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ジョージさんの社長漫遊記 その5

ジョージ たまにうちの社員がね、
僕のことで、すごい叱られることがあるの。
ノリスケ 誰から?
ジョージ お客さんから。取引先とか。
つねさん 社長を社長と思ってないとか?
ジョージ そうなの。
何で社長が自分の鞄を持ってるんだとか。
お前ら一緒にいて何で社長の鞄を
持ってやらないんだとか。
つねさん 彼らの思う「社長」には
鞄持ちがいるってことだね。
ジョージ そう。
ノリスケ それこそ駅前シリーズよねえ。
それねえ、男女のマナーで言えば、
ホテルでも旦那が先に歩いて
奥さんが後から荷物持ってついてくるのは
どうかと思うけど、
社長の鞄のことを言われるのは
ちょっと困るわね。
ジョージ でもそういう人がいるんだよ。
それで、逆に言うとね、
社長になったらそういうことを
しなくてすむんだって思ってる人が
いるということなの。
ノリスケ あらあ。自分で鞄は持たなくていいと。
ジョージ 社長なんだから、自分の荷物を持つより
大切なことをしなきゃいけないだろうって
言う人がいるのよ。
ノリスケ もっともらしいことをおっしゃるのね。
荷物を持ってる場合じゃないだろと。
ジョージ 社長に荷物を持たせてるような会社は
本当にいい仕事はできないとかって
言うんだよね。
ノリスケ はあ。勝手なこと言うね。
つねさん 旧態依然とした。
ジョージ 他人はね、勝手なことを言うのよ。
そういうふうな考え方とか
そういうのが当たり前と思ってる社長が
今までうちの会社にいたっていうのも
あれなんだけどね。
つねさん あははは。ダディ?
ジョージ おもしろいのがね、社員にとっては当然、
創業者なので大切にしないといけないのよ。
だけど、新しい社長が新しい考え方の方に
向かっていくと、そちらの方を
自然に感じ始めるようになるわけよね。
ノリスケ うん。
ジョージ そうすると、今まで鞄持ってもらってるのが
当然だった会長の鞄が
どこかに置き去りになってるとか!
ノリスケ あははは。
ジョージ 行方不明になって見つからなくなったとか!
「誰が持ってるんだ」って。えええ〜〜〜っ?
つねさん 「会長持ってないんですか?」みたいな。
ジョージ そうそうそう。「持ってないんですか?」
「何でワシが持たんといかんのや」
みたいな感じのてんやわんやが起きるの!
ノリスケ ほんとに映画ね!
会長自体を変えるのは難しいからねえ。
つねさん 会長は変わんないよね。
ジョージ それはね、みなさんにお願いしたの。
会長のことをよろしくお願いしますって。
ノリスケ 臨機応変に。お付きも必要だし。
荷物持ちも必要だし車も要るし。
つねさん 秘書もいるし。
ノリスケ あの常務時代の秘書の
超優秀な女性スタッフはどうしたの?
ジョージ あ、彼女はうちの裏方になったの。
アンダーグラウンドなの。
つねさん 裏番?
ジョージ そういう感じ?
ノリスケ どういうこと?
会社にアンダーグラウンドがあるって
どういうこと?
ジョージ だってほら。
つねさん くノ一(くのいち)みたいなの?
ジョージ 人間って役割を持ってるわけでしょ?
で、会社の公の役割があるわけよ。
例えば僕は社長として一緒に社員と
お食事をしましょうっていう時には、
その役割に応じて例えば部署単位だとか、
部長単位だとかでしか、
集めて食事はできないわけよね。
ノリスケ うん。
ジョージ だけど、そういう集まりで食事をする時には
仕事でしかないわけさ。
ノリスケ うん。
ジョージ で、飲んでどんなに盛り上がっても
一番最後締めをする時には、
「じゃあ来月の業績がんばりましょうね」
で終わるんだけど。それはそれだけだと
つまんないでしょ? そうじゃなくて
例えば本当に僕のことが好きで
会社にいてくれてる人とか、
あるいはある仕事が大好きで
会社にいてくれてる人たちの
グループもあるわけさ。
部署ではなくてね。
ノリスケ うんうん。
ジョージ 実はそのグループ、
その人たちが持っている情報とか
ネットワークの方が、
会社の将来のためには大切なのよね。
ノリスケ ああ、そういう人がいろんな部署に
点在してるわけでしょ?
ジョージ 点在してるの。撒きびしのように
撒かれてるわけよね。
ノリスケ うん。そういうことだね。
ジョージ で、たまにその撒きびしを知らずに踏んで、
大怪我する子も出るわけよ。
で、そういう裏っ側の、例えば組織でいうと
‥‥どう言うのかな、普通の組織って
繊維みたいなもので、縦糸と横糸じゃない。
ノリスケ うんうん。
ジョージ で、どんなにそれを頑丈に織り上げても
裏地がついてないと洋服にならないんだよね。
つねさん あ、そういうことか。
ノリスケ うまいことおっしゃる(笑)。
つねさん ますます弁が立つようになった。
ジョージ そう。裏地には縦糸も横糸もないのよ。
ノリスケ 化学繊維みたいなね。
ジョージ でね、うちの会社の
裏地の中心になってるのが例の彼女なの。
今回僕が社長になることによって
彼女は役職から解いたの。
ノリスケ ほお。
ジョージ もう自由に野を歩きなさいと。
遊牧民よ。あるいは
地に潜りなさいみたいな感じ?
つねさん 彼女がほんとうは水戸黄門なわけね。
ジョージ そんな感じだね。
助さん格さん持ってるからね、あの女。
カッカッカみたいな感じ。
で、すっごい働きをしてくれていて!
ノリスケ どんなことなさるの? 彼女は。
あんまり具体的に言えないかもしれないけど。
ジョージ あの部署のあの子とあの子は
ものすごくクサってて、
何でクサってるかっていうと
あの上司が無能だからですよとかって
言ってくれるの。
ノリスケ ああ、冷静にね。
つねさん オブザーバーとして。
ジョージ それを聞いて、そうなのかなと思って
いろんな人にカマかけるの、僕は。
どう? 最近どう? って。
あ、ほんとにそうだったんだっていうと、
もう僕は今、人事権持ってますんで。
ノリスケ あはははは。
ジョージ いきなり部署が変わったりとかするの。
それはね、すごくありがたい。
つねさん しゅげえ。
ジョージ あとガス抜きもできるしね。
ノリスケ 聞いて聞いて、って。お互いに。
ジョージ ほんとにきれいに織られた生地であれば、
どんなにテレンテレンになっても
裏地を交換してやれば
新しい洋服になったりするからね。
そういう役割なの。彼女は。
そういうのはちょっと楽しんでやってます。
こんどジョージさんの会社に
見に行ってこよう。
来週につづきまーす。


2005-12-23-FRI

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