第7回 有機農法って何?

諏訪 オーガニックブームといわれて
有機野菜がからだに良くて
ありがたくて、かつ、旨いんだ。
という流れがありますが
永田農法では
有機肥料を使っているわけじゃない。
自分でもそれまで有機肥料で
育てていましたから
永田農法に切り替えることで
「有機農法って何なのか?」ということを
考えるきっかけになりました。
有機農法を「あれは国策だ」
という農学者もいますし、
有機野菜の何かうまいのかも立証されてませんし。
糸井 これまでにうまく行ったケースは
有機農法でも成分が薄いんでしょうね。
だからといって多くあげすぎちゃうと
腐っちゃうから難しいのはそこなんでしょう。
諏訪 農業の始まりの時点では
有機農法しかないわけですよね。
科学技術が無いから家畜の糞を肥料にするしかない。
そのころは量も少ないから有機肥料で
良かったんですが。
有機肥料にしても化学肥料にしても
問題は科学か自然かという質ではなくて
量の問題ですね。
永田農法は量が少ないですし、
有機肥料にしても量を
少なめにやってればいいんですが
どうもオーガニックブームの中では
「有機肥料は大量にあげた方がいい」
というムードがあります。
糸井 それで食いすぎにしちゃってるんだ。
諏訪 ええ。
でもぼくらが薬を飲むときに
西洋医学から生まれた抗生物質は
あまり大量に飲むと身体に悪いけど
漢方薬だったら多少、多く飲んでもいいんだ。
みたいなイメージがあるじゃないですか。
糸井 それは確かにある。
諏訪 農業や家庭菜園なんかをやる人には、
間違いなく、あって。
僕自身もそう思っていましたから。
糸井 それこそウンコまみれで。
諏訪 牧場で「牛糞堆肥100円」と出ていると、
昨日やったばかりなのに、
また買ってきて。(笑)
「土よりも牛糞を多くしたほうがいいかも」
から
「牛糞の中で野菜を育てたら、
 さぞかし、うまい野菜が
 できるんだろう」
と思うんですよ。(笑)
今では笑い話だけど当時、
「有機農法で育てよう」とか
「家庭菜園オーガニックで楽しむ」
みたいな本には
肥料のやりすぎについては書いてないし。
じつは、それが最大の間違いだったというのは、
この仕事をして科学的にもよくわかった。
糸井 一度は間違ったんだ(笑)。
諏訪 そうなんです。
有機肥料が多すぎると窒素分が
多くなってシュウ酸が生まれます。
それは「えぐ味」になる。
それは毒味でもあるわけです。
「ほうれんそうのアクを抜く」とか
「切ったナスが褐色になる」のも
肥料が多すぎることが原因です。
ピーマンの「えぐ味」もそうだなあ。
糸井 有機肥料は、
体にいい何かのアナロジーなんですよ。
まさに「漢方薬」ですよね。
漢方薬もじつは毒なんですよね。
諏訪 摂り過ぎたら毒なんです。
動物と植物の最大の違いは
有機肥料であっても化学肥料であっても
野菜が吸うものが同じ栄養素であるので
そこは全く意味がないんです。
糸井 しかも量が多いと
摂ろうとしなくても摂れちゃうから、
根が発達しないしね。
「発達させない」ということ自体が、
何か欠陥があるということですよね。
諏訪 本来は栄養を求めて発達していくわけですから
いつも周りに肥料がいっぱいある中で育って
根が発達していかないということは
彼らは生きようという力を
無くしてきてしまっている現れですから。
糸井 そこは知性がいりますよね。
肥料をセーブする力が知性です。
それが物知りと知恵者の違いですよ。

2006-03-24-FRI