矢沢永吉の開けた新しいドア。
「ほぼ日」特別インタビュー2003。

第7回 「80歳も、けっこうハジけてるよ」

矢沢 古いとされているものには、
捉え方ひとつで、感じ方ひとつで、
カネが埋まってんのよ。


これ、音楽の話をしてるようだけど、
ノー、ノー、すべてに言えると思う。

ファッションだって、なんだってそうよ。
だから、イトイが老人の話をした時、
「その価値観、はじまってるかもわかんないよ」
って、ぼくは言ったんです。
糸井 そうだね。
矢沢 イトイが今言ったみたいなモノの見方をして、
どの世代でも、みんな、
言いきっちゃうようなワガママさが出てきたら、
ほんとの意味でのおもしろい時代、
日本の新しい時代が来るかもわかんないよ。
糸井 みんなで、横を見ながら
どれが正しいかを、選びあってるうちに
時間が過ぎてくって感じがあるじゃない?

その時に、
「いや、いろいろ選んでも、
 どれでも、大丈夫なんだよ」
っていうような歩き方というか。
矢沢 うん。
まず、10代や20代がいて、
もう、チヤホヤされて、ちょっとやっぱり、
「自分たちは価値があるのかもしれない」
って錯覚をする。それはそれでオーケー。
糸井 オレたちも、小っちゃい時、思ってたよね。
矢沢 うん、思ってた。
糸井 「若さっていいな」(笑)って。
矢沢 うん。

だけど、その流れのどこかで、
「おまえらもイイね、最高!
 ……だけど、しょんべん臭いぞ」
そう言いきるヤツらが、
すこしずつ、出てきはじめて。

その若くないヤツらはそいつらで
「オレたちもけっこう、ハジけてるよ」
みたいなのが出てくる、って言うか。

40歳のヤツも自分たちでやる、
50歳のヤツもそうなる、その上に、
80歳ぐらいの、こんなになったジジイが、
「おまえらには、まだ、わかるまい」
って、けっこうバッチリ
そっちの世界を持てるようになったら、
すごくいいじゃん。理想かもしれないけど。
糸井 おもしろいなぁ、と思うのは、
おじいさんと孫って、仲がいいですよね。
いちばん若いヤツとおじいさんっていうのが、
オレは、くっつくと思ってるんです。

要するに、
「赤ちゃん性」を持ってるっていうか。

世間の、ちょっとした
つまらない知恵みたいなのを、
いっぱい知ってるかどうかなんか、
実は、どうだっていいじゃないですか。

ほんとうに
だいじなことを知ってるっていうのは、
ぜんぶやってきて、飽きちゃった人と、
これからで、何にも知らない人。


そこが、くっつくと思うんです。
だから、若いヤツとじいさん、
つまり、養老院と幼稚園は、
一緒にやるべきだと思うんだよね。
矢沢 それ、おもしろいね。
糸井 また、養老院と幼稚園のヤツらから
学んだ、まんなかあたりの年齢の人が、
「そうか!」と勇気を持って
実業をやればいいと思うんだよね。

だから、永ちゃんのお客さんの中でも、
「何?知らなかった!」
っていうくらい若いヤツが、
おじいさんを呼んでくるんじゃないかなぁ。
矢沢 なるほどね。
今日、なんか、ちょっと、
予想したのと違う話になったね。
糸井 うん。ぜんぜん違う。
『YAZAWA CLASSIC』DVD発売について
いろいろ、取材されている時期なのにねぇ。
矢沢 いや、でも、いい感じよ。
糸井 そう? よかった。
矢沢 うん、いい感じよ、おもしろい。
糸井 「ほぼ日」は、
今日は、プロデューサー矢沢と
話をするっていう日に決めていたからね。
どうしても、こういう話になる。
矢沢 (笑)ハハハ。
糸井 もう、歌手としては
いっぱいしゃべってるからね。
実はその、めんどくさい男じゃないですか、
歌手の矢沢は。
矢沢 (笑)
糸井 それをさ、
「おまえな」って言いくるめてるヤツが、
もうひとり、自分の中にいるわけじゃない?
矢沢 (笑)もうひとり。抑えてるヤツが。
糸井 うん。
抑えたり、もっとやれって言ったり。
プロデューサーのほうが
過激になる時、あるからね。

さっきの、
積み残したトラックでも走る、みたいな、
アコースティックライブの展開は、明らかに、
プロデューサー矢沢の方が、乱暴だよね……。

歌手の方は、
「オレ、イヤだよ!」
って言ったかもしれないよ?
矢沢 ほんとだね。
糸井 そういう話を、今日は
どんどん聞いていきます。

(つづきます!)

2003-06-16-MON


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