第6回 シンプルに考えると永田農法にたどりつく。

糸井 「ほぼ日」で販売するセットの中には
諏訪さんの「おいしいさのつくり方」も
入れてようと思ってます。
たぶん、この本を読んでみてから
DVDを観たらしみ込むと思うんです。
これって伝えにくいなと思うことが
いっぱいあったでしょう?
諏訪 DVDには一番ベーシックになる
ハウツーの原点を盛り込んでいるので
個人的な体験や地域ならではのことを
盛り込めないんですね。
「有機農法」から「永田農法」へ
切り替えたことでわかったことや
サラリーマンだからこそ、
苦労したり感じたりしたことを
意識して本に書いたんです。
糸井 永田先生も農業の方だから
やっぱり言葉足らずな面があるんですよ。
その点、諏訪さんが人に伝えることを
職業にしている人だったから
この本は本当に助かる。
ものすごく基本に立ち返って、
「本当は同じですよね」というエキスが
永田農法なんですよ。
永田先生にしても
誰も教えてくれなかったから
一生懸命考えたり、
大学の先生に相談したり
七転八倒したけど
結局は植物に聞いたんですよね。
諏訪 そうですね。
永田農法以外にもいろんなやり方があるけど
余分なものをどんどん削ぎ落としていくと
最低限の肥料と水で
植物本来が持っている力を引き出すというところに
いきつくんですよね。

1万年前に人類が農業を思いついた時には
当然、肥料も水も無いわけです。
今まで山でとってた芋を
残しておいたら家の前でも芽が出たから
「植えたら遠くまで
 とりに行かなくていいじゃん!」
というところから
農業がはじまっているわけです。
やがて、動物の糞だとかを
ちょっとあげてみると
思わぬことに良かったということから
肥料という考えが生まれたけど
ほとんどは肥料をあげずに育てる農業を
やってきた。
それが戦後に食料難対策としての
農業が生まれました。
大量に肥料をやると味はともかく
収穫量が短期的に増えるという農業です。
糸井 そうか一度、荒廃させたというわけですね。
人災なんだ。
諏訪 そうですね。
代々農家をされてきた人の中には
大量生産、大量消費という
食料難の原点の農業があるので
多くの肥料をあたえて
多くの収穫が欲しいという考えが
こびりついているんです。
糸井 やっぱり原生種の育ち方に
近いところにいくと思うんですよ。
「山で実っているのはウマイぞ!」
というところが原点なんですよね。
いろんな宗教がどこかで
同じような場所にたどり着くみたいなことで。
永田先生は常識を知らなかったおかげで
ものすごい速度で
そこにたどり着いたんだよね。
変な言い方だけど
「みんな永田農法だよ」
ということかもしれない。
大量生産・大量消費型の量から量へ
という発想が壊れようとしている今、
これが出てきたというのは
やっぱりシンボリックですよね。
諏訪 量から量へは
日本の戦後ではよかったんだけど
今は量をつくる農業だと
外国産野菜に負けてしまうわけです。
人件費、土地。
さらに相続税までコストに入れると
とてもじゃないけど
日本の農業は価格競争の土俵では勝てない。
多少、お金がかかっても
いいものを作れば勝負ができるわけだし。
糸井 どんなことをしてでも収入を増やして
どんなことをしてでも安いものを買う。
という人生を送っていたら
きっと目茶苦茶になりますよね。
「なんだ、そんなのが30円もするのか。
 こっちでは10円で売ってるぞ!」
というように安いものを買っていたら、
その人は何のために生まれたのか
わからないよね。
極端に考えるとわかるよね(笑)。
それをやっているんだと思います。

2006-03-22-WED