ARAI&YONEMITSU
夢中になりたい!
広島・東京・世界

第3回 『1999年の夏休み』

よ: 今回のネタは「1999年の夏休み」。
金子修介監督の作品です。
どーですか、独特な作品なんで、
好き嫌いがはっきりわかれちゃうと思うんですが 。
ア: ……はあ〜。
よ: どうしたよ?
ア: 若いって美しいわあ、そして切ないものねえ。
よ: 気づくのが20年遅かったようだな。
ア: そーゆーつっこみは今後禁止。
よ: オンナ6人で海へ行って、
高校生にナンパされまくったって?
ア: うしろからね。
「あ、ギャルがいっぱいいる〜」と騒がれて緊張したが、
前に回って顔見て「あ、じゃ〜ね〜」だと。
ざけんな、伊豆の男子ども
よ: まぁ老人の茶のみ話は置いておくとして。
ア: おだまりなさい。頭かち割りますわよ。
よ: で、どうでしたか?
ア: よかった〜。『鉄道員』を読んでも、
『ディープインパクト』を観ても
全然泣けないわたくしですが、
じーんとしちゃった。
よ: ほう。
ア: 特に花火のシーン。
この世に生を享けることだって
ほんとうに奇跡のようなことでしょう?
そのなかでも10代のある時期に訪れる
透明で残酷な心持ちのかけがえのなさ、刹那の美しさ、
そんなガラスの破片のようにきらきらしい時間が、
湖上の花火のシーンに昇華していて……。
よ: ヘンな薬でも飲んでんのか、あんた。
ア: 君が勧めた作品に酔いしれている者に水をさすかね、君は?
よ: そうではない。
が、やはり人によって見かたというものは違うものだな、
ってね。
ア: というと?
よ: あの映画に描かれているのが
10代のある時期に訪れる心持ちとすれば、
おいらには10代はないっす。
ア: あ?
よ: 10代のころは、世界に対する違和感があって、
あんなに純粋な感じじゃなかったなー。 美しくもない。
ア: じゃぁ、どう観てるの? 違和感とやらを説明してほしい。
よ: 自分の肉体と魂と世界のズレ。
オレがいるべきところは、ここじゃない、 という違和感。
1999は、少女が少年を演じていることも、
声を吹きかえていることも、
舞台が限定されて奇妙な装置やオブジェがあることも、
すべて世界に対する違和を強調しているような気がして。
その違和を解消するために、生まれ変わって。
ひとつの世界が閉じた幾何学的な美しさを取り戻すために、
少年のままで転生を繰り返す。
ア: へーえなんとナイーブな。
たしかに、世界は閉じている……うん、
お話もメビウスの輪みたいな構造になってるもんね。
終末感も感じない?
登場人物たちの世界だけが残されていて、
もう外の世界は終わってるの。そういう意味で1999。
よ: 舞台のような世界。
ア: 実際にローティーンのころは、
「10代」とかいう切り取りかたをしたとたんに
「虚構」っぽいっつうか、よその国のお話みたく思えてた。
「かけがえない」と思うのはきっと、
10代を勝手に「理想化」してたからなのね。
「自分とは関係のない物語」として諦めてたのかも知れない。
よ: よくわからん。
ア: 1999を観てると、そういう痛いような感覚が蘇ってきて
切ない……だってあまりにも美しいです、
奇跡のような手付きで10代のエッセンスを結晶させてる。
よ: そう?
ア: とにかくこの映画はよねみつさん的な見方も
アライ的な見方も包み込んだ上で 、
乱反射させるような「詩情」があるよね。
よ: まとめよーとしてるな。
ア: う。そんなつもりはないのだが、
まとめ癖は編集者の病気、ごかんべんくだされ。
よ: まぁ、あれこれ語るのも、
もったいない気がするくらい好きな作品なんで、
まとめてくれてありがとーということで。
ア: あれこれ語るのももったいないだと!? 
そりゃあんまりなおっしゃりよう。
よ: 幸い、パルコ調布キネマで、
8月15日からレイトショーで再映されるので、
見てください、と。
もうちょっとましな紹介の仕方もあるだろーと思うんだが、
どーもこの作品に対しては冷静になれないな、ちぇっ。
次のネタは、なんでしょーか?
ア: せっかく
『ノストラダムスの謎をインターネットが解いた!』を
買ってきたのにな。ま、いーや。次いこ。

●『1999年の夏休み』データ
1999年の夏休み 金子修介監督。岸田理生脚本。
原案は萩尾望都「トーマの心臓」。
キャスト、深津絵里、大寳智子、
中野みゆき、宮島依里。
詳細は、
「こどものもうそう」
「1999年夏休み計画」を見てくれ。
(よねみつ記)

●再映データ:パルコ調布キネマ
LATE SHOW *毎週水曜日は¥1000
8/15(土曜)〜21(金曜)
「 1999年の夏休み」
20:30〜(終了22:10) ¥1300

●次号予告
よ: 次のネタは、どうしましょ?
ア: 『赤毛のアン』!
よ: ええと、アン?
ア: イエッサ。
モンゴメリの不朽の名作をぜひぜひ読んで欲しいのだ。
それで公開中の『アンの青春完全版』を観に行く、
完璧じゃん。
よ: 完全版? アン?
ア: そうである。読んでおくよーに。
よ: あんあん。
  To Be Continued

1998-08-19-WED

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