「やさしくないタオル」のつくりかた。

その7 直射日光は、あんがいダメージ

同じように長く使っているのに、
やけにへたっている弥絵のタオルと、
経年変化はあるものの、うつくしい、モギのタオル。
ふたりの違いはなんなんでしょう。
洗濯方法を聞いてみました。

まずは、弥絵
「わたしは、1回使ったら、すぐ洗います。
 乾かして何度か使うということはなくて、
 そのまま洗濯をするという感じですね。
 ですから朝・晩で、1日に2枚バスタオルを使い、
 洗濯は1回でまとめてします。
 洗剤は、蛍光増白剤が入っていないもの。
 柔軟剤は使いません。
 干すときは、天日干し。
 南向きのベランダで、お日さまに当ててます。
 乾燥機は使いませーん」

なるほど。
いっぽう、モギはというと。

「わたしも、1日に2枚バスタオルを使って、
 1回使ったら、すぐに洗濯してしまう派。
 使っているのは、
 蛍光増白剤のはいっていない洗剤。
 柔軟剤は使ってないよー。
 干すときは、乾燥機は使わずに、
 風通しのいいベランダで、陰干し!」

洗濯方法は同じだ。
違いがあったのは、乾かしかた、ですね。
「天日干し」と「陰干し」の違いです。
もうちょっと詳しく聞いてみましょう。

弥絵は言います。
「干しかたですか?
 脱水がおわったらそのまま、
 洗濯ばさみで2箇所とめて、おしまい。
 乾いたら、とりこんで、畳みますよ」

モギによれば。
「わたしは、脱水が終わったら、
 かるく広げてしわをのばして、
 パイル面を外側に二つ折りにして、
 ヘムの箇所を洗濯バサミでとめてます。
 畳むとき、パイル面に
 飛びだしている糸があるときには、ハサミで切ります。
 さいごに、キレイに折り畳んで
 他のタオルと重ねて収納してますー。
 そうすると、ナチュラルなプレスが
 できる気がする」

なるほどなるほど。弥絵の方は、
あんまり細かいことは気にしない派のようです。
タオルへの愛は大きくとも、
日々の生活の友として、
わりと「ラフに」扱っているわけですね。
これに対して、モギの方は、ずいぶんデリケート。
タオルの扱いに細やかな気配りをしています。
聞けば、基本的に洗濯が大好きで、
洗濯機もけっこう慎重に選んだそう。
いっぽう弥絵は、洗濯にも洗濯機にも
まったく興味がないそうで、
「洗濯機は、ためたポイントで交換した、
 いっちばん安いの」を使っているらしい。
いや、洗濯機のせいじゃないですよ、
洗濯に対する姿勢の話です。

さて、この、一見「やさしくないタオル」に
なってしまった弥絵のタオルは、もう
「やさしいタオル」(見た目)には
もどらないのでしょうか。
大窪さん、どうですか?

「戻りますよ」

おお、戻る! その方法は?

「いちばんいいのは、
 乾燥機で乾かすことでしょうね」

乾燥機?
それは、洗濯機の乾燥機能でいいんでしょうか。

「もちろん大丈夫です。
 乾燥機を使うと、空気を入れながら回転させて、
 てきどな打撃をくわえ、
 パイル面の糸を動かしながら、
 毛を起こしてあげることができます。
 つまり、よじれて沈んだループを
 ほぐしてあげるわけですね」

理屈から言うと、強い日差しのところで
洗濯じわがついたまま干すと、 
そのシワがそのまま残ってしまいます。
やさしいタオルで陰干しを推奨しているのは、
日陰で干すことで、水分が徐々に抜けていって、
シワが残りにくくなるからなんですね。

「だから、自宅に乾燥機がない人は、
 風の通るところで陰干しをするというのが
 いいと思いますよ」

<イラスト:乾燥機にまわるふんわりタオル>

それでは、実際に試してみましょう。
ゴワゴワになった弥絵のタオルを、
「やさしいタオル」に戻すべく!

行った実験は、
ごく一般的な家庭用ドラム式洗濯乾燥機で
洗濯し、乾燥するというシンプルなものです。
簡単簡単。
ドラム式を持っているシェフが持ち帰り、
翌日、洗濯乾燥をした弥絵のタオルを
持ってきました。

すると、どうでしょう!
パイル面がしわくちゃで、
ペタンコになってしまっている
弥絵製「やさしくないタオル」が、
見事なまでに、ふわふわ感を取り戻し、
シワの消えたタオルになっているのです。


洗濯じわがキレイになくなりました。


パイルの目がきれいに整って、
ひとつひとつがふっくら立ち上がっているのがわかります。

乾燥機ってすごいなぁ。
大窪さんが言うとおり、
よじれて沈んでいたパイルが
ほぐされて、起き上がって、
ふわふわ感ある状態にもどってる。
チーム一同、手でパイル面に触れながら、
「えーっ、それだけで、
 こんなに変わるんですかー。
 ぜ、ぜんぜん、ちがうっ。
 ふつうのやさしいタオルに戻っているっ」
と、びっくりでした。
長年使って、洗いつづけ、
抜けてしまった綿蝋の油分は、
元に戻るわけではありませんが、
「硬くなっちゃったなぁ」と感じたら、
いちど、乾燥機にかけてみるという方法、
ぜひおためしください。


その3

洗濯が終わったらしわしわのままで
直射日光のあたるところに干す。
そうすると、パイルがぺちゃんこで
ゴワゴワの「やさしくないタオル」ができあがる。

そうしたくなければ、乾燥機を使うか。
ていねいにしわをのばして
風通しのよい場所に陰干ししよう。

ということで、みじかい連載でしたが、
「やさしくないタオル」、これにて終了でございます。
結論を、まとめておきましょう。


■「やさしくないタオル」のつくりかた。まとめ

洗うときは洗剤の量が多すぎたり、
 少なすぎたりといいかげんに
あまりすすがずに
柔軟剤もたっぷり使い
干すときは、しわなんかのばさずに
のびたパイルもそのままで
直射日光に当てつづけ
しまうときは、中途半端に湿ったままで
湿気の多い場所をえらんで
もいちど体をふいて、重ねちゃえ!

そんなふうに使い続けると、
みごとな「やさしくないタオル」ができあがります。
くさくて、水を吸わなくて、ゴワゴワのタオルが。

‥‥お試ししないことを、おすすめします!

そう、「やさしいタオル」は、
ふつうにお使いいただき、お洗濯してもらえれば、
そうそう簡単には「やさしくないタオル」になりません。
なってしまっても、もとにもどすことができます。

ほっとした、タオルチーム一同でした。

やまかわおがわとりいシェフベル弥絵モギ

2009-12-30-WED
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(c)HOBO NIKKAN ITOI SHIBUN / Illustration:たかしまてつを