ARAI&YONEMITSU
夢中になりたい!
広島・東京・世界

第16回 『茶の本』

よ: 今回お勧めは、岡倉天心著・桶谷秀昭訳「茶の本」
講談社学術文庫。
とはいえ、まだ私も第六章を読んでいる最中。
しかし、溺れるようにして読んでます。
本自体、228ページの薄い本で、しかも半分は英文なので、
いま読んでいるのもまだ76ページなのですが、
一行読んでは、おおお! と叫んだり、うむむ〜と唸ったり
にやにや笑ったりしながら読んでいるので、
もうすでに360ページぐらい読んだ気になっています。
ア: なんで? なんでいきなり『茶の本』なの?
よ: 今作ってるゲームの参考のためだったのだけど、
そのようなことはどうでもよろしい。
うだうだ説明するより、引用したほうが伝わると思うので、
最初の部分を。

茶のはじまりは薬用であり、のちに飲料となった。
中国では、八世紀になって、
茶は洗練された娯楽の一つとして、詩の領域に入った。
十五世紀になると、日本で、審美主義の宗教である
茶道に昴められた。
茶道は、日常生活のむさくるしい諸事実の中にある美を
崇拝することを根底とする儀式である。(P.13)


最初の一文だけ引用しようと思ったら止まらなくなったよ。
この何だかぎゅうぎゅうに凝縮された感じ、
削いで削いで削いで作られた感じの文章に、
ほれぼれしちゃったのです。
このすぐ後にも、さらに茶の哲学が、
それは精神の幾何学である、宇宙にたいする
われわれの比例感覚を定義するが故に。(P.14)


あああ、しびれるねぇ、しびれない? 
埴谷雄高にしびれちゃう感じに似てるかも。
だが、しかし、それだけじゃなくて、
第1章の後半になると、突如、饒舌になって、
「無始」の大いなる始めの「霊」と「物」との死闘が
描写されちゃって、あらら? 
愛の二元論とか、宇宙を流転する二個の魂とか、
盛り上げる盛り上げる。
幻魔大戦か? 茶の話じゃなかったのか? 
超絶宇宙バトルが、どう茶に結びつくのか?
と思ってると、その間に、一服のお茶を
すすろうではないか。(P.24)


って、そーきますかっ! 惚れたよぉ〜、天心!
ア: コーフンしてるなあ。
これがかにかまに冷たいよねみつさんであろうか? 
同一人物とは思えませんな。
買ってきました。たぶん初めて読みました。
岡倉天心、フェノロサ、『茶の本』と、
データとして知ってるだけで一生を終えるとこでした。
あぶないあぶない。
そーね、いまんとこ(P.24まで読んだ)シビレタのはねー、

もしもわが国が文明国となるために、
身の毛もよだつ戦争の光栄の
拠らなければならないとしたら、
われわれは喜んで野蛮人でいよう。
われわれの技芸と理想にふさわしい尊敬がはらわれる時まで
喜んで待とう(P.16)


待てばよかったんだよねー、日本はさ。
しかし、なんか無性に引用したくなっちゃう文章だねえ。
よ: 全編、諦めている感じが底にあるんだけど、
でも、どうしょうもなくハイテンションに
なっていくところとか、読んでいてこちらも
興奮してきます。
文章の波の高さが極端に変わるところ、
天心ワンマンライブで3000万の観衆に
語っているような感じがします。
ア: 起伏が激しいの。理路整然と説いてるかと思うと、
いきなり興奮して「おお茶よ!」って感じでほめたたえる。
あ、これすごくかっこいいや。
引用させてね、2章の締めの最終行です。

茶道は変装した道教であった。(P.35)

原文は

Teaism was Taoism in disguise.(P.197)

おお、頭韻が美しいねえ。
なんつーか、全体に詩っぽいよね。
『失楽園』とかに近い気がする。
ちゃんと読んだことないけどね。
よ: わたしは、ひきつづき岡倉天心の『東洋の理想』
を読むことにします。じゃ。
ア: あいや待たれよ! まだ終わっちゃだめでしょう。
わたしゃ今日やっと4章まで読了しました。
勝手に終わるの反対!
よ: 『東洋の理想』もおもしろいなぁ、あぁ。
ア: ふう。本日昼休み、本文読了いたしました。
でも、繰り返し読まなきゃわかんない本だね、きっと。
その都度心にひびく場所が違ってきそう。箴言の嵐だもん。

変化こそ唯一の永遠なるものである。(P.85)

うきーっかっこいい!(ってこんな反応ばっか、
わたし、頭わるそうですな)『東洋の理想』も
こんな感じですかい? もう読み終わりました?
よねみつさん?……ねえってば!
●『茶の本』データ
講談社学術文庫 
岡倉天心 桶谷秀昭訳 英文収録 
228ページ760円+税
ISBN 4-06-159138-X

茶の哲学からはじまり、利休の死の描写で終わる
茶の真髄を綴った名著。
別に茶に興味がなくても面白い。
「茶」の文字を自分が興味ある言葉に置き換えて読めばOK
●次号予告
ア: つぎはねー。オススメの本屋さん!
よ: 本屋さん?
ア: とりあえず、ヴィレッジヴァンガードを
オススメしておこうと思います。
よ: あいあーい。
  To Be Continued

1999-07-03-SAT

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