糸井 ずいぶん長くお話をうかがいました。
もう、ずっと感激しっぱなしなんですが、
そろそろ終わりにしようと思います。

これから先、長い復興の道のりが続きますよね。
木川 そうですね、まだまだです。
糸井 ヤマトさんの復興支援活動が
この先どうなっていくのかということと、
支援する人々の心構えというか、
今後どう行動すればいいかについて、
最後に木川さんの考えを
お聞かせいただけますでしょうか。
木川 わかりました。

まず、ぼくらがやっている、
「救援物資輸送協力隊」の活動について。
最初にこれをはじめるとき
期限を決めないといけないという話になって、
一応、当座2週間と言っていたんです。
でも2週間で終わるはずもないし、
ニーズがある間はやろうという気持ちでした。
もちろんフルボランティアで。
ところが、
フルボランティアということを発表しようとしたら
同業者からえらく怒られました。
これはね、わかるんですよ。
地元にある中堅中小の同業者は被災者でもあるし、
彼らも復興しないといけない。
国とか地方自治体からもらう対価を、
ぼくらが奪っちゃいけないんです。
ですから、
県とか市町村から
お金が払われる段階になったら、
ぼくらは退こうと言っていたんです。
そして、いよいよお金が出るようになったので、
退こうと思ったら‥‥
後を引き受けたいという業者が
あらわれないんですよ。
糸井 誤算ですね、それは。
木川 われわれは必要なときまで続けます。
その対価をもらって、
事業として引き受けてもいいんです。

でもほんとうは、
地元の同業者にバトンタッチしたい。
糸井 なるほど。
木川 それから寄付金についても、
どういうふうにつかわれて、
どう復興していくかということは
ずっとフォローしていきます。
糸井 はい。
木川 支援活動というものは、
ダラダラやることが褒められるものでもないです。
必要なときにきっちりやって、自然に退く。
で、退く時には、
民間の力を活用しないと。
国のお世話になるというよりは、
やっぱり民間が自発的に動いて
復興活動につなげていく形にしないと
いけないと思います。
糸井 民間企業がポイント。
木川 はい。
そのためには規制緩和も必要になってきます。
公じゃないと駄目という
規制を撤廃するだけで、
民間企業はどんどん入ってくるんです。

たとえばいま、
被災地では市町村の機能が損なわれてますよね。
役場も流されて、
最低限の住民サービスもできなくなっている。
これを復活させるために、
民間の力をつかうんです。
安いコストで、いいサービスが
住民に提供できる
ビジネスモデルをつくればいいんです。
そこで初めて、
地方自治体の仕事の一部が民営化される。

とはいえ、自分たちの仕事を奪うような民営化を
日本の市町村が嫌うことはわかっています。
それはわかるんですよ。
わかるんだけれども、
いま東北エリアの市町村について言うと、
やっぱりそこが大事なんです。
ここで民間の活力をつかうことで、
地元の基盤をしっかりさせないと。

ボランティアにプラスして、
民間企業の広がりが出てくる流れが、
この1年のうちにできればいいなと思っています。
糸井 なるほど。
困った人のところに手を伸ばすという
会社としての仕組みは、
今回いろいろとできた。
ここから先の東北との関係においては、
状況の地図が変化していくのに応じて
何するかをその都度、
知恵をつかって考えていくということですね。
木川 そうです。知恵をつかって。
いつまでもボランティアでは、
もう民間はストップします。
糸井 そうですね。
木川 商売のプラスになる。
復興にも役立つ。
その土俵をつくってあげれば、
民間の経営者は自発的に入ってきますよ。
それを駄目だって止めてしまうと、
スピードはものすごく遅くなります。
結局、被災者の方々の苦しい時間が長くなる。
糸井 うーーん‥‥。
やっぱり、知恵ですね。
知恵を絞らないとエネルギーは出ないです。

頭をつかわない仕事なんて、
ひとつもないですからね。
木川 本当ですね。
頭をつかわないと。
糸井 いやぁ、ありがとうございました。
とってもおもしろかった。
いっしょに同席したうちの者たちも、
かなりよろこんでいる様子です。
(同行したほぼ日乗組員に)な?
ほぼ日 ‥‥すごかったです。
ほぼ日 ずっと興奮してます。
木川 (笑)ありがとうございました。
糸井 たくさんの読者はもちろんですが、
これはたぶん、うちの社員と
ヤマトの社員の方々も読むような、
たのしみのある特集になると思います。
木川 そうですか、
たのしみにしています。
糸井 お忙しい方に
2時間も時間をとっていただいて、
ほんとに申し訳ないと思ってたんですよ。
木川 いや、そんなことは。
糸井 聞きたかったことをうかがったら
さっと失礼しようと思ってたんですが‥‥
もう、2時間を超えてますね。
で、まだ足りないぐらい(笑)。
木川 (笑)
糸井 ありがとうございました。
木川 これを機会に、また。

(木川社長と糸井重里の対談はこれで終了です。
 連載中は、たくさんのあたたかいご感想のメールを
 ありがとうございました。
 最後までお読みいただいてのご感想メールも、
 よろしければまたお寄せくださいませ。
 ご愛読、ありがとうございました)

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2011-09-01-THU