矢沢永吉の開けた新しいドア。
「ほぼ日」特別インタビュー2003。

第6回 「これから、もっと失敗するよ」


矢沢 ますますこれから、
メディアがどうのとか、何がどうのって、
惑わされちゃいけないと思う。

自分の足で立って、よく見て、
それでどう会社を進めるかを決める。

会社じゃなくてもいい。
自分はどう生きていくか、どう年を取っていくか、
そういうことは、これから絶対問われるよね。

まわりは、関係ないですよ。
糸井 永ちゃん自身が、
そういう会社のことを
強く意識するようになったのって、
何か、きっかけとかあるの?
……アメリカとか?
矢沢 オーストラリア。
糸井 あぁ、大きいね。
矢沢 (笑)オレも、正直だけど。

やっぱり、オレにとって、
オーストラリアっていうのは、
人生の大ターニング・ポイントだから。
糸井 金額では言えないものだけど、
永ちゃん、モトを取ろうとしてるよね。
矢沢 うん、気持ちでね(笑)。
ま、それはジョークだけど。

まあ、自分も熟して、
だんだんやってる時に、
自分もいろいろ、世の中を感じるでしょ?

そんな時に、リーダーシップを
取れる人がいなくなっちゃった。
それをしたのは、他ならぬ会社自体なのよ。

それで、そのテレビを見てた時、
「あ、なるほどな。
 これは一見、カンタンに言ってるけど、
 今の日本の社会全体のことを言ってるな」

って思った。

だから、根拠もないのに若い人がいいって、
そんなバカなこと言うなっていうの。

さっきイトイが言った、
「80歳以下は信じるな」
ってことも、ひとつの話としてね、
それ的な価値観は、
もう、はじまってるかもわかんないって、
ぼくは思うよ。
糸井 うん、いい感じで、
「そんな些細なことは気にしないで」
って見えるようになっちゃった人の発言って、
若いヤツより過激だからね。

たとえば、高校生の時だったら、
振られたばっかりのともだちがいても、
一緒になって、同情しちゃうじゃないですか。

だけど、30歳や40歳になってから、
好きだった人に振られたって話を聞くと、

「そうか。
 これから、何回も振られるよ。
 あと、100回ぐらい、振られるよ」


そう言えるじゃない。
その「目」が要るんだよね。
矢沢 うん。
その目がなくして、なぜあなた、
集まってる集団の会社を、食わしていける?
食わしていけるわけがない。
糸井 「これからも、もっとまだ
 でっかい失敗をしていくよ」

そう言ってくれる人が、いるかいないかで、
その場所の、何かが、変わるよね。
矢沢 うん。
糸井 酸いも甘いも噛み分けたみたいな……。
さっきの話、
永ちゃんの中で、シナトラが生きたんだ。
矢沢 ぼくは、実はフランク・シナトラの
エイジじゃないんだよね。
糸井 ぜんぜん、違うよね。
矢沢 エルビス・プレスリーでもなきゃ、
シナトラでもない。
ぼくはもう、れっきとしたビートルズなんです。
糸井 ビートルズだね、うん。
矢沢 シナトラたち、知らなかったの。

知らないから、ビートルズにハマって、
その後はクラプトンだなんだっていって。

わかりやすく言うと、
クラプトンの『アンプラグド』を見て、
語って、感じて、だから俺たちロックなんだよ、
みたいになってしまう。

そうすると、オレとしてはイヤで……。
糸井 それじゃ、生徒だよね。
矢沢 そう。
「なんか、新しいもんないか?」なんですよ。

「なんでこいつら、ロックと言ってるヤツは、
 寄ってたかって、ジーンズはいてから、
 みんなで同じようなことばかりやってんだ?」

それで探して、古いとされているものを見たい。
そういうのだったんだけど。
糸井 みんなが川で水を汲んでる時に、
泉まで行ってみたくなったって感じだよね。
矢沢 そう。
フランク・シナトラ、
ぼくはファンでも何でもないから、余計、
「かっちょいい!このおじさん!」と思ったよ。
糸井 クールに見られるわけだ。
矢沢 やっぱり、ニューヨークのショーをやってたのよ。
タキシードを、カーッと着てさ。
糸井 小っちゃい男なんだよね。
矢沢 うん。
それで、タバコをパカーッて吹かして。

格好いいの。

「なによこれ!」と思った。
エリック・クラプトン、もう問題にならない。

(つづきます!)

2003-06-13-FRI


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