横尾さんのインターネット。
横尾忠則さんが、横尾忠則さんを解説するって?

「芸術と芸術家」の部屋
もし吐き出すものがなくなったら
ぼくは芸術家をやめますよ。


東京都現代美術館で開かれている展覧会
横尾忠則さんの「森羅万象」は、
いよいよ10月27日(日)まで!
おお、なんとあと1週間ちょっとではないですか!
まだ行っていない方も、
もういちど行こうと思っている方も、
急いでく・だ・さ・い・ね〜!
今日は、超オススメの
「芸術と芸術家」の部屋を訪れます。



横尾 ここの部屋は、モチーフがすべて
“アート”なんですよ。
「芸術と芸術家」の部屋、
「アート・バイ・アート」っていうんです。
糸井 はっはぁ、なるほど。
ほかの芸術家が描いたアートを、
ひとつの景色として使った、
というわけですね。
横尾 そうそうそうそう。
糸井 これはえっと、
いわゆる「パロディ」ではないんですよね?
横尾 パロディみたいな絵もありますよ。
例えばこれは、ルソーのパロディ。



ルソーの絵とそっくりなんだけど、
もとの絵とはどこかが違うのよ。
この絵は、女の人が
腕輪で首を吊ってる。
糸井 わ! こんなの、ルソーだったら
ありえませんよねぇ(笑)。
横尾 ほかにも、
自分の頭をボールみたいに持っている人がいたり、
スカートめくりすぎてこんなになっちゃった、
とかいう子がいたりさ(笑)。
色は違うけど、構図はもとのまんまでしょ?
糸井 これは、横尾さんがルソーを好きだから
描いたんですよね。
横尾 うん、そうだよ。
サインは「アンリ・ヨコオ」って
描いてあるでしょ。
糸井 Henri Yokoo・・・。
横尾 アンリ・ルソーのサインと
おんなじ描きかたなんです。
この絵も、もとはルソーなんだけどね、
ライオンが人を食べちゃったふうにしたの。



骨だけが残ってるの。
糸井 ほんとだ。
横尾 そしてこんどは、
襲うところを頭のほうから
描きたくなっちゃってね。
糸井 わあ、これか!

横尾 こういうかんじで襲ったんじゃないかと。
糸井 マンドリン、飛んじゃってますよ(笑)。
横尾 グフフフ。
糸井 ハハハハハ。
この一連のものは、
『漫画少年』に出てても
おかしくないような雰囲気ですね。

『漫画少年』は、昭和23年に創刊された
人気雑誌。手塚治虫をはじめ人気作家の連載や、
読者投稿に対して大きく門戸を開いていたことで
有名。この投稿からたくさんの有名作家が
生まれている。横尾忠則も、藤子不二雄も、
赤塚不二夫も和田誠も筒井康隆も、
この投稿欄の常連なのでした。
横尾 うん、うん。
襲われている後ろ側から見た絵があって、
横側から見た絵があって。
まるで3コママンガみたいだね。
糸井 これはもう、遊びですね。
横尾 まあ、遊びですよね。
糸井 ニセのほうを
特化して見せている。
はぁぁ、これも、
おもしろいですね。

横尾 ここには、ルソーやキリコの顔がならんでるよ。
ピカビアもいるし。
あー。・・・これは何だっけ?
ええと、この文字はなんだったっけな?
糸井 91Rって描いてある?
横尾 あ、PIR、RIPだよ!
んー、何の略だったけ?
そうだそうだ、レスト・イン・ピース。
糸井 なるほど。
安らかに眠れ、ですね。
横尾さんのなかでは、
絵を描く人びとに対する共感が
とても高いんですね。
横尾 そうだね。
糸井 自分の知っている人たちに対して、
何かを思うことが
横尾さんには、多いんでしょうか。
横尾 うん。
糸井 その人を描くことによって
成仏させる、ということを
考えたりしますか?
横尾 成仏ってなに?
糸井 ええと、横尾さんは絵のなかに
いろんな死者を、よく出しますよね。
横尾 うん。ああ、そういうことか。
そうだね。
うーん、ま、あの、
成仏してない霊っていうのは多いんですよ。
糸井 ええ。
横尾 そういう霊に対する鎮魂の気持ちで
描くことはありますよ。
とくに同級生の連中とかさ。
糸井 ああ、そういう絵もありますよね。

亡くなった同級生の顔が描かれている絵は、
この先1Fの「死」の部屋にたくさん
出てきますよ。
糸井 この絵は滝だらけですね。

横尾 フフフ。
これは、ベラスケスのね、
あの有名な、
ラスベガスじゃなくて、
ダースべーダーじゃなくて、
なんだっけ(笑)?

プラド美術館所蔵、ベラスケスの
「ラス・メニーナス」をもとにした
作品です。
糸井 これはなんですか?
ジーザス・クライスト。

横尾 真ん中にいるのが、アーチストなの。
ま、ぼくでもいいんだけど、
アーティストっていうのは、殉教者みたいなもんですよ。
イーゼルに描かれている文字は
みんなぼくの作品の題名なんだよ。
糸井 ほおお。
横尾 で、ここに並んでるのは。
糸井 テニスボール・・・。
横尾 うちのカミさん、テニスやってるの。
テニスボールがカミさんで、
はりつけになっているのがぼく。
糸井 大きくいえば夫婦で合作、ですね。
横尾 カミさんがテニスで
楽しくやってるあいだにねぇ。
糸井 自分はこうだ、と(笑)。
芸術家って、
しかたなく続けていくしかないような
職業なんですか?
横尾 いや、ぼくはそう思わないね。
糸井 やめてもいいんですか?
横尾 やめてもいいんじゃないかな。
糸井 横尾さんは、続きますよね?
こんなにも。
横尾 ぼくは、やめるよ。
「もうこれ以上吐き出せるものがない」とか、
「描く必然性がない」と思ったときにはね。
糸井 そうなんですか。
そういう予感は
まだないんですか?
横尾 少しはある、かもわかんないけどね!
糸井 年をとるにつれて欲望がどんどん強くなる
ということは、ないんですね。
横尾 あ、それはないね。
欲望は少しずつ、描くことによって
減らしていく作業だと思うからね。
新たな欲望を探し求めるっていうことはないですね。
糸井 ってことは、自然に、
植物が太ーくなってって、
朽ちていくみたいなことがいいわけですね。
自分の気持ちとしては。
横尾 そうですね。
だから、何か吸収したいという気持ちよりも、
もうすでに吸収したものを、
どれだけ吐き出すかっていう、
そういう作業を
ぼくはしているんじゃないかな。
糸井 でもね、「吸収」って、どうしたって
しつづけてしまうものではないですか?
横尾 そっかなぁ?

糸井 ぼくはついつい、吸収しちゃうんですよ(笑)。
横尾 うーん、まあね。
糸井 ええ。息を吸ったって、
なんか吸収してますからね。
横尾 うん、それはそうだね。
行為を起すことじたいが、
次のことにつながっていくよね。
だけれども、それを
自分が取り込まなきゃいいわけだな。
なんというか、通りすぎていくのがいいんだ、
と思うんだよ。

テニスボールの上にはりつけられたジーザスが印象的な
「芸術と芸術家」の部屋でした。
次はお待ちかね! 滝がいっぱい出てきますよ〜。
おたのしみに!!!

2002-10-18-FRI


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