「やさしくないタオル」のつくりかた。

その3 くさいタオルは、もとに戻るのか?

翌朝、早起きしたベル
空が快晴なことをたしかめると、
そのタオルを洗濯機でしっかり洗って、
さんさんと降り注ぐ太陽の下で
天日干しをしました。

しっかり洗う、と言っても、
洗濯方法は、普段の洗濯方法と
まったく同じです。
1槽の全自動洗濯機で、いつもどおりに、
入るだけの洋服やらタオルやらを入れ、
洗濯洗剤は箱に書かれている
決められた量を入れて、
全自動のボタンをポンと押しただけ。
すすぎも脱水も洗濯機まかせです。
そして、マンションの部屋、
5階のベランダで、
日中、つねに陽光があたる場所を選んで、
外干しをしたのでした。

ここで6時間経過。
仕事に出かけ、戻ってきたベルは、
ベランダからタオルをとりこみます。
この日は、終日、晴れ。
湿度も低く、きもちのよい日、
ぱりっと乾いたタオルがそこにありました。
たたむのももどかしく、ベルは、
思い切って顔を埋めてみました。

「く、くさく、ない!」

いや、そりゃそうです。
「乾いた状態」であれば、そうなんです。
洗いたて、干したてですから、
さわやかな太陽のにおいもしてきます。
もちろん汗を拭いたにおいはすっかり消えています。

でも、もう一度、汗をかいたら、どうなるんでしょう?
それが問題です。
それを確かめないことには、
この実験は終わりません。

そんなわけで、次の日、ベルは早起きして、
皇居のまわりをジョギングで一周することにしました。
わざわざ皇居まで行かなくてもいいと思うんですが、
たぶん実験だということで張り切ったんだと思います。
そこらへんのことは省略するとして、
皇居一周を終え、汗だくになったベルは、
悪臭を恐れつつ、あのタオルに、
ビクビク顔を埋めてみます。

「く、くさく、ない!」

におい、まったくしない。
無臭。
やった。

大窪さんへの取材と、
ちいさな実験からわかったことは、
こうでした。

洗剤の量をいいかげんにして、
生乾きのまましまっておけば、
タオルは細菌の温床になり、
汗を吸うと、においがする
「くさくてやさしくないタオル」になる。

それを防ぐには、しっかり洗って、
天日干しをするのがいちばん。

補足しますと、天日干しというのは、
「紫外線にあてる」ということが大事です。
今回、ベルの実験では、直射日光にあてましたが、
そうする必要はありません。
日かげでも、人の肌が陽に灼けるように、
直射日光でなくても、紫外線はあたります。
「晴れた日に、風通しのいい場所に陰干し」でも
じゅうぶんな効果がありますよー。
ちなみに直射日光にあてすぎると、
タオルの線維が硬くなってしまうことがあります。
その話は、また別の回に。

【コラム】 タオルのスペシャリストが語る 「やさしくないタオル」
その1 湿っぽいのはお嫌い?
湿気の高いところにずっと放置をしておいたら、
「やさしいタオル」にもカビが生えます。
でもカビが生えやすくなる要因は、
湿気だけではありません。
それは、カビの好物とも言われている
人体の角質や皮脂です。
タオルで体を拭いた後、
ビニールなんかに入れたまま放置しておくと、
カビが繁殖しやすい条件が揃っちゃいますよ。
旅行に持っていったり、
プールやジムに持っていったタオルは
おうちに戻ったらすぐに洗いましょう!
2009-12-24-THU
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(c)HOBO NIKKAN ITOI SHIBUN / Illustration:たかしまてつを