個人的なユニクロ主義。
柳井社長に至近距離でインタビュー。

第1回 「ビジネス書」って、何でしょうか。
     ----糸井重里によるまえがき(1)



この本は、ユニクロの社長の柳井さんに
直接、会社のお話をうかがったものですから、
一般的に言えば「ビジネス書」なのかもしれません。

ただ、ふだんよく目にするビジネス書とは、
かなり違った内容になっているはずです。

それには、理由があるんです。
「そもそも、ビジネス書って、どう読まれているの?」
というところから、一緒に考えていきましょうか。

ビジネス書って、おもしろいですよね。
だけれども、ビジネス書に書いてあることを読んで、
「うわあ、やられた! その通りだ!」
と心から思って実行に移す人は、きっと、いないんです。
つまり、実践書としては、読まれていないですよね。

実践書じゃないなら、ビジネス書って
読者にとって「何の書」なのでしょう?

ぼくは、従来のビジネス書は、
「(1) 常識の書」もしくは、
「(2) 娯楽の書」にあたると思っています。

(1) の「常識の書」というのは、
的確な内容を述べているビジネス書のことです。

例えば、
『未来の衝撃』(A・トフラー/中公文庫)
『文明の衝突』(S・ハンチントン/集英社)
『情報の文明学』(梅棹忠夫/中公文庫)
というものが、それにあたると考えています。
こんなラインナップを、いま並べても、
「そんなの、ビジネス書じゃねえよ!」
と思う人が多いでしょうけど、これらの本って、
話題になった時は、ビジネス書の棚で売れたんですよ。

もうビジネス書じゃない、というのが、
この「常識の書」である大きな理由なんです。
つまり、書かれている内容をもとにして
あとでいろいろな議論がなされるということは、
それは、常識の枠を広げたもの、になるでしょう?

だから、的確なビジネス書は、
「こういう概念が、あるのよね」
という常識だとか前提条件になりえるんですよ。

こういった「常識の書」は、よくも悪くも、
あくまで、みんなの知っている前提条件を増やす、
常識を増やすという性格のものなんだと思います。
共通言語が増えるようなものなんです。

次に、ふたつめ、ですけれども、
(2) の「娯楽の書」というのは、
ほとんどのビジネス書がそうだと思います。

ぼくは、自分でもそうとう楽しんで
ビジネス書を読んでいるんですけれども、
それって、ほとんどの場合、
「石田三成から学ぶ経営」とか、
「織田信長がどうのこうの」とか、
そういうものとおんなじように
捉えているかもしれないと実感しているんです。

冷静に眺めると、ビジネス書の読まれ方って、
「ああ、おもしろかった! 俺もやんなきゃな!」
という感想に代表されている、と言いましょうか。

つまり、
サラリーマンマンガが読まれるように
読まれているビジネス書っていうのが、
かなり多いんじゃないかなあと感じています。
あなたも、そう読んでいないですか?
・・・ぼくは、けっこう
そう読んでいるかもしれません。


(つづきます)

2001-10-17-WED

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