VERMEER ICHIKO UEMOTO

光の魔術師といわれ、
その作品が多くの人に愛されている
オランダ絵画の巨匠フェルメール。
現存する絵画は35点といわれており、
やろうと思えば約2週間で
ぜんぶ観て回れるのだそうです。
それをほんとうに実行したのが、
写真家・文筆家の植本一子さん。
7カ国、17カ所の美術館を飛行機と鉄道でめぐり、
フェルメール作品全点を撮りおろした
『フェルメール』をさきごろ上梓されました。
ときに鑑賞する人までとらえた臨場感のある写真は、
いままでの美術書にはない
新鮮な魅力にあふれています。
このたび、植本さんと出版元のご厚意で、
短い期間ですが、この本に収められている写真を、
まるごとご覧いただけることになりました。
植本さんがフェルメールに出会っていく旅を、
実際にたどった日程どおりに追体験していただけます。
このコンテンツは
2019年2月3日までの期間限定公開です
植本一子さんプロフィール

イザベラ・スチュワート
・ガードナー美術館

COUNTRY
アメリカ / ボストン
COLLECTION
合奏

植本さんの日記から

フェルメールには今も盗まれたままの絵が1点ある。
この旅の最後にその絵があった場所へと向かう。
朝6時のAmtrakに乗り、
ニューヨークから3時間以上かけてボストンに着いた。
ニューヨークよりも北に位置しているからか、
肌寒いが空気が澄んでいる。
大学が多いらしく、美術館の前に広がる緑の下で、
学生らしき男の子たちが健康的にフリスビーで遊んでいる。
それを横目に、わたしたちは開館前の
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館に並ぶ。

植本さんの日記から

ここはイザベラという女性の私設のギャラリーで、
昨日のフリック・コレクションと
同じような立ち位置だろう。
イザベラはすでに亡くなっていて、
彼女のコレクションを公開しているのだが、
死んだときの言いつけで、
作品の配置を変えてはいけないらしい。
いたるところに調度品が置かれ、
小さく「please don't touch」と紙が貼られている。
それがなければ思わず
座ったり触ったりしてしまいそうになるほど
「家」という感じがある。

植本さんの日記から

最上階にある大きな部屋に入って、
すぐ違和感に気がついた。
絵の入っていない額が飾られている。
二十数年前のある夜、
この美術館からは13点の美術品が盗まれ、
フェルメールもその中の1点だった。
「合奏」という作品で、おそらく世界で盗まれた絵の中で
最も高価だろうと言われている。
今日はその絵があった場所を見に来たのだ。

植本さんの日記から

ここで実物を見ることができていたら、
一体どんな印象だったのだろうと想像する。
イザベラという一人の女性のためだけに
置かれていた「合奏」。
その絵は今、誰がどこで、どんな風に眺めているのか。
そしていつか、ここに戻ってくる日が来るのだろうか。
空洞のように真っ暗な額だけが置かれ、
わたしはそこから何かを見つけることはできなかった。

植本さんのフェルメールに出会う旅は、
これでおしまいです。
旅路をともにしてくださって、
どうもありがとうございました。

もしよかったら、感想をもらえたらうれしいです。

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2018. 12.07 FRI

15日間でぜんぶ観るフェルメールの旅MAP

『フェルメール』


写真・文:植本一子
発行:ナナロク社 BlueSheep
価格:2,000円(税別)
判型:B6判変形、仮フランス装、288ページ
アートディレクション:TAKAIYAMA inc.



2018.10.5 FRI → 2019.2.3 SUN
上野の森美術館 日時指定入場制

現存する35点の絵画のうち9点までが展示される、
日本美術展史上、最大の「フェルメール展」が
上野の森美術館で開催されています。
スタッフ用ユニフォームはなんと、
YAECAとほぼ日でつくっているLDKWARE。
おまけに東京会場では、フェルメール展のロゴがついた
ルリ色のエプロンとバディバッグが
公式グッズとして販売されています。