個人的なユニクロ主義。
柳井社長に至近距離でインタビュー。

第3回 株主の視点で書かれたビジネス書です。
     ----糸井重里によるまえがき(3)



今まで述べたような方法で
ユニクロの柳井さんのお話を聞くのは、
かなりおもしろい試みだと思っています。

だって、ユニクロの経営って、
日本経済新聞を読んでいるような人なら
かなり興味を持っている人が多いと思うけど、
いわば「徹底した合理主義」だとか、
「クールでロジカルなSPA(製造小売業)システム」
みたいな文脈で、いつも語られているじゃないですか。

ご本人が直接マスコミに出ることの少ない中で
柳井さんのお話を、
企業戦略以外の話題でうかがうのって、
ほんと、やってみたかったんですよねえ。
・・・そもそもぼくは、
ユニクロのビジネスモデルを
どれほど詳細に聞くよりも、
「なまもの」としての柳井さんの考えを聞くほうが、
きっとおもしろいだろうなあと考えていましたので。

ユニクロの手法そのものをいくら聞いても、
自分が作る企業はユニクロとは違うわけだから、
マネすることはできないじゃないですか。
手法をマネすることを目標にしないかたちで
話をじっくり聞く会いかたで、
ぼくはお会いしたかったんです。

柳井さんとぼくが
ふたりで会っているところで、
隣の部屋にいるあなたが、
壁に耳を押しつけて
聞き耳をたててるように、この本は
読むことができるんじゃないでしょうか。

「ああ、じれったいなあ」とか
「おっ。おもしろくなってきたぞ」とか、
そんなことを感じながら、
聞くように読んでもらえるとうれしいです。

たった数時間の会話を収録した本ですし、
経済書を作るような人なら、もしかしたら、
「これは、掲載しないなあ」
なんて、ぜんぶ削っちゃうような
話題になっているかも、しれません。

だけれども、もしかしたら、
「こんな聞き方をしたからこそ、
 ようやく柳井さんの考えていることがわかった」
と言ってくれる人がいるのかもしれない、
とも、ぼくはひそかに思ってもいます。

とにかく、読んでくれた人は、
これからのユニクロの行方を
ハラハラしながら見られるのではないでしょうか。

ユニクロの客観映像じゃなくて、主観映像。
そんなものを、ぼくはお見せしたいかもしれないです。

主観映像って、興味あるんですよねえ。
つまりそれこそが、株主の目なわけだから。
株主はいつだって主観映像でハラハラしてるもん。
あなたがユニクロの株を持っているとしたら
おもしろいですよ、という本にしたつもりなんです。

わかりやすい成功物語は、省いてあります。
それは、株主総会で書類になるところだからです。
やっぱりぼくは、
書類になっていない一次情報こそ、
聞いてみたかったんですよね。


(つづきます)

2001-10-19-FRI

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