HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
 
お直しとか
 
横尾香央留

 
 
 第46回 《 いろんなかたち 》

“女性が一生独身で生きて行くにはいくら必要か”
検索サイトの特集ページが目に止まり
恐いもの見たさで覗き見し 愕然とする。
“そのためには年収◯◯円以上は欲しいところ”
“その額稼げる仕事はこちら”
という言葉にのせられ
転職サイトのページをクリックしたら
自分には到底できないような仕事ばかりで
あーどうしよう… なんて落ち込んだ。
という話を友人にしたところ
「なにをいまさら安定なんか求めてるの?!」
と笑いながら 肩を大きくゆすられた。

この歳になると 不安になったり
守りに入りたくなりそうなものだが
マナミさんは 思い切った行動に出る。
そもそも 大手旅行会社のOLを
30歳を前に突然辞めて
写真学校に入り直し アシスタントを経て独立。
やっと少しずつ仕事がはいってきたこの時期に
自分に自信をつけるためにと
イギリスへの短期語学留学を決めたのだ。

もしかしたら この間に仕事が来るかもしれない。
3ヶ月とはいえ 大事な時期のブランクは
後々まで響くかもしれない。
若かったら えいっ!と突っ走れることも
様々な葛藤があり 慎重になり
決断までにずいぶん時間がかかっていたが
“いかなかったら後悔するから”
最終的にはシンプルにそう決めていた。

マナミさんの師匠が撮ってくれていた
ヒモ状の編み地サンプルの写真を
マナミさんは気に入っていた。
一本の中に 編み方をいくつか試し
色も途中で変えていた。
環境をがらりと変えてきた
マナミさんのようなこの編み地を
留学のお守りがわりに ブレスレットに仕立てよう。
この先 いろんなことが まだまだたくさんある。
たのしいことも つらいことも 後悔もするかもしれない。
でも最終的にその方がおもしろい形に きっとなる。

 
 
2012-09-03-MON
 
 
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写真:ホンマタカシ
デザイン:中村至男