京都
「知りあいの宿」を
つくろう。



京都を歩いていて
「よさそうなお店!」と思っても
実際に敷居をまたぐのは、やっぱり躊躇します。
「一見さん(なじみでない客)お断り」の店は
あることはあるのですが、
ずかずか入り込むのはよくないとしても、
勝手に自分で敷居を高めて、
恐怖感さえ感じてしまうのですが‥‥。


サカベ
そんなこともないんですよ。
京都の人はおもてなしが好きなんです。
── はい。読者の方から、
以前このページでご紹介した
「あんけ」のご主人について
こんなメールをいただきましたよ。


はじめまして。おおぶと申します。

サカベさんがおすすめされていた
「あんけ」さんに行ってきました。
寒かったので、体の温まるものが食べたくなり
おでんがおいしいとおっしゃっていたので、
楽しみにして行ってきました!!

バス停のすぐ近くだったので、
迷わず行けました♪
おいしかったです!!
鯛茶漬けもいただきましたが、
すっごく美味でした☆
その上、旅行の計画を立てるのを
奥さんとだんなさんに手伝っていただきました。

今回の旅では、行く先々で
京都の方のやさしさに
触れることができました。
京都って、街もとっても素敵ですが、
人も素敵な人が多いですね。

また今度京都に行くときは、
銀閣さんに宿泊させていただきます。
また、素敵なお店など紹介してくださいね


サカベ
メール、ありがとうございます。
おおぶさんのおっしゃるとおり、
京都は素敵な人が多いんですよ。
──

いやあ、ちょっとね、
怖い思いもしますよ。


サカベ
言い方が難しいんですけども、
「ええかっこしい」というのが
京都人の気質だと思うんですよ。
みなさん小さい頃から
身だしなみから何から、ある程度のことは
親やお師匠さんから学んで知っていますから。
── 「そりゃお客さんのほうも
 知っているだろう」と。

サカベ
あの人が来るならこういうお花を飾っておこう、
玄関にお水撒こう、お香焚こう、というように、
お迎えするときにはちゃんとしておきたいんです。
「うなぎの寝床」と呼ばれる京都の家の
玄関からつづく細長い路地は、
その辺りをさぐったり
におわせたりする会話に都合のいい
空間でもあるんです。
── エクスキューズ空間を兼ねるんですね。
高度‥‥。

サカベ
京都の人が、会話の間がうまいとか
合いの手がうまいと言われるのも、
そんな気質のせいもあると思います。
── 花街や料亭などの
「一見さんお断り」についても
同じようなことが?

サカベ
そうです。
きちんとおもてなしをしたいから、
とにかく「客に目が届く」ということが
優先されているんです。
お客のほうから
「その魚やったらこうやって料理してなぁ〜
 こんなん食べたいなぁ〜」
というような注文も出ますから、
それに応えたりするのも
京都のええお店の特徴だと思います。
── だから常連さんを大事にするんですね。

サカベ
まあ、ほとんどが
ええあんばいのお店ですから、
常連を優先せなしゃあない、
ということだと思います。
── そういうお店へ、
親が子を連れて行ったりして
代々常連が継がれていくわけですね。

サカベ
そやから、何も
よその人が嫌だ、というわけではないんですよ。
── 迎える体制を万全にさせてあげることも
訪れる側の気遣いなんですね。
サカベさん、京都プチセレブの方々の
ホームパーティーに行ってきたそうですが。

サカベ
ふふふふ。おじゃましてきました。
京都の人のおもてなしの心を
みなさんに感じていただければと思います。
食べ物好きのお料理好きで、
旬のものが出たら自分が作って自分が食べたい!
という人たちばかりでしてね。





この方、松本好志子さんは、
大正7年創業の、
京都で最初のソース製造メーカー
株式会社オジカソースの奥さまです。
ジムに通い、
いつもピタッとした洋服を着て
ご自分で、だらけることのないように
気をつけていらっしゃるんですよ。

人に迷惑のかからない態度を、
そして、人前に出るときは身だしなみを、
ということは、
お母さまである松本美智さんから
教わったそうです。


松本美智さん。森光子さんとは1歳違いで、
京都府立第一高等学校のお友達だそうです。
オジカソースの会長。

松本さんのお宅で出てくるお料理は
すべてからだにいい
組み合わせのものばかりでした。
焼きお揚げと大根、水菜をあわせて
ゆず胡椒ドレッシングでいただいたり、
ブロッコリーとカリフラワーの
胡麻ドレッシング和えもおいしかった。
れんこんと豚のはさみ揚げを
パンチのあるウスターソースでいただきました。
── おふたりとも、ちゃんと
着飾っていらっしゃいますね。

サカベ

でしょ。
「お掃除するときはGパンでいいけど
 外に出るときは、宝石をちゃんとつけて、
 着飾って出なさい」
という教えなんですって。
さて、次におよばれした
ホームパーティは。



このおふたりは、
左から野村雅美さん、村瀬御園さんです。
野村さんは、有職織物のメーカーである
株式会社のむらの奥さまです。
のむらは、創業130年、能、歌舞伎、
神宮装束をはじめ、大河ドラマの衣裳、
相撲の行事の直垂などの
製造をなさっている会社です。
村瀬さんは、京都の北山杉の生産をはじめ
銘木及び一般建築材料の販売をしている会社の
社長夫人です。

── あらためて思いますが、
長いあいだつづいている伝統的な企業が
京都にはいっぱいあるんですね。


これ、すべて手づくり!

サカベ
エビとカニのサラダ、お野菜の春巻き、
イワシの姿煮、ホウレン草のおひたし、
ひじき、おから、ニョッキ風ジャガイモピザ、
シフォンケーキ‥‥すべておいしかったです。
なかでも、これ。


すじ肉煮込みと鳥肝煮込み。

すじ肉は北山にある「三田屋」さん、
鳥肝は千本商店街の「鳥松」さん、と
もう決まっているそうです。
── 北山と千本ではちょっと離れていますが、
わざわざ素材をそこへ
買いに行くほどなんですね。

サカベ
もう、絶品でした!
すじ肉の味つけは、
赤みそ、田舎みそ、中華みそ、岩塩を
ブレンドしたもの。
短冊切りにしたコンニャクといっしょに
煮込みます。
鳥肝は血抜きし茹であげ、
あっさりとした味つけで、
ショウガが添えられていました。
── シフォンケーキも
すごい大っきいです。

サカベ
オーブンは、ケーキを焼くために
特注品をあつらえたそうですよ。
みなさん、おいしいものには目がなくて、
四季折々のものをいただくことに貪欲です。
やさしくて、招いた人への気配りがあって、
それでいて、はっきり本音で話すお人柄。
話したあとはとても気持ちよくて、
さっぱりした気持ちになりました。
── 京都で、料亭やお店など、
どこへ伺うにも、
京都という土地に対する
尊敬を持っていることも大切な気がします。

サカベ
京都の人は、
京都という土地や風土の内側に
人をお迎えすることが
うれしいんですよ。
── 親の代からそういった
もてなしの心や作法を
引き継いでいかれるんですね。

サカベ
お母さんたちは、生き字引ですからね。
「旅館 銀閣」のフロントの人にも、
その‥‥おばさん、多いでしょ?
── あたたかい笑顔のおばさまたち、
いつもていねいに
迎えてくださいます。

サカベ
充分できてないようなことも
あるかもしれないんですけど、
おもてなしの心をたっぷり持っている
スタッフが、フロントにはおります。
「ほぼ日」の、京都にいらっしゃるみなさんの
玄関口となっているという気持ちで
立っています。
どうぞお気軽に、何でも聞いてくださいね。

2月に入り、容赦なく寒い京都ですが、
雪の降る日の街は、格別です。
人のまばらな冬の京都が、
みなさんをお待ちしています。

2007-02-04-SUN

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