『新選組!』
with
ほぼ日テレビガイド
第36回「対決見廻組!」を観て。

永田 第36回を観おわりました!
西本 お疲れさまでした。
糸井 お疲れさまでした。
永田 今日はどこから行きますか?
糸井 先に、例のやつを片づけたほうが
いいんじゃないですかね?
永田 お、恒例のやつですね。
西本 ‥‥‥‥。
永田 西本さん?
西本 ‥‥‥‥。
糸井 あ、会ってないんだな。
西本 ‥‥いちおうですね、
おさえといっては
たいへん失礼な発言となりますが
会うことには会いました。
永田 どなたに?
西本 『トリビア』の収録で、武田観柳斎に‥‥。
糸井 けど、まあ、それは、
会うに決まってる話だからね。
西本 ええ、ええ、わかってます。
永田 読者の方も、
「そうじゃないだろう、西本!」と。
西本 ええ、ええ、わかってます。
糸井 まあ、毎週会うわけがないんだけどね。
永田 えてして、こういう記録は
意識すると途絶えるものですよ。
「9連続奪三振」しかり、
「7試合連続ホームラン」しかり。
途中まではポンポンポンっと行くんだけど、
みんなが「おおっ?」となったとたんに──。
糸井 途絶えちゃうんだよね。
西本 申しわけありません!
永田 いやいや謝ることではありません。
糸井 むしろ、いままでよくやった。
西本 ありがとうございます! くぅーーーーっ!
糸井 泣きマネするな。
永田 泣けないくせに。
西本 それはさておき『トリビア』の話の続きですが、
今回、武田観柳斎こと八嶋さんが、
我々の記事に反応してくださいましたよ。
「読んでますよ、イトイ新聞!」と。
永田 「イトイ新聞」(笑)。
西本 どうやら、以前メールをくださった、
桂吉弥さんがこの連載を
毎回プリントアウトして
楽屋に置いてくださってるらしいんです。
糸井 ありがたいですね。
西本 桂吉弥さんは今週、
ドラマのなかでも情報屋として
大活躍してらっしゃいましたけど。
糸井 つまり山崎は実生活でも情報屋であった(笑)。
西本 「近藤先生、こんなものが
 インターネットにありました」と。
永田 あの人の、ドラマの中での
信頼感というか安定感というか
「揺るぎない感じ」というのはすごいですね。
情報という分野で、山崎がしゃべることは
100パーセント真実だという感じですよね。
糸井 そうですね。
スペシャリストですよね。
永田 揺らぎまくる役どころが多いなかで、
ひとりだけ全能感すらありますね。
プチヨーダな感じですね。
西本 しかし、火事の見張りにいくときに
手に扇子を持っていたのは
ちょっといかがかと。
糸井 火に風をおくる‥‥。
永田 いやいや、また変装してたんですよ。
扇子はいろんなものになりますからね。
西本 もとが噺家さんなだけに。
永田 山崎が失敗するわけがないんです。
だいたい、帰ってきたとき、
すすひとつついてなかったじゃないですか。
西本 なるほど、そういう考えかたもありますか。
糸井 山崎の活躍も興味深かったですが、
今週、もっとも頭角を現していたのは
伊東じゃないですか。
ふたり 甲子太郎!
糸井 こう、観てる雰囲気から感じたんですけど、
みなさん、だいぶ、
伊東が好きになってきたみたいですね?
永田 ええ、もう、完全に一周しました。
西本 もともとぼくは「ヤなもん好き」ですから。
糸井 今日は3人とも「ヤなもん好き」状態でしたね。
永田 しゃべると思わず注目しちゃいますね。
見かたを変えるとおもしろいんですよ。
まず、あの、
たいしたことじゃないことを、ゆっくり言う。
糸井 あはははははははは、
あれはいいですねえ。
永田 しかも、さっき言ったことと
同じようなことを、ゆっくり言う。
西本 あの〜、伊東が言ってた、
「私の記憶が間違いでなければ」
ってなんでしたっけ?
糸井 『料理の鉄人』
西本 ああ、そうか! 鹿賀丈史か!
「私の記憶が間違いでなければ」が
すっごい気になったんですよ。
永田 ぼくが気になったのは、あれです、
「ゆめゆめ、忘れることなかれ‥‥」
糸井 「ゆめゆめ」は社内でも広めたいところですね。
なにかの確認をするようなときに。
西本 「ページを更新したあとはリンクのチェックを
 ゆめゆめ、忘れることなかれ‥‥」
永田 「ゴミ当番はペットボトルの分別を
 ゆめゆめ、忘れることなかれ‥‥」
西本 「糸井先生、落語イベントでの段取りを、
 ゆめゆめ、忘れることなかれ‥‥」
永田 今回もひどかったねえ!
とくに、2回目の、
「独楽回し」を手伝うときの糸井さん。
西本 はい、もうたいへんでした。
糸井 ‥‥またそういう話か。
西本 観てない読者の方のために説明すると、
こないだの「春風亭昇太ひとり会」で、
一席目と二席目のあいだに
「独楽回し」の芸があって、
最後のところで糸井さんが出て行って
綱渡りの芸を手伝うんですけど、
ほんとうに、その都度その都度、
段取りを忘れてましたからね。
永田 とくに2回目はひどかったですね。
まるで、そういう芸みたいでしたよ。
「段取りを忘れる」という芸。
西本 いえてます。
糸井 ‥‥‥‥。
永田 段取りを忘れて、
ぼーっとしてるわけじゃないんですよね。
「つぎはこっちだな」っていう感じで
糸井さんはいちいち動くんですけど、
それが見事に間違ってて、紋之助さんが
「糸井さん、こっちこっち!」って。
糸井 ‥‥あれ、もしも、目上とか目下とか
年齢とかの問題がなければ
ものすごく怒られてますよね、ぼく。
西本 まあ、でも、ある意味、予定どおりですけどね。
糸井さんも、リハーサルのときから
本番ではうまくできませんよ
って宣言してたし。
永田 あのリハーサルは観てておかしかったなあ。
ひととおり、段取りの説明を聞いたあと、
「それがぼくできると思いますか?」って。
西本 ええ、むしろ、すがすがしかったです。
永田 で、にしもっちゃんがマイクで、
『すいませ〜ん、その都度、
 言ってもらえますかァ!』って。
西本 「ダメな子じゃないんです」!
ふたり 「ダメな子じゃないんです」!
西本 糸井さんと伊東甲子太郎を
会わせてみると
相性がいいような気がしますね。
糸井 どういう意味ですか、それは。
っていうか、また、
ぜんぜん関係ない話をしてるじゃないですか。
まずは伊東が気になるってことですよ。
ほかの話に行ってくださいよ。
永田 細かいところからいうと
谷三十郎はいかがですか。
糸井 「最近、ないがしろではないか?」
西本 あのセリフ、よかったですねえ(笑)。
糸井 事情一切言わずにね(笑)。
永田 ないがしろにされている人が
もっとも言えないセリフですよね。
糸井 ああいう時、土方はちゃんと
敬語でつきあうんですね。
永田 ちょっと心ない感じで。
あと、今回は、柔術の人と勘定方の人が
すごくよかったですね。
西本 オダギリもよかったですよ。
永田 今回は、ふつうの寡黙な
役どころに戻ってましたね。
西本 2回続けてコントに参加しましたからね。
今回も続くとさすがに役がブレてきますから。
糸井 セントルイスの星ルイスさんも出てましたね。
永田 あ、そうそう、オープニングで
名前は見かけたんですけど、
どこに出てたんですか?
ちょっと気づかなかった。
糸井 あれですよ、
八木家から来たという人。
西本 ああ! あの人がそうですか。
糸井 今回は座ってるだけでしたね。
あと、養子とか、よかったじゃないですか。
永田 周平くんですね。
西本 彼については読者の方からも
さまざまな情報をいただきました。
演技派です。実力者です。
永田 聞きかじった話ですが、
近藤周平については史実として残っている
記録があまり多くないということらしいので、
三谷さんが彼を今後どのように
描いていくのか気になるところです。
西本 そして周平といえば、
今回、よかったのが兵学の授業ですよ。
糸井 よかったねー、メガネノオカッパ(笑)。
永田 もう、あれ、『寝床』みたいでしたね。
「せっかく言い話を聞かせてやるというのに、
 誰も来ないじゃないか!」って。
糸井 なんせ、その前が
外国語ペラペラの伊東の授業だからね。
西本 あの対比はコントですよね。
永田 そうそう(笑)。
だから、今回、大きな感想として思ったのは、
ぼくらがこの企画を始めるときに、
いろんな人から言われたじゃないですか。
「これからは殺戮の新選組ですよ」とか、
「暗くなる一方ですよ」とか、
「悲しいことばかりを観るなんて
 かわいそうに」とか。
けど、ぜんぜんそうはなってないというか、
「今後は真っ暗だ」って
決めてる場合じゃないというか。
糸井 あああ、なるほどね。
永田 もちろん、暗い展開はあるんだけど、
げらげら笑うところもあるし、
日常のたのしさなんかもあるし、
結果的に「今回は愉快だったな」って
思う回もたくさんあるわけで。
だから、歴史どおりに、
新選組が終わっていくさまを流すだけだったら、
ドラマを観る意味なんてないですからね。
糸井 いや、それはそうですね。
すごくそう思いますね。
西本 ぼくも便乗して大きな感想を言わせてもらうと、
今回は、わりと小粒な事件を
ところどころに挟んではいるものの、
全体の動きとしてはうねりが
デカくなっているんだなと思いました。
いままでの事件というのは
幕末という時代の中では大きな事件だったけど、
今後はいよいよ、
歴史年表で太字で表示されるような事件が
近づきつつあるのを感じます。
糸井 うねってきたねえ。
外国の船とかが頭から出てきたし。
攘夷だ、開国だ、っていう動きも
慌ただしくなってきた。
もう、主義が変わることが、
へっちゃらになってますからね。
たいへんな時代ですよ。
永田 そのなかでぼくは捨助の立ち位置が
いちばんリアルなんじゃないかと思いましたね。
「あいつ、尊王でも攘夷でも
 ないじゃないかよ!」って(笑)。
糸井 あのセリフはよかったねえ!
永田 捨助にとっては、そんなことよりもやっぱり、
「なんかやらせてくれよ、仕事くれよ!」
っていうことなんですよね。
西本 例の「捨助の謎」ですけど、
今回はもう、言ってもいいでしょうね。
糸井 そうですね。読者からのメールでも、
ぼちぼち正解が届いてますし。
まあ、正解かどうかはわからないですけどね。
ぼくらがそうじゃないかと
思っているだけですから。
西本 深読みしすぎてるメールも
けっこうありましたね(笑)。
永田 あった、あった(笑)。
糸井 ぼくらみたいなシロートが読むと、
なにがなんだかわかんないような仮説ね(笑)。
永田 歴史上にこういう人がいるんだけど、
それが捨助じゃないかとか、
ゆくゆくあいつを殺すのが捨助じゃないかとか。
西本 そこまでねじらないだろうというような。
まあ、ひょっとしたら
合っているのかもしれないけど。
永田 もっと単純なことをぼくらは話してました。
もちろん、読者に教えられてわかったんですが。
西本 それでは、局長、お願いします。
糸井 ま、捨助が鞍馬天狗じゃないか
ということですよね。
きっと、わかってる方も
すごく多いと思うんですけど。
西本 「天狗」「天狗」と呼ばれていたり、
ちょっとした有名人になっていたり。
永田 いちいち頭巾で顔を隠していたり。
糸井 桂小五郎とつるんでいたりね。
桂小五郎と鞍馬天狗は
セットで有名なんですよ。
‥‥あれ? みなさん知ってました?
西本 知りません。
永田 じつは鞍馬天狗については
ほとんどなにも知りません。
糸井 ああ、そうなんですか。
『鞍馬天狗』という映画には
「桂さん!」というセリフがすごく多いんです。
ぼくは新選組というと一番最初に知ったのは
桂小五郎っていうくらい
桂小五郎を先に知っているんです。
なぜかというと
映画の『鞍馬天狗』に出てたから。
嵐寛寿郎がやって中村錦之助がやってみたいな
歴史があってね。松島トモ子は杉作ですから。
永田 杉作? 誰ですか?
西本 J太郎ですか?
糸井 ああ、ほんとに知らないんですね。
鞍馬天狗を明智小五郎だとすると
小林少年が杉作ですよ。
ふたり へーーー。
糸井 杉作は、そのうち出すんじゃないかな。
ま、そのうち捨助は馬に乗ってきますよ。
イカみたいな覆面をして。
永田 あ、だから、ぼくは鞍馬天狗というと、
そのイカみたいな記号しかしらないんですよ。
最初、『冗談新選組』を読んだときに
しょっちゅう鞍馬天狗が出てくるので
ぼくはてっきりみなもと先生の
完全なギャグだと思っていたんですけど、
じつはそういう背景があるってあとで知って。
桂小五郎が鞍馬天狗だったという説も
あるらしいぞ、みたいな。
糸井 要するに、桂小五郎といっしょに
倒幕の運動を助ける人なんですよ。
永田 なるほどなるほど。
西本 そういや、今回の捨助は、屋根の上で
鞍馬天狗を彷彿とさせるような
「あばよ!」というポーズもしてましたね。
糸井 ‥‥それはネズミ小僧じゃないですか?
西本 ‥‥失礼しました。
永田 いま、本気で間違えたな。
西本 まあ、ともかく、これを、
いちばん最初に気づいてメールしてくれた人は
なかなかすごいと思いますよ。
永田 2通、同時にきてましたよね。
ありがとうございます。
糸井 で、いよいよメインは、
新選組と見廻組の対決ですが。
どうですか、西本さん。
西本 いちおうは見廻組が
近藤を認めたという結果でしたが、
イマイチ不安というか、
「近藤先生のお人柄によって」
みたいなセリフに近藤自身が
まだ追いつけてない感じがするのは
ぼくだけですかね。
永田 でも、今回はだいぶ挽回してましたよ。
近藤というのは
とっさの判断には長けてるんだな、と。
西本 まあ、かたちとしてはそうなんですけど、
それが実感できない感じなんですよ。
たとえば、見廻組を説き伏せて、
「ご指示を!」となって、地図をずーっと、
見てるシーンがあったじゃないですか。
あそこで、ぼくはすごく
不安になっちゃったんですよ。
「‥‥うわっ! 近藤が、
 なにも考えてなかったらどうしよ?!」って。
永田 あああ、ちょっとそれ、オレもあった。
なんか、変な身内感覚ね。
西本 そうそうそうそう。
「あの子、答えられるかしら?」
という授業参観のような気持ちです。
みんなが期待してるんだけど、
実際はなんにも考えてなくて、
メガネノオカッパあたりに、
「‥‥へ、兵法的には、どうか?」なんて
訊いたらどうしよっ! と思ってました。
永田 わかるわ、それ。考えてる時間も長かったし。
でも、その前の「火事だっ!」というところで
迅速に指示を飛ばしてましたよね。
糸井 あそこは安定していて、よかったよね。
でも、思えばあの大騒ぎの原因も──。
永田 捨助(笑)。
糸井 日本の歴史は捨助がつくったってことに。
西本 いま、そうなりかけてます。
糸井 愉快ですね。
西本 愉快です。
永田 火事の及ぼす効果ついてなのですが、
ニッチもサッチもいかなかった薩長が
劇的に進展した今回、龍馬と西郷が、
火の手が迫ってくるという場所に
ふたりで座っていて、
そこで日本の将来について
話しているというのは
とても見事だったと思うのですが。
つまり、日本の現状を
迫り来る火事という暗喩によって‥‥。
糸井 ‥‥‥‥ん?
西本 ‥‥はい、はい。
永田 いま、聞いてなかったでしょ!
ふたり はい。
永田 もーーー。
糸井 ごめんごめん、かいつまんで説明して。
永田 もういいです。
火事が効果的だったね、って話です。
糸井 はいはい、火事ね。
「ビジネスぜよ」のシーンね。
あそこは、とうとう西郷が
本性を現したという感じでよかったよね。
これまで、「西郷はなかなかくわせもんだ」
みたいなことが何度もあったけど、
「ビジネス」ということばを
理解しているというところで
ついに「考えている人、西郷」として
はっきりしたわけだよね。
永田 と同時に、ようやく薩長の話が
現実的になっていくと。
西本 あのシーンはこれまでにない、
スリリングな感じがありましたね。
IBMのCMを観ているような
気分になりました。
永田 あっ、それはきっと音楽ですよ。
あのシーンって、これまでの回では
あまり聞いたことのないような、
盛り上がる感じのBGM、
「わくわくBGM」みたいなのが
鳴ってたんですよ。
西本 ああ、そのせいですか。
永田 「わくわくBGM」というのは、
『ラピュタ』でいうところの、
ドーラたちが小型飛行機に乗って、
夜明けに城に向かって、ブィーンと、
低く飛んでいくときに
かかるような音楽のことです。
糸井 たしか西本さんは
『ラピュタ』を観てないんですよ。
うちの事務所では珍しいタイプです。
西本 DVDは買ったんです!
家に帰って観ます!
まだ観てないだけです!
永田 じゃあ、あれです、
『E.T.』でいうところの、
乗り捨てられた救急車に
エリオットのお母さんが近づくところから
鳴り始めて、でも救急車は空っぽで、
お母さんが振り向いて「ヴァン!」ってなって
自転車のチェイスが始まるときの音楽です。
西本 なんだかよくわかりませんが、
『E.T.』なら観たことがあります!
糸井 『ラピュタ』はいいよ。観ておきなさい。
西本 『もののけ姫』は観たんですけどね。
永田 『新選組!』の話はどうなってるんですか。
糸井 なんの話してたんだっけ?
永田 西郷と龍馬の話です。
まえにもちらっと出た話ですけど、
やっぱりどんどん龍馬が
主人公っぽくなっていくんですよね。
糸井 幕末の物語だからね、
ふつうに追うと龍馬が主役になりますよ。
やはり明治維新の
表舞台はこっちなんだということだから。
いよいよ、幕府側の人たちが
表舞台じゃない側にきちゃったんだね。
西本 伊東が松平容保に突っ込む場面でも
そのあたりは象徴的に描かれてましたね。
伊東が容保公に自説を説いているとき
近藤は「えっ、マジで!」という顔でしたよ。
糸井 近藤も考えてるんだよ。
考えてるんだけど、限界があるんですよ。
それを今回、さみしいくらい感じましたね。
永田 目の前に起きた火事に対しては
指示を出せるけれども
大局は読めないというか。
糸井 戦術はできるけど戦略がないんですよ。
乱暴な言いかただけど、
近藤や新選組の、時代に対する無能化が
はっきりと演出されていますよね。
一人の火消しとしては
火を消すということで機能する。
けど、殺人技術集団として成立しても、
しょうがないですよね。
永田 なるほど。
糸井 と、真面目な話をしたあとでなんですが、
近藤についてもうひとつ
気になったことがあったのを思い出しました。
ふたり どうぞどうぞ。
糸井 先週、自分たちが言っちゃった手前、
どうしても気になってしまうんですよ。
あの夫婦。あのふたり。近藤とおゆき。
どうしてもあの、「安らぐのだ」が!
あいかわらず「安らぐのだ」で!
永田 いや、今回も、
揺るぎなき「安らぐのだ」でした。
西本 あれはもう、正妻扱いして
ぼくらも観たほうがいいんじゃないですか。
子供も3人くらいいる感じで。
糸井 なんでも、
読者からのメールで知ったんですけど、
あとあと、おゆきの妹が出てくるらしいですね。
それも、優香が二役でこなすとか。
永田 ああ、ぼくもつい読んじゃいました。
困るんだよなあ、先の話が書いてあるの。
糸井 それは永田くんだけですよ。
西本 ぼくと糸井さんはぜんぜん平気ですからね。
永田 たいへんわがままなお願いだと
自覚していますが、
先の話が書いてある場合は、
メールの件名に「永田読むな」と
書いていただけるとうれしいです。
糸井 ともあれ、優香二役ですよ。
どっちも安らぐので、
2倍「安らぐのだ」!
西本 かたっぽはもう、
色気バリバリでいくんじゃないですか?
糸井 そうなると近藤の演技が
ものすごく難しくなってくるぞ。
西本 ああ、そうか!
糸井 家に帰るといきなり
袴を脱ぎ始めちゃうような人に
なっちゃうんじゃない。
西本 それはまずい。
ただの女好きですね。
糸井 いっそ、志村けんが
近藤勇をやるっていうのはどうだ。
永田 あ、晩年になって役者が変わるみたいな。
西本 じゃ、源さんがダチョウのリーダーで。
糸井 それはNHKじゃなくて、
8チャンネルがやればいいんですよね。
ふつうに『新選組!』のパロディーとして。
西本 志村さんの番組だと、
優香だけはおゆきをくずさずに演じて
周囲がぼけ倒すという構図ですね。
永田 あっ、それ、あれだ!
『ひょうきん族』『男女7人夏物語』
やったときのパターンだ!
さんまさんと鶴ちゃんだけが
いっしょで女役が全部、
山田邦子だったやつ!
西本 ああ、それそれ(笑)!
永田 あれ、最っ高おもしろかったなあ。
さんまさんが真面目なセリフ言ったあと、
すげえ大げさにアゴ動かすんだよね。
西本 「‥‥もう、遅いねや」
(アゴかくかく動かす)
ふたり わはははははは!
糸井 そうなると、ぼくは、
竜平ちゃんの沖田総司を
期待しますね。
永田 それはひどい(笑)!
西本 血を吐くときはちょっと大仁田で。
糸井 カツラ叩きつけたりして。
永田 血を吐くかわりに、
ぽろぽろって泣いたりして。
3人 (爆笑)
永田 熱い風呂に「押すなよ!」って言いながら
入っていったりね。
西本 ボブサップが演じる芹沢鴨に
「おまえが一番強いんだからいけよ」
と無理矢理対決させられるんですよ。
で、竜ちゃんが最初は「いやだよ!」と。
糸井 で、寺門演じる土方が
「オレが行くよ!」
西本 リーダー演じる源さんが、
「いや、オレが行くよ!」
永田 そんで竜ちゃんが「オレが行くよ!」で
ふたりが「どうぞ!」だ。
3人 (爆笑)
糸井 それ、観たいなぁ(笑)。
上島竜平の沖田というのを
考えただけで勝ちだね。
永田 『冗談新選組』を実写化する際は
沖田は竜ちゃんですよ。
沖田ファンと藤原ファンから
そうとう苦情がきますけど。
西本 残りの役は全部リーダーで
いいんじゃないですか。
リーダーの器用さを見せるということで。
糸井 自分で振っておいてなんですけど、
こんな話を続けてていいんですか?
西本 どうも今日は脱線がひどいですね。
永田 まあ、脱線はいつものことですけど、
勢いがよすぎます。
糸井 じゃあ最後に、真面目だけど、
ひじょうにややこしい話をしましょう。
ふたり どうぞどうぞ。
糸井 思えば大河ドラマというのは
ものすごいことをやってるんだなあと、
『新選組!』を観てて思ったんですよ。
というのは、たとえば
新選組を忠臣蔵に置き換えてみると
わかりやすいんですけど、
いまの時代に忠臣蔵を観るっていうのは、
じつはすごくむつかしいことだと思うんですね。
つまり、主君の仇を討つために
がんばる人たちを観て、
「そうだ! がんばれ!」って
ふつうに思い入れられるような時代って
とっくに終わっているような気がするんですよ。
そういうものを、1年かけてやるわけでしょう。
それはね、不思議な感じがしますよね。
たとえばの話、大石内蔵助は立派か?
大石内蔵助がやったことは立派ですか?
吉良上野介がやったことは
そんなに悪いことですか?
浅野内匠頭は殿様として正しいですか?
主君のかたきはとったが
全員切腹したというのはどう思いますか?
という、テストがあったとしたら
答案かけないんですよ。
ふたり ふむふむふむ。
糸井 だから、『新選組!』を観ながら、
「この人たち何も考えてないじゃないか!」
ってぼくらは思うわけですよね。
でもね、昔は、っていうか、少なくとも、
ぼくが子どものころは違ったんです。
もっと純粋に、
「忠義を貫くのはいいよね」って
ふつうに思えたんです。
ところが、そういうふうには、
いまは思えないわけですよね。
なのに、大河ドラマが
どうして成り立っていくんだろう、と。
永田 もう、地続きの話ではないですよね。
ある意味、そういう話があったという、
伝統芸能に近い感じのもので、
片方の側に感情移入して観ていく、
というものになってるんじゃないでしょうか。
糸井 というよりも、その伝統芸能の意味が
とっくに途切れてるんじゃないかと
思えてくるんですよ。
昔だって、忠心、忠義というものに、
そんなにリアリティーがあったわけじゃない。
けど、なにかしら、
「昔の人たちを遠巻きに尊敬する」
みたいな空気があったと思うんだよ。
ところがいまは、そこがずれているから
お客さんが見る目がくるくる変わっていく。
そこがね、つくるほうはたいへんだと思います。
また、ひとつのたとえ話ですけど、
ぼくが子どものころには
ふつうに、流行歌で新選組の歌があったんです。
「鴨の河原に千鳥がさわぐ
 またも血の雨 涙雨」
これを小学生が歌ってたわけです。
ふつうに、新選組はかっこいいに決まってる、
という感じで歌ってたわけですよ。
永田 それは、いまに置き換えると、たとえば
平井堅のニューシングルが
新選組の歌である、みたいなもので。
糸井 そう、そういうこと。
西本 あり得ないですよね。
糸井 というなかでね、
新選組のドラマを1年かけてやっている。
そこがね、ふっと気づくと、
不思議なことだなあと思う。
永田 これはぼく個人のスタンスですけど、
ぼくは別に歴史ファンでも
新選組ファンでもないので、
申しわけないですけど、
テーマが新選組であるというのは
どうでもいいことなんです。極端な話。
だから、いま、たのしんで観てるのは、
新選組の器をかりて三谷さんのドラマを
たのしんでいるというだけで。
乱暴にいえば、この45分が楽しければ、
幕府がそのまま続いちゃってもかまわない。
そういう、視聴者です。
西本 まあ、ぼくもそうですね。
だから、最終回になって、
「ニセンニジュウゴネン‥‥エドバクフ」
ってなってもいいわけです。
永田 まあ、「その展開はどうよ!」
という話にはなるけどね。
西本 たとえばの話ですよ。
糸井 でも昔の大河ドラマは
そうじゃなかったわけです。
観てる側の意識がね。
永田 糸井さんの年代で
そのままの価値観をずっと持ってる人は
この『新選組!』を観て
「違う!」って思うわけですか。
糸井 みんながどうだか知りませんけど、
少なくとも、この時代に
大河ドラマが成り立っているというか、
成り立たせている作家たちがいるというのが
すげえなと思ったんですよ。
だってさ、
新選組って設定は、えらいむつかしいぜ?
ぼくらがこうして10回くらい観ただけでも、
出てくる人たちの行動や考えに
「そうじゃないだろう!」っていう
違和感がたくさんあるわけでしょう?
永田 すっきりと膝を打てるようなことといえば
「このあとどうなるかは誰にもわからん」
と言ってる佐久間象山とか、
「尊王とか攘夷とかではなく
 人と人とのつながりが大切なのではないか」
と言ってる山南さんとかに、
「そうだよなあ」と思えるようなものが
ぎりぎりあるくらいで。
西本 それも、おとぎ話というか、
「むかーしむかーし」みたいな話にせずに、
三谷さんはつくってるんですよね。
糸井 おとぎ話にしちゃったら簡単ですよ。
しないからこそ、
違和感が出てくるわけだからね。
だからさ、ぼくらが先週から言ってる
「安らぐのだ」問題なんて、
その最たるものでさ。
永田 あ! そうだ。まさに。
糸井 愛人の扱いかたについて
現代の人が考えることと
当時の考えは相いれないってことが
まず、根っこにあるわけです。
西本 それをおとぎ話にせずにやってるから、
ぼくらみたいな視聴者が
愛人の家で「正座」はないだろう!
みたいな違和感を。
糸井 感じてしまうわけだよね。
そのあたりをどう表現するのかは悩むと。
きっと、それと同じことが
ぜーんぶのところでいえちゃうんですよ。
永田 そりゃたいへんだわ。
しかもそれ、演者の人っていうか、
関わってる全員が抱える問題というか。
糸井 うん。そのあたりのむつかしさを
体感しながら書いているというかね。
そんななかで「寺田屋大騒動」みたいな
話をつくりあげてると思うとね、
やっぱり才能ってあるんだなあって思うよね。
理屈で書いたっておもしろくないからね。


ほぼ日テレビガイド
〜女子の部〜



ナカバヤシ
女子部、集合!!

モギコ
参上!

ゆーないと
ゆーーーーないっ!!!

ナカバヤシ
先日打ち合わせしたとおり、
各自集めた情報を披露し合いましょう!

モギコ
承知承知!! まずはあたしから。
西本願寺に移った新選組ですが、
じつはあの集会場は姫路のお寺に
移築されていて、ロケもそこで行った模様。
どことどこがロケで、
どこがスタジオ撮影だ、
なんていうことに注目して観るのもいいかも!

ナカバヤシ
サンクス!

ゆーないと
サンクス!

モギコ
ウエルカム!

ゆーないと
続いて、あっしから!
スタジオパークに土方役の山本さんが
出演されていたのですが、そこで
「今後、何週かは、土方が
 ほんとうにイヤなやつになるかもしれない」
とコメントされていたそうです。
今週はわりとふつうの人だったので、
来週はちょっと覚悟したほうがいいのかも。

ナカバヤシ
サンクス!

モギコ
サンクス!

ゆーないと
ウエルカム!

ナカバヤシ
それでは最後に私から。
トヨタのノアのCMに、
左之助とまさちゃんが
ペアでなかよく出演してます!

モギコ
みんな知っとるわ!

ゆーないと
メールも山ほど届いてたわ!

ナカバヤシ
ウエルカム!
気を取り直して、今回、観たなかで、
「これ、次回以降につながる
 伏線なんじゃないの?」
と思えるところを挙げていきましょう!

モギコ
左之助が破った掛け軸!

ふたり
あるあるあるある!
きっとなんかある!

ゆーないと
周平をいじめる若い隊士と、
じっと耐える周平!

ふたり
あるあるあるある!
きっとなんかある!

ナカバヤシ
組長に任命されたものの、
イマイチ大役になじめなくて悩む源さん!

ふたり
‥‥‥‥。

ナカバヤシ
‥‥おや? どうしました?

ふたり
そんな伏線は活きなくていい!

ナカバヤシ
そりゃ私もそう思う!


さんにん
源さん、どうぞ、そのままで!


ほぼ日テレビガイド
〜美術部〜

2004-09-17-FRI

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