お椀やお箸、鉢に重箱‥‥
毎日のテーブルに上がらない日はないといっても
けして大げさではないくらい、
私のくらしに馴染んでいる漆の器。
「漆」と聞いて、
まずはじめに思い浮かぶ色、あなたはどんな色ですか?
朱? それとも黒?
拭き漆の茶、なんて人もいるのかも。
我が家の器も大半がそれ。
でもいくつか他の漆とは少し違う位置づけの
漆の器が私の食器棚に入っています。
それが「白漆」。
和のおかずだけではなくて、
パスタやいちごのマリネなんかにも
合ってしまう不思議な器です。
山本さんとの出会いはたしか10年くらい前のこと。
松本のクラフトフェアでお見かけしたのがはじまりです。
作品はもちろんですが、
山本さんのブースはどこか洒落ていて、
目を引く存在でした。
その後、工房へ遊びに行かせていただいたりして
おつきあいが深まるにつれ、
ひとつまたひとつと
山本さんの作品が私の家に増えていきました。
その中のひとつが白漆のお椀です。
お椀と言っても、大きさはやや大ぶり。
塗りの加減もいい意味でラフで、
今までとは違う漆の一面を見た気がしたのでした。
そう感じたのは、形や塗り以外に
やはり色がものをいっているのではないかな。
そもそも白い漆ってなんなのだろう?
素朴な疑問を抱えて
今回は木工家の山本美文さんの工房を訪ねることに。

岡山市在住の木工作家。
オリーブの産地として有名な
「牛窓」(うしまど)からも近い海辺に
アトリエを構えている。
「学生の頃からずっとスキーをしていて、
 生涯それを仕事にしようと思っていたんですよ。
 だから長野県のスキー場で働いていたんです。
 けれどもスキーの仕事っていうのは、
 雪解けと共に無職になってしまうんですね。
 長野県って、木工をやってる人が多くて、
 そのなかに、『無職になったら困るから、
 春から秋の間でも、なにか手に職をつけたら?』
 って言ってくれる人がいたんです。
 『木曽のほうに行ったら、そういう専門校もあるから、
  そこに行って勉強したら?』と。
 『じゃあ、まぁそれもいいかな』
  くらいの軽い気持ちで、
 木曽に行ったんですよ。
 木工作家になった最初のきっかけは、
 そんなことでした。
 スキーのインストラクターは、どうしたって
 注目をあつめるのが仕事なんですけれど、
 木工は、作品そのものが注目されて、
 つくり手の僕はそれを遠巻きに見ている。
 ずっと木工を続けられているのは、
 そんな感じが、
  自分に合っているからかなって思います」
ブログ「木工房便り」

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