- SWITCH新井さん
- いちばん好きな写真集のタイトルが、
糸井さんが名付けた、
操上和美さんの『陽と骨』なんです。
あのタイトルは、
あの写真集のすべてを言い表してる。
たとえばこの梅佳代さんの新しい写真、
糸井さんなら、
どういうふうにするか気になります。
- 糸井
- 写真集のタイトルって、
今まで自分自身でつけてるんでしょ?
- 梅
- はい。
- 糸井
- いやあ、ものすごく上手ですよね。
ちょっと手出しできないです。
撮ってる写真と同じくらい、
タイトルに肝が据わってますから。
- 梅
- へぇー。
- 糸井
- 自信を持ってるよね、少なくとも。
- 梅
- まあ、これしかないっていう感じ。
- 糸井
- ああいうタイトルって、
作者のなかにしかないものですよ。
- SWITCH新井さん
- たしかに『うめめ』ってタイトル、
ちょっと付けられない。
- 梅
- でも、『うめめ』ってタイトルは、
たまに、自分で、
はずかしい気持ちになるんですよ。
- 糸井
- 今さら聞くのも変だけど、何で?
もしかして「梅の目」ってこと?
- 梅
- いちおう、そんな感じです。
- SWITCH新井さん
- ちなみに、梅佳代さんのお名前は、
おじいちゃんが
朝ドラからとってつけたんだよね。
- 梅
- はい。
- SWITCH新井さん
- 梅という姓にたいして奇をてらわない、
素直な感覚がすごいなと思って、
で、そのおじいちゃんのDNAが‥‥。
- 梅
- そうそう。適当さというか、
「まあ、そんなんでいいんじゃない?」
みたいなところはあります。
- SWITCH新井さん
- おじいちゃんの「勝二」って名前も、
次男だからとかの理由で
付けられたんでしょうね、おそらく。
- 梅
- そういえば、そうかもしれん。
- 糸井
- おまじないみたいだよね。
- 梅
- そうそうそう。
そこまでの意味はないですっていう。
- SWITCH新井さん
- でも、それ以外ありえないですよね。
『うめめ』とか、
『じいちゃんさま』なんか、まさに。
- 梅
- 名前に意味を持たせたりすることが、
あまり好きじゃないのかも。
- SWITCH新井さん
- やっぱり、人生を生きていくうちに、
名前に向かっていくじゃないですか。
梅佳代以外の名前あり得ないでしょ。
今から思えば。
- 梅
- 梅佳代以外の名前?
- SWITCH新井さん
- そう、自分が。
- 梅
- 最初から、その名前だったからねえ。
途中で、
梅っていう名字がめずらしいことに
気づいたんです。
- 糸井
- めずらしいよね。
はじめ、本名じゃないと思ったもん。
- SWITCH新井さん
- 糸井さんのうちの新しい犬の名前は、
ブイコちゃんですよね。
- 糸井
- はい。
- SWITCH新井さん
- ブイヨンの次に、ブイコ。
飼うって決めたときは、どうでした?
- 糸井
- ブイヨンのことを、
自分ちの子みたいに思っていた読者が
たくさんいたみたいで、
「ブイコが来て、本当に助かりました」
って言ってくれるんです。
だから、犬を飼うということについて、
この歳になって、もういちど
考え直すなんて思わなかったですよね。
- SWITCH新井さん
- ブイヨンがちいさいころは
写真を撮ってなかったってことですが、
ブイコが来て、
今、たーくさん撮っているというのは、
おもしろいですね。
写真って、やっぱり
何かを伝える大事なツールなんですね。
- 糸井
- かみさんの撮る量が半端じゃないです。
犬猫アプリの「ドコノコ」って
やってるんですけど、あれのおかげで、
いろんな場面を撮っては見せて。
- 梅
- へぇー。
- 糸井
- 彼女も報道写真家になったわけですよ。
- SWITCH新井さん
- 梅さんの撮った写真を見てて思うのは、
どうしてぼくらは
こういう表情を愛おしく思うんだろう、
ということなんです。
時間とか、失ったものと手にしたもの、
写真というツールには、
すごく伝える力があるなあと思います。
- 糸井
- だから、昔の梅佳代だったら、
こういう子どもたちを、
もうちょっとおもしろい顔した瞬間に
撮ってたんじゃない?
- 梅
- そうかもしれん。でも、あとは、
地域によって、ぜんぜん違うんですよ。
わたしのうまれた
能登の村の子どもたちはおとなしくて。
山に囲まれた村で、
代々みんな、全員おとなしいんですよ。
- 糸井
- 代々?(笑)
- 梅
- そうなんです。代々おとなしいんです。
わたしの同級生も、みんな。
クラスに「イエーイ」みたいな人が、
ひとりもいなかったりする。
で、隣の漁師の町とかに行くと、いる。
- 糸井
- おとなしい地域性。
- 梅
- 今回は実家の村だけで撮ったので、
みんなおとなしくて
「え、俺、いい‥‥」みたいな。
すると、こういう感じに写るんです。
- 糸井
- ふぅん。
- 梅
- でも、わたし、オトナになってから、
こういう村の遠慮が、
いいなって思えるようになってきた。
- 糸井
- いい感じの「かわいさ」があるよね。
- 梅
- そうそう。なんかね。
- SWITCH新井さん
- 涙が出てくるもんね、これなんかね。
<続きます>
2019-01-16-WED
2019-01-16-WED