪も、
舞い散る落ち葉のごとくワシのもとから離れてゆく。
こんな状態ではたして冬を乗り切れるのか‥‥
しかし一番不安なのは‥‥
不安なのは?
冬眠前のクマに襲われやしまいかと‥‥
こんな飲み屋ばっかりの下町で?
クマをなめんでねぇ!
ワシなんか怖くて一歩も外に出れんし、
家の中でもつねに死んだふりじゃ。
それ、いつもの生活スタイルですよね?
とにかく外は危険じゃ。
「自宅でクマに怯えるだけの簡単なお仕事です。日給3万」
はないのかの…?
ねーよ!
それでは今週も
「自宅で他人の写真を眺めるだけの簡単なお仕事」
はじめます。
まずはH・N お豆腐さんのこの作品です。


味写No.496
「ここにいます。」
H・N お豆腐さん

写真をクリックすると、さらに大きな写真をご覧いただけます。
「あー、いたいた。ほら、あそこ」
「お父さーん!」
と、家族なら一発で分かる後ろ姿。
本人だけが不思議がるパターンですね。
「なんで分かった?」って。
しかしアートすら漂う佇まいじゃな。
なにこの完成度。
ちょうど後頭部が窓の開きと同じサイズで収まってます。
そして余分なものが一切ない画面構成。
これがクールジャパンというやつじゃろ?
全然違いますがたしかにクールですね。
むしろ海外での評価が高い後頭部です。
この作品にはアップもございます。


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またグっと存在感が増したな。
はい。アップに耐えれる名優のごとき存在感です。
じっと観てるとなぜかデジャヴを感じるの。
以前にもこの頭、見たことあるって。
あの日、新幹線の背もたれから見えてた頭も、
ファミレスの前の席に見えてた頭も、
実は同じ頭だったのかもしれません。
なにも語っていないだけに、
逆にこちらの想像力を刺激する作品じゃな。
はい。沈黙は金でございます。
この作品はただありのままを受け入れ、
撮影者と同じ目線で笑いをこらえるのが
良策と思われます。
こらえておったのか。笑いを。
ではこらえきったところで、次。
H・N 田中洋太郎さんの作品でございます。


味写No.497
「ヒトデシタ」
H・N 田中洋太郎さん

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こっちの作品も奇妙な「間」を持っておるな。
鬼瓦を見上げる姿をなぜ写真に残そうとしたのか。
そこも不思議ですが
この作品の驚くべき味わいは別の部分にあります。
ふむ!
して、それは?
では投稿者さまのお便りをお読みください。
この写真は2003年頃に行った京都旅行で、
当時の彼女が何気なく撮った一枚です。
写真の建物を見上げているのは私です。

出来上がりの写真を見た時は、普通の写真にしか見えず
見過ごしていたのですが、2,3日経って見返したとき、
背負っているバッグにふと違和感を感じました。

「あれ、こんなバッグ持って無いぞ?・・・」

と思って、背負っているバッグをよく見てみたら…



境内を掃除しているお坊さんでした。

気づいた瞬間、「ワッ!わぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!!」
と大声出して驚いたのを覚えてます。

心霊写真というわけではないのですが、
ゾクッと背筋が寒くなった一枚です。



まさに衝撃の事実じゃな‥‥
完全にデイパックと化したお坊さん。
服の色も手前の投稿者さまと同系色で、
これは分かりませんねー。
しかし正体を突き止めたときの驚きを想像すると、
思わず大声が出るのも分かるな。
持ってないはずのバックが見知らぬ坊さんですものね。
袋だと思ったら生き物!
ボケーッと鬼瓦見つめてる場合じゃないぞい。
偶然が呼び込んだニセ心霊写真です。
実はこれと同じような作品が以前にもありました
ある意味心霊写真よりレアな一枚じゃな。
現実がオカルトを越えた一瞬じゃ。
でもこれは撮影した彼女のお手柄ですね。
是非、彼女をほめてあげて‥‥
お茶くん。
メールにさりげなく
「当時の」と書かれておるのを読み落としとるぞい。
‥‥失礼いたしました。
「当時」の彼女が残した思い出。
そう見ると別の味わいも出てくる。
はい。
では数々の味わいが重なった名作のあとはラスト、
H・N 世界図案室さんからの作品です。


味写No.498
「りりし屋さん」
H・N 世界図案室さん

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なんとりりしいぼくちゃんじゃ。
投稿者さま4歳のみぎりのお写真だそうです。
この年頃の子供は照れ屋さんとか、
恥ずかしがり屋さんが多いもんじゃが。
そんなはにかみは一切なし。
あえて言うなら「りりし屋さん」でしょう。
初対面の人にもこんなにりりしいんじゃろうか?
がぜんりりしく迫ってくるでしょうね。
うっ‥‥ちょっとウザかも。
なにを言いますか。
こういう物怖じしない若者が
将来の日本を引っ張ってゆくのですぞ。
では日本は任せた! 頼んだぞぼくちゃん!
今週は以上でございます。
ふむ。
今週もバラエティに富んだ味わいを堪能したぞい!
さて、今週は大切なお知らせがあったんじゃな。
はい。
実はこのたび、
味写道にツイッターを導入するはこびとなりました。
つきましては、公式アカウントを開設。
アカウント主は私、
お茶がつとめさせていただきます
よろしければ、フォローを。
こちらでは味写道に関した情報とともに、
味写作品の募集を行いたいと思っております。
味写作品の投稿が、
ツイッターから直接できるようになりました。
以下の要領をお読みのうえ、
ふるってご応募お待ちしております。


ハッシュタグ #味写道 を付け、
作品に関するエピソードとともに、
画像を添付してつぶやいてください。
下のツイッタースペースに、
それらのツイートと作品が集められていきます。

「味写道」の本編で採用させていただく作品には、
返信にて掲載依頼のお知らせをさせていただきます。
画像サイズにつきましては、
できれば1辺が640ピクセル以上、
500キロバイト以内 でお願いします。
まず小さな画像を投稿いただき、
後ほど大きな画像を
メールにて送っていただいても結構です。



送る手間が省けるうえ、
お友達にも気軽に
応募作が見てもらえるようになったんじゃな。
もちろんいままでの応募方法も継続するので、
そちらの方が送りやすいという方は従来通りどうぞじゃ。
それではみなさまの日曜に幸アレ!(茶柱)
2012-10-07-SUN
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