矢沢永吉の開けた新しいドア。
「ほぼ日」特別インタビュー2003。

第4回 80歳以下の人間を信じるな?


糸井 永ちゃんがシナトラに感心したように、
実はオレも、老人の取材とかばっかりしてるの。
矢沢 へぇー。
糸井 今度9月にたぶん講演をやるんだけど、
老人ばかりを5人集めて、
「ドント・トラスト・アンダー・エイティ」
っていうのを、やろうと思ってるの。
「80歳以下の人間は信じるな」と。
矢沢 (笑)オレ、そういう考え方は、
これから、モノを言ってくると思うよ……。

ちょっと、話は逸れるかもしれないけど、
よく、思うことがあるんだ。

なんで、日本の中年のおじさんって
かっこわるい?

なんか、かっこわるいんだよ。

ある人に聞いたら、
日本人の男も女も「若い子は好きだ」と。
これはカルチャーなのか、国民性なのか、
とにかく、なんか、そういうのが、あってさ。
糸井 「初モノ好き」とかね。
矢沢 若い女の子とセックスしたいとか、
つきあいたいとか……そりゃ、わかるけど。
糸井 うん、動物としてはね。
矢沢 うん。
動物的な部分は、それはそれでいいじゃん。

……だけど、
動物的な部分にプラスして、
われわれは、考えたり、感情があったり、
メモリーがあったりするわけだ。

そしたら、
「どうしても、もう離れられないモノ」
「切なすぎて、たまんねぇよってモノ」
とか、そういうのが、絶対にあるよね。
その魅力が、なぜ、日本にはないのか。

テレビ番組を見ても、
雑誌の記事見ても、何見ても、
「もう、若さは、いいんじゃないか?」と。

若い子は、若い子で、やりゃあいいじゃない。

ビジネスになって儲かるから、
あんなもん、雑誌なんて作るんだろうし、
テレビも、若さについての番組を、
ボンボンボンボン垂れ流していくかもしれない。

でも、それは、まあ、いいのよ。
それは勝手に、そっちの方でやってよ。

だけど、その一方で、どこかのところで、
今の「80歳以下は信じるな」じゃないけど、

「言いたいことを、はっきり言いきるよ」

「ちょっとオレは、格好つけきるよ」

「最後まで走りきるよ」

そういうヤツらが、
何人か、ジワジワと出てくるわけ。


ロンドンのティー・サロンなんか行くと、
会員制で、子どもなんか、入れない。

おじさんたちがワイワイ集まって、
昼間っから、ティーを飲んでるわけよ。
ふつうの人は入ってこれない。

日本の「会員制」って言うと、
またちょっと、違うじゃない?
糸井 違うね。
日本の会員制は、
成金度に合わせてるから。
矢沢 そういう
成金度に合わせてじゃなくて、
ほんとに、そんな金も高くなくって、
そういうところの……気持ちの部分でさ、
「キミたち、大きくなったら来て。
 おじさん、ちゃんと抱いてあげるから」
っていうような……わかるかなぁ?
糸井 (笑)わかる。
矢沢 「もうちょっと
 格好いいプライドが身についたら、
 おじさんのところに来て。
 ちゃんとやってあげるから」
ということを、ふつうに言うおじさんが
バンバン出てくるとか。

そういうのが、
ちょっとずつ出て来てもいいんじゃないの?
糸井 いや、出てくると思うんだよ。
矢沢 いっぺんで全員がそこに行けなくても、
ちょっとそういうことを
言い切っちゃう、やり切っちゃう。
そういうおじさん、アリかもしれないよ。
糸井 永ちゃんがシナトラのように、
「あれはもう古いよ」って言われたものを聴いて、
あれは実は古くなかったと気づくだとか、
オレも年寄りだとかに興味を持っていたりとか……。

いつも、永ちゃんとたまに会うと、
別の道で、おんなじようなことを考えてるじゃない?
そういうことが、気になって気になって。
矢沢 もう実は、はじまってる。
他に、出しつくしちゃった後に何ができるか。

ファッションなんか見てよ。
裾が広がっているズボンは、昔は、
「ラッパ」「パンタロン」って言ったもんよ。
あれ、オレが中学校のころから、
少なくとも、4回はその時代が来たと思う。
でも、そのたびに名前がぜんぶ違うんだよ。
デザインは一緒なの。

だったら、おもしろさが
出て、出て、出尽くした時に、
「古い」とされている、
その「古い」って何なんだ?
糸井 そう。
古いか、新しいかの、問題じゃないんだよ。
矢沢 うん。
たまたま、
時間は通り過ぎていくもので、
既にあったものを、
後ろに行かせなきゃいけない。
だから、便宜上、
「古い」って言ってるだけで。

どっちがいいとか、そんなはずはない。

「古い」「新しい」というのは、
誰が決めたんだよ、っていう話だよね。

(つづきます!)

2003-06-11-WED


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