矢沢永吉の開けた新しいドア。
「ほぼ日」特別インタビュー2003。

第13回 矢沢は、ぜんぶ食わない

矢沢 あとで気づくんだけど、よく、
「なんで、あれをやったんだろう?」
っていうことを、やったりするんですよ。

それをやったことで、
その後が保たれるようなことを、
その時々に、無性にやりたくなったりする。
糸井 動物みたいなもんなんですかねぇ。
矢沢 わからないけど、
今までぜんぶ、そうだもん。
必ず、やるのよ。
で、やったことによって、世界が広がるの。

たとえば、後楽園球場、
あそこのコンサートが終わった後に……。
あれは、矢沢の当時のピークだったよね?
糸井 そう。
矢沢 もう、それこそピークでしたよ。
ピークの時なのに、
つまんなくてつまんなくてつまんなくて、
不安で不安で不安でしょうがない矢沢が、
まちがいなく、そこにいるんだもん。

だって、5万人が総立ちして、ピークよ。
それで、なんで、オレが、
こんなに寂しい思いをするんだろう?
なんでこんなに切ないんだろう?
つまんないんだろう?
糸井 うん。
矢沢 それで、
20年前、アメリカに行くじゃない?
(※単身渡米。音楽活動の場をアメリカに移した)

で、どう考えても
あの時、ぼくがアメリカに行かなかったら、
今の自分は、絶対いないわけで。
糸井 ふつう、当時はじめての
あんな大規模なコンサートの成功だから、
維持しようとしちゃうだろうね、もっとね。
矢沢 したと思う。
でも、維持したあとに、絶対終わってる。
糸井 維持しようとしたら終わるんだよね。
矢沢 終わる。
その時、矢沢っておもしろい。
バーンと捨てちゃう。
捨てて、もう向こうに行っちゃうんだ。

とにかく、日本を離れたい、
ってことで、ボンと行っちゃうわけだから。
ぜんぶ、そういうことのくりかえしだもんね。

自分の過去をふりかえって、
おもしろいなぁ、って思うのは、
矢沢は、絶対に「ぜんぶ食べない」の。
糸井 おぉー!
矢沢 たとえば、
『時間よ止まれ』が、大ヒットしたよね。

バーンとヒットした時には、
テレビの出演依頼から何からって、
もう、ウワーッて来るわけ……。
でも、その時には、テレビ出ないじゃない?

今まで、
どのアーティストを見ても、
どの歌手を見ても、
ピークっていうのは、最大限使うわけ。

でもオレは、
本能が作用するのかなんか知らないけど、
バーンといってる時には、やらないの。
もう、引いちゃう自分がいる。

テレビだろうが、取材だろうが、
もうブレーキをかけて。

誰かに言われたわけじゃないんだけど、
「それ以上行っちゃいけない」
って感じる自分が、なんか、そこにいるのよ。
糸井 インディアンが狩りをする時に、
「取りつくしちゃいけない」
って言うじゃない?
矢沢 そうそうそうそう。
網でごっそり取っちゃうと、
魚がいなくなってしまうというか。
糸井 「全部食わない」か……。
矢沢 うん。

人に聞いたわけでも何でもないのに、
なんかすごく本能的に、やるんだよね。

「ボカーン!」って評価されたら、
「あ、ぼく、もういいです、ぼく、もういいです」
ブワーッとブレーキかけてるの、いつも。
糸井 それは、経営哲学じゃなくて、
もう、カンだよね。
矢沢 でも、それは過去、全部そうしてきたよ。
振りかえると、みんなそうなのよ。必ず止めてる。
だからおもしろいなぁ。
常にこう……何て言うの?
ドーンとは、しないのね。
もういいよ、もうこのぐらいで、って。
糸井 気持ちは、旅行カバン持ってるね。
矢沢 そう。
ずっと、「このぐらいにしとこう」で。
コンサートで、去年ガーッとやったら、
「よし、今年は、20ちょっとでいい」って……。

(つづきます!)

2003-06-24-TUE


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