大貫妙子、『愛のテーマ』を歌う。 『MOTHER3+』発売記念対談

『MOTHER3』のテーマ曲に 糸井重里が詞をつけ、大貫妙子さんに歌ってもらって、 『We miss you 〜愛のテーマ〜』が生まれました。 「大貫妙子さんでなければだめだった」と断言する糸井。 歌うために『MOTHER』シリーズを すべてプレイしたという大貫妙子さん。 11月2日のCD発売を前に、 ふたりでゆっくり話してもらいました。



『We miss you 〜愛のテーマ〜』をご試聴いただけます。
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『MOTHER 3』についてくわしくはこちら




+ 第6回 揺るぎなくつくっておいたほうがいいですよね
糸井 大貫さんは、
『MOTHER3』は触ったんですか?
大貫 最後までやりましたよ。
まず『MOTHER3』をやって、
まえ、途中までやっていた『2』を最初から遊んで、
いちおう『1』までやりました。
糸井 ああ、そう(笑)!
大貫 さかのぼっていったから、
『1』はちょっとたいへんだったけど。
「速く歩いてくれー」って(笑)。
糸井 そりゃキツかったですねえ(笑)。
大貫 でも、3つやってよかったです。
まったく同じものが
きちんと流れてることがわかったから。
糸井 ああ、それはうれしいなあ。
大貫 テーマみたいなものを
感じることができてよかったです。
泣いたり笑ったりしたから、
小じわが増えちゃったかもしれないけど(笑)。
糸井 (笑)
大貫 まわりのゲームの好きな人たちが
「いやあ、泣きました」
とか言ってたんですよ。
でも、まあ、自分はゲームで
泣くわけがないとか思っていたんですけど。
そしたら、やっぱり、そうなっちゃって(笑)。
みんな、大げさに言ってるんじゃ
なかったんだなって思いました(笑)。
糸井 所詮、ゲームだからって思うんですよね。
大貫 そうそう。
そこまで入り込むとは思っていなくて。
糸井 うん(笑)。
大貫 でも‥‥めずらしいゲームですよね?
糸井 そうですか?
大貫 強くなって勝つっていうんじゃないんだもの。
ゲームって、
ふつうは制圧していくものが多いでしょ。
だから、勝つということに慣れているなかで、
こういうゲームは、めずらしいなあと思った。
最後の最後に、そういうものが待っている。
ずっと遊んでいると、
なかなか頭が切り替わらないから
気がついたときは、ショックでしたね。
単純にストーリーがすばらしいとか、
そういうことだけじゃないんだなと思いました。
糸井 その、大逆転させる説得力、
みたいなものが必要になってきますからね。
大貫 うん、そう。
こつこつとレベルを上げて、
高いお金を払って、
いろいろアイテムをそろえてきたのに、
まったく違う世界になっちゃうじゃない?
で、ふつうは、ああいう、
いわゆる愛みたいなところに行っちゃうと
ちょっと鼻白むところもあると思うんだけど、
ぜんぜんそうならないというのはすごいですよね。
あいたたたたた、っていう感じ(笑)。
糸井 (笑)
大貫 ゲームのことになると、無口になりますね(笑)。
糸井 ‥‥いや、そうなればいいな、
と思ってつくってたから(笑)。

大貫 あれは、
ストーリーをまず書くんですか?
糸井 ストーリーでは、ないですね。
まずは、シチュエーションですかね。
大貫 主人公のおかれた境遇のようなもの?、
細かいセリフとかじゃなくて。
糸井 そうですね。原案というか、プロットというか。
だから、ひとつの街について、
紙1枚ですむくらいの雑なものですよ。
その紙をめくると、つぎの街が書いてあって。
で、そこにオモチャを置いていくみたいに、
「つぎにこんなふうな
 逆さまな街があったらいいぞ」とか、
そういうのを足したり引いたりして、
最初はジェットコースターのコースを
設計するみたいにしてつくっていくんです。
で、それをもとに形にしてもらって、
いろんな矛盾とか行き詰まりとかあるんですけど、
あえてそのままにして進んでもらって、
それを最後にセリフで仕上げていくんです。
だから、まあ、たいへんなことですよ(笑)。
大貫 たいへんですよね。
ものすごく時間もかかるでしょう?
糸井 作業に費やしてる時間というのは
そんなでもないんですけど、
開発を再開してから丸3年かかりましたね。
とくに最後の、全部のセリフを
入れていく作業はたいへんでした。
なんていうか、
「ナイスなホラを吹いてやりたい」
っていう気持ちがやっぱりあるからね。
リアルなゲームをつくるのとは
またぜんぜん違うものなので。
ことばひとつ書くにしても、
「宇宙」と書くか「ぐんまけん」と書くかで、
サイズってまったく変わっちゃうんで、
遊んでいる人の顔を想像しながら、
足したり引いたりしていくという。
そういう、踊りながらお客を見ている人、
みたいな感じでセリフを考えている時間が
じつはけっこう長いんですよ。
大貫 はあーーー。
糸井 もうしない(笑)。
大貫 もうしないんですか?
糸井 うん。もう、しない(笑)。
すくなくとも、ああいうスタイルのゲームは
ぼくにはもう体力的に無理ですね。
やりたいと言い出す可能性があるのかな?
大貫 (笑)
糸井 あったら、それはもう喜んでやるんだろうね。
つまり、それだけの動機が
生まれるっていうことだからね。
まあ、ちょっと考えらんないけどね。
大貫 ふーん‥‥じゃあ、もう、
『MOTHER3』で終わりなのかな。
糸井 そうですね。だから、思えば、
この『We miss you 〜愛のテーマ〜』の詞が
最後の『MOTHER』仕事だともいえますね。
だから、もちろん売れてほしいとは思うけど、
うまく宣伝したから売れるとか、
そういうものでもないような気がするんですよ。
大貫 うん、うん。
ほんとうにそうです。
糸井 つくっているときは、
プロモーションでうまく化けるといいな、
とか思うんですけどね。
とくに『MOTHER』関連の仕事は、
長くやっていて実感したんだけど、
こういう感じになるんだろうな、
というところにきちんと動いていきますね。
大貫 それは、ほんとうにそうですよね。
だから、売るためにやると強く割り切らないかぎり、
落ち着くべきところに落ち着くんですよ。
売るためにやっても必ず売れるわけでもないし。
だとしたら、やっぱり、
しっかりとつくっておいたほうがいいですよね。
揺るぎなく。
糸井 土台からね(笑)。
大貫 そう、土台からね(笑)。
糸井 おかげで、いい曲になりました。
どうもありがとうございました。
大貫 こちらこそ、ありがとうございました。



(大貫さんと糸井の対談は今回で終わりです。
 お読みいただき、ありがとうございました)

第1回 母性ともマッチョとも違う強さが欲しかった 2006-10-30-MON
第2回 何回かの失敗は、させてあげてもいいんじゃないかな 2006-10-31-TUE
第3回 土台の部分だけを延々とつくってきたような気がする 2006-11-01-WED
第4回 この声で歌うっていうのは生まれ持ったなにか 2006-11-02-THU
第5回 あの詞は、けっこう時間がかかったんです 2006-11-06-MON

2006-11-07-TUE


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